第12話 進捗報告
昔からの付き合いの友達に、お付き合い進捗報告をします。
いつものように、結衣と昼飯を食べていたある日。
「結衣ちゃん。ちょっと、昴を借りていいかい？」
「ええ。どうぞ」
「いや、人を物みたいに」
言いつつ、倫太郎に引きずられて空き教室に移動する。
「で、結衣ちゃんとはどうなの？」
「どう、と言われてもな」
「お節介とはわかっているんだけど、心配でね」
幼馴染としては、そして、付き合うきっかけを聞いただけに
うまく行っているのか気になるのだろう。
「うまくやっている、と思う」
「曖昧だね」
「いや、ほんとにうまくやってるとは思うんだ。ただ、あいつからの告白待ちってやつでな」
「結衣ちゃんは踏ん切りがつかないのかな」
少し心配した様子だ。
進展がないのかと勘違いさせたようだ。
「どうもそうじゃないっぽい。曰く、はっきりと言葉にできないので待って欲しい、らしい」
「ふむふむ」
「はっきり言葉にするのは恥ずいが、好きになってくれてる、はず、だと思う」
「それはまた、ややこしいね」
恋愛相談で、「と思う」、とか「待って欲しい」とか聞けばそれは心配になるだろうな
「ただ、あいつなりの、好きの証ってかそういうのは受け取ったから、あんまり心配してない」
「証って？」
「いや、その…」
頬にキスされたとは微妙に言いづらい。
「無理に言わなくてもいいけど」
「いや、言っとくよ。頬にキスはされたんだ。で、唇にはまだ待って欲しい、だってさ」
「なるほどね。君たちの様子が変わった理由がわかったよ」
まあ、あれだけ明確に様子が変われば、部外者でも、ましてや、事情を知る
幼馴染には一目両全だろう。
「でも、そういうことなら良かったよ。結衣ちゃんは好きが自覚できてないのかなって思ったけど」
「その辺は、あいつの中でも今整理中なんだろう」
「みたいだね。それなら、安心できるよ」
「心配してくれてありがとな」
「昔からの付き合いだから、ね」
思えば、結衣ほどではないが、こいつともずいぶん長い付き合いだ。
「ところで」
「なに？」
「おまえはどうなんだ」
「僕？」
「告白の一つや二つ経験あるだろ、おまえなら。誰か付き合ってないのか」
「うーん。あるにはあるんだけどね」
歯切れが悪いな。
「好みじゃなかったのか？」
「そういうとちょっと違うんだけど。一緒に居たいと思える程じゃなかったといえばいいのかな」
「一緒に居たい？」
「ああ。一緒に居て安心できる相手がいい、のかもしれない」
「そうか」
顔が好みだとか、話題が合うとか、そういうのが決め手にならないとなると、
なかなか苦労しそうだ。
「おまえも難儀なやつだな」
「まあね。その点、君たちは羨ましいな」
「そうか。とりあえず、応援はしとくよ」
そう言って、倫太郎にもいい相手が見つかるように祈るのだった。
