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二話

俺が生まれ変わった森はかなり大きな森だったようで、大樹の元から森の外へ出るまで丸二日かかった。

近くにいた下級や中級の精霊たちに道案内をしてもらい、なんとかたどり着いた先はバンブルという町に続く道だった。


「世話になったな」

『気にしないで』

『大精霊様のお願いだもん』

『また何かあったら呼んでね』


小さな羽を生やし色とりどりの姿をした精霊たちはそのまま森の方へ消えていった。精霊には階級がある。下級、中級、上級、そして大精霊。その階級が低いほど自然を好み、階級が高いほど人の世にも溶け込める。精霊は人からは見えないが、大精霊は人の姿に成り肉体を得ることも出来る唯一の存在だ。 魔王時代にも何人か大精霊は会った事があった。珍しい存在であるが故にその生体は謎に包まれている。

町に続く道はそこまで大きくなく、整備もされていない所謂獣道に近いものだった。周りは草原で、所々小さな森や茂みがある。ただ歩くだけなら困らないが、長時間歩くとなると疲れそうだ。


(町が近くなるまでは空から移動するか)


ふわりと宙に浮く。昔、空を飛ぶ人類はいなかった。今はどうか知らないが、もしいなかったら見られると面倒な事になる。

しばらく飛んでいると大きな人影が見えた。二つの荷馬車と数人の武装した人。しかし、その周りを人相の悪い男達に囲まれており、何人か倒れている者もいる。


「た、助けてー!!!」


荷馬車の中から声が聞こえる。後ろ側の荷馬車からだ。護衛らしき男たちは周りを囲む輩に手一杯のようで、荷馬車の中にいる人を助けに行けていない。


「…見捨てるのは、気分が良くないな」


風を切って急降下し後ろ側の荷馬車の横へ降り立つ。護衛らしき男も人相の悪い輩もぎょっとして動きが止まった。


「手助けしてやる」


左手を荷馬車に向ける。手のひらから打ち出した風によって荷馬車の幌はずたずたに切り裂かれた。

中にいたのは小柄な男と三人の男。片方は仕立ての良さそうな皮の上着を着た黒髪の小柄な男。こちらが助けを求めていた声の主だろう。対する三人はボロボロの服を着ていて、外にいた男達とそこまで変わらない見た目をしている。


「なっ、なんだお前!邪魔する気か!」

「そうだな、邪魔しに来たぞ」


剣を片手に飛びかかってくる男を躱し右手首を掴み、遠心力に沿って投げ飛ばす。少し遠くの茂みまで飛んでいった。

荷馬車の中にいた男、取り囲んでいた男達も次々に飛びかかってくるが一人一人躱す。全員投げ飛ばして最後に残った一人は鉄の筒を小脇に抱えていた。


「くそっ…こうなりゃ、これを使うしかねえ!」


歯を食いしばった男が筒の先をこっちへ向ける。危ない!と聞こえた瞬間、破裂音がして筒の中から何かが飛び出してきた。


「なんだ?この弾は」


反射的に手で掴むと骨に響くような痛みがあった。しかしすぐに治まり、右手を開く。黒光りしている弾だ。


「弾を撃つならもっと威力をこめねば。そら、このように」


風の弾を指先で作り出し飛ばす。鉄の筒を抱えていた男の頭に直撃し、吹っ飛んで頭からひっくり返った。


「もう大丈夫だろう。怪我は無いか?」

「はいっ、な、無いです!」


小柄な男は本当に小さく、少年と言ってもいいくらいの身長だった。手を貸して立ち上がらせると前の荷馬車から男が走ってきた。ガタイがよく、身長も俺と同じくらいあり、威圧感のある焦げ茶の髪の男だ。


「ジェイ、無事か!」

「ダンさん!はい、この人が助けてくれました」

「そうか…助かりました。ありがとうございます」

「礼はいらんぞ。困っていたようだったからな」


ダンと呼ばれた男が頭を下げる。呆気にとられていると、顔を上げて困ったように口を開いた。


「本当にありがとう。礼はいらんというが言わせてくれ。そして頼みたいことがある。オレたちの荷馬車が町まで向かうのを、護衛してくれないだろうか。今の戦闘で怪我を負った者もおり、正直心もとない。あなたのような凄腕が護衛してくれるなら安心なのだが、請け負ってもらえないか?」

「ふむ…構わんぞ。こちらとしても聞きたいことがあるし、町まで行く予定だったからな」

「助かる。オレの名前はダンだ。あんたは?」

「グレンだ。よろしく頼む」


ダンの差し出してきた手をがっちりと握る。どうやら、交渉成立のようだ。

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