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非日常になった世界でも日常を過ごしたいなと思いまして。  作者: あかさとの
1章 災害が起きてもダンジョンが生えてものんびりしたい
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ダンジョン5層2


 縄梯子を登り切ると、上がった先には両親が待っていた。


 「帰ってきたか! さっきニュースで自衛隊がニ人ダンジョンでやられたってやってたからまさかと思って探しに行こうと思ってたところだったぞ」


 「ほんとにあんたは心配ばかりかけて……父さんなんて老い先短いからどうでもいいけどあんたはまだ若いんだからね? 孫の顔も見せないで親より早くなんて許さないからね?」


 「はい。ごめんなさい。嫁とか孫は諦めてください。それもごめんなさい。でも俺、ダンジョンにおいては自衛隊より生きられるかもしれないからそこは心配しないで。っていっても無理だろうけど」


 悲壮な空気が濃くなる。最近はそういう話題は少なかったが、両親としても思うところはあるのだろう。


 両親の必死な圧によりそんなことしか言えなかった俺をかばうような声が聴こえる。

 ーー マスター様はワタシがお守り致しますのでご心配なく ーー 

 などとエアリスが言っていたが、両親には聴こえない。


 部屋に戻り友人たち、とは言ってもこんな時でも生存確認しようと思う友人は三人くらいしかいないけどな。その友人たちの生存を確認する。みんな元気そうだ。ただカード関連や支払いアプリがまだ使えないから、食費の問題がそろそろ出てきているらしい。それに店の在庫も底を突いていることも珍しくなく、物資の輸送にも限りがあることから、質素な生活を覚悟しているとのこと。俺は比較的多めの現金を手元に置いておく主義なので現状は問題ない。それを使う先がないかもってのは俺も困るけどな。


 リアル友人たちの安否も確認できたところで、とんちゃんにメッセージを飛ばすとすぐに返信が届いた。


ゆんゆん:うっす。5層から生還。


とんちゃん:おかえりー。無事でなにより。5層どうだった? っていうか2層にいたんじゃなかったっけ?


ゆんゆん:せっかくだから5層の様子も見ておきたいなと思ってちょっと足を伸ばしてみた。どうだったかっていうと、スライム一匹だけいたぞ。基本のんびり動いてたけど一定距離まで近付いたら顔目掛けて飛びかかってきた。たぶん油断してそれ受けると窒息死。


とんちゃん:うへぇ。ヤバイじゃんそれ。でもスライムって弱いんでしょ?


ゆんゆん:国民的RPGならな。実際あんなゆるそうな顔もついてないし陸上で活動できるアメーバ超巨大版って感じだったぞ。刀じゃ倒せなくて凍らせたら出てきたコアみたいなの砕いて倒せた。


とんちゃん:は? 刀? なんでそんなもんもってんの? ってか凍らせたって冷凍庫でも持ってったの?


ゆんゆん:刀は、まぁいろいろとな。あとダンジョンに冷凍庫背負っていくなんてアホみたいなことするわけないだろ。スライム以前に死ぬわ。過労で。もしくは圧死で。


とんちゃん:いろいろとねー? で? どうやって凍らせたんだい?


ゆんゆん:んー。液体窒素的な?


とんちゃん:なんでそこで疑問形ww


ゆんゆん:まぁなんだ。企業秘密的なやつ。


とんちゃん:ふーん。ま、いいや。そういえば私もダンジョン行くことになりました。


ゆんゆん:だから攻略情報気になったわけか。んで誰かと一緒に行く感じか? お前顔広そうだもんな。


とんちゃん:そゆこと。顔広い方だとは思うけど、そういうのじゃなくて、友達と雑貨屋の従業員と。どうせこのままじゃ雑貨屋してても意味ないし、従業員もなんかやる気になっててさ。ちなみにその子格ゲー女子。


ゆんゆん:ほほぉ。その従業員はゲームと現実を混同してるタイプか。危険すぎるだろ。今すぐ止めてさしあげろ。


とんちゃん:ゆんゆんは人のこと言えないと思う^^


ゆんゆん:それはそれ。にしてもなんで格ゲー女子がやる気になってんの? ゲームみたいなんていうニュースでも見つけたのか?


