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俺と彼女は恋人以上恋人未満  作者: 久野真一
第4章 恋人として、家族として
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第21話 大晦日の過ごし方

大晦日を、昴と結衣の両家で過ごすお話です。

 今日はいよいよ大晦日だ。

 そして、今年は、結衣の家族と一緒に過ごす日でもある。

 夕食前に合流してうちで年越しそばを食べて、一緒に新年を迎えることになっている。


 時刻はもう夕方というところだ。

 年越しそばの準備もして、結衣たちが来るのを待っているところだ。


「それにしても、ほんと久しぶりよね~」

「そうだな。憲明が離婚してから一緒に過ごすこともなくなったからな。10年ぶりといったところか?」

「もうそんなになるんだな」


 今日をいい機会に、また家族ぐるみで交流できれば。

 そう思わずには居られなかった。


「そろそろ来るそうだぞ」


 父さんがそう言った。


「連絡があったの?」

「ああ。メールでこれから行くだと、さ」


 父さんたちは未だにSNSを使うことはなくて、メールでやり取りをしているらしい。

 なんていうか、珍しい。


 インターフォンが鳴ったので、出ていく。

 すると、


「お邪魔します」

「お邪魔するよ」


 相羽家の親子が立っていたのだった。


「とりあえず、座ってくれ」


 団地の部屋は、親二人子一人だと少し余裕があるので、三人くらいなら

 追加で座れる席が用意してある。

 というか、元々は結衣たちが来るときのためのものだったんだけど。


「お茶を淹れてくるわね」


 そう言って、母さんが台所に立つ。


「なんだかこうするの、久しぶりだわ」

「そうだね。最後にこうしたのは結衣がほんとに小さい頃だったからね」


 結衣がある程度大きくなる頃にはもう夫婦仲が悪くなっていたから

 そういうこともなくなっていたっけ。


 母さんが淹れてくれたお茶を飲んで、しばらく皆でまったりする。


「その、なんだ」


 結衣のおじさんが何かいいづらそうにしている。


「どうした。憲明?」

「いや、今日はほんとにありがとう。いつかこういう機会があればと思っていたんだけど」

「気にするな。それに礼なら昴に言ってやってくれ」

「昴君?」

「今回の提案をしたのは昴だからな。俺もいつかは……と思いつつ、何もできなかった」

「そうなんだね。ほんとにありがとう、昴君」

「いえ。俺がそうしたかっただけですから」

「ほんとに、結衣のことといい、感謝してもし足りないよ」


 心から、というようにそう言うおじさん。


「パパ。あんまり畏まっても昴が居心地悪いわよ」

「はは。そうだね。すまない」

「これからは、毎年こうして過ごせるといいですね」

「ああ」


 しばらく、近況や俺と結衣の交際に関して話が盛り上がった。

 気が付けば、もう夜になっている。


「そろそろ、年越しそばをゆでようかと思うのだけど。どうかしら」

「いいんじゃないか?憲明や結衣ちゃんもいいかい?」

「ええ」

「もちろんさ」


 そうして、待つことしばし。

 母さんお手製の年越しそばが運ばれて来た。


 月見そばにかまぼこや天ぷらを入れたシンプルなものだ。

 そばの香りが食欲をそそる。


「そういえば、おばさん」

「何かしら?」

「このお蕎麦、少し高級そうですけど」

「あ、わかる?せっかくだから、ちょっと高めのを買ったのよ」


 いつもよりいい香りだと思ったけど、実際にものが違ったのか。


「「「「「いただきます」」」」」


 皆で手を合わせて、蕎麦に箸をつける。


「うん。美味い」

「ほんとに美味しいわ」

「奮発した甲斐があったわ」

「なかなかだな」

「これだけ美味しいお蕎麦は久しぶりだね」


 口々に賞讃の言葉が出る。


 しばらく、のんびりと蕎麦を食べた後。

 再びお茶を飲んで休憩。


 せっかくなので、テレビもつける。

 紅白歌合戦をやっていた。


 あまり興味がない俺と結衣は関係ない話を。


 毎年紅白を見ている親世代は番組の話で盛り上がる。


 そんなまったりとした時間が流れる。


 気が付けば、紅白は終わり、あと少しで年が変わろうとしていた。


「もう少しで年が変わるな」

「そうね。今年はほんとに色々なことがあったわ」

「色々って?」


 少し期待を込めて聞いてみる。


「それは、昴と付き合うようになったこととか、色々よ」


 少しだけ恥ずかしそうにしながらも、まんざらではなさそうだ。


「俺も、結衣と付き合えて良かったぞ」

「そう。良かったわ」


 そんなことを話し合う。


「やっぱりクリスマスイヴに何かあったのかしら?」

「ご想像にお任せします」

「同じく」

「あら。つれないのね」


「この調子だと、結衣が君の家に嫁ぐ日も遠くなさそうだね」

「そうかもな。憲明としてはどうなんだ?」

「さすがに、少し寂しいけどね。昴君なら安心というものさ」

「そうか」


 父さんたちはそんなことを話している。

 

 気が付くと、年明けまであと数分だ。

 チクタク、チクタク。

 時計が午前0時を刻むのを待つ。


(そういえば)


 結衣が小声で話しかけてくる。


(ん?)

(ほんとにありがとう。こうして気を遣ってくれて)

(当然だろ。俺たちは「家族」だからな)

(そうね)


 そう言って微笑む結衣はほんとに幸せそうな表情をしていた。


 時計が午前0時を刻んだそのとき。


 一斉にこういったのだった。


「「「「「あけましておめでとうございます!」」」」」


 今年はどんな年になるだろうか。

 こうして、「家族」で一緒に年を越せる幸せを噛みしめながら、そう思ったのだった。

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