五話
魔法士組合の建物は傭兵組合の建物と造りは似ていたが、とんでもない薬草臭が漂っている。臭いの元を辿れば、カウンターの奥に大量に薬草が吊られていた。カウンターに立っている青のローブを着た男に話しかける。
「すまない、登録をしたいのだが」
「かしこまりました。他の組合に登録はしていますか?」
「ああ。さっき傭兵組合に登録してきたばかりだ」
「では、こちらへどうぞ」
男に案内されて向かった先には広い部屋が広がっていた。奥行があり天井は高く一面の乳白色。真ん中には幾つか鉄製の的がある。
(結界魔法がかけられているのか)
結界魔法は魔力さえあれば使うことの出来る魔法だ。外部からの魔法や打撃に対応する結界もあるし内部からの魔法や打撃に対応する結界魔法もある。ただしいずれも、結界に注ぎ込んだ魔力量により強度や持続時間、大きさ等が変わる。
この部屋に施されているのは内部からの魔法に対応する結界魔法のようだ。
「今からここで魔法士としての実力を測らせて頂きます。好きな所から的に向かって魔法を放ってください。壊ししまっても構いません。また、この部屋全体には結界魔法がかけられているので心配は無用です。魔法の威力、精度、素早さを基準に判断させて頂きます。ここから見ていますのでいつでも始めてください」
男は部屋の隅に立っている。的からは遠い位置で俺を見やすい位置だ。
「おい。危ないから結界魔法を張っておけ」
「は?」
男に声をかけておく。もし巻き込まれて外聞が悪くなってしまうと困る。これから動きにくくなってしまうだろう。
右手をあげ、息を吐くと同時に魔力を回した。
炎弾丸と風刃を連続で放ち、闇槍で的を全て折る。炎弓と旋風で木っ端微塵にし、闇牙で破片を全て消し去った。
風や炎の勢いが壁にも飛散する。結界魔法でもカバーし切れなかったか、燃えたあとがあちこちに残ってしまった。
「おい、これでいいか?」
男は立ったまま白目を剥いていた。
「本当にすみません…」
頬を叩いてやれば男は正気に戻った。慌てて何処かへ飛んで行き、今はカウンターで書類を書き込んでいる。
「あれだけの魔法の種類に速度、威力…何をしたらあれだけの事が出来るのですか」
「何もしていない」
どの魔法も初心者でも使える難しくないものばかり。シンプルな魔法だからすぐ発動出来るのが良い点だ。
「………三属性の魔法持ちで初級魔法をあの威力、速度…そして闇魔法持ちに加えて無詠唱…信じられない………」
男がブツブツと何かを呟いている。手は動いているようだが、早くしてくれないだろうか。
「お待たせしました。こちら、グレンさんの証明証です」
渡されたカードは傭兵組合で渡されたものとぱっと見は同じだった。しかし、一箇所違う所がある。
「階級はこれでいいのか?」
カードに記された階級はA。傭兵組合のD級とはかなり差がある。
「構いません。魔法士組合は傭兵組合とは違い、さっき見せてもらった魔法で最初の階級を決めさせて頂きます。そこから実績を積めば階級が上がる事もあります。AからSはなかなか大変ですが…。グレンさんは先程の魔法を見た限りA級にも充分足る存在だと感じました」
「そうなのか、ならいい」
あのくらいの魔法で上から二番目の階級とは何だか変な感じもするが、職員が言うのならそうなのだろう。
渡された書類に名前を書き込んで手続きを終わらせる。
礼を言ってカウンターを離れれば、ジェイが近寄ってきた。
「待たせたか」
「いえいえ!全然待っていませんよ。何級で登録されましたか?」
「A級だ」
「A級!すごいですね!…って、A級?え、本当ですか!?」
「ああ、ほら」
カードを見せれば、ジェイは信じられないものを見るような目で見上げてきた。口をぽかんと開きっぱなしにしている。
「…そんなに驚くことなのか?」
「当たり前です!最初からA級なんて、すごく少ないですよ!何したんですか?」
「大した事はしていないぞ。本当だ」
俺の意識と今の意識では魔法の差はかなりあるのかもしれないな。どこかで学べるといいのだが。
「グレンさん、実はすごい人だったんですね…」
(元魔王だからな)