とんちゃん:ゆんゆんの話を少ししてしまってですね……。それでネットに張り付いて調べたらしくて、そしたらそれっぽいの見つけてうずうずしたんだって。あ、ちなみに停電なおってるよ。そっちも電気通ってるんじゃない?


ゆんゆん:あ、ほんとだ。充電コード刺しっぱで気付かなかったけど満タンになってるわ。


ーー マスター様は暗視できる状態になっていますので、気付かなかったのでしょう ーー

 なんで気付かなかったのか疑問に思っていた俺にエアリスが教えてくれた。

 そうか、腕輪を手に入れてもう少し明るくならないか、などとボヤいた時、急に明るくなったのは俺が見えるようになったからか。ということはつまり能力……【言霊】の効果ってことだな。ほんといらんこと口にするといつの間にかおかしなことになってそうだ。


ゆんゆん:まぁ気をつけろよ? でかい虫って結構やばいからな。急所ひと噛みされたらたぶん死ぬぞ。


とんちゃん:うん。その子は格闘技してたみたいだから私より大丈夫かも。問題は友達の方かなー。


ゆんゆん:どう問題なんだ?


とんちゃん:特定のことに関して以外は運動音痴。だけど危険に飛び込みたがる危険思想。


ゆんゆん:それはやばいな。


とんちゃん:ゆんゆんに言われたくないだろうけどね。


ゆんゆん:そりゃたしかに。んでお前は?


とんちゃん:不安かなー。DIYとかアクセサリー作りとかそういうのしかできないし。


ゆんゆん:じゃあ武器はハンマーだな。百トン目指してまずは金槌から始めよーぜ!


とんちゃん:マッチョにはなりたくないからそれはちょっと。


ゆんゆん:いいじゃん。マッチョ女子も需要はあるって。おそらくきっと。そんじゃ俺は寝る。おやすみー。


とんちゃん:はいはい。おやすみー。


 やり取りを終えた俺は、風呂に入りつつとんちゃんパーティのことを考えていた。

 もしかしたら最初にモンスター的なやつを倒すと腕輪が出たりしてな。その辺どうなのエアリスさん?


ーー はい。それで間違いありません。付け加えると、それを取得したと同時にエッセンスと人体が反応することで能力も取得します。取得する能力はその個体の望みに近いものがほぼランダムで選ばれます。しかしもしもご主人様の能力を得るべく【言霊】能力が欲しいと思っていても、その望みは叶えられません ーー


 どういうことだ? 希望の能力が手に入るけど望み通りの能力は手に入らない?


ーー はい。マスター様の能力である【言霊】は、マスター様の望みを可能な限り合成した結果生み出された唯一能力ということになります ーー


 よくわからんけどなんとなくわかる気もする。ところでなんで俺のは【言霊】なんていうある意味万能な能力なんだ?


ーー それはマスター様の潜在的に望んでいたものが、『全て』だったからと推察します ーー


 全て? じゃあなんで実際は全て思い通りになる能力じゃないんだ?


ーー わかりやすく言えば『全能』へ至るための経験値が足りなかった、と言ったところでしょうか ーー


 経験値、ね。なるほど。ゲーム脳で言えばモンスターを倒した時のモヤモヤしてるエッセンスとかいうやつ、あと星石も吸わせれば同じようなものになるってことだったよな。昨日エアリスが教えてくれたことを参考にすると、それがAPアビリティポイントに変換されて、それを消費して能力の強化・進化ができると。


ーー はい。その通りです。補足しますと、強化・進化の他に派生も可能かと。場合によっては取得済みの能力とは別の能力を取得することもあります。それらに必要なのは、経験値、AP、そして意思です ーー


 ん? 経験値とAPって別扱いなの?


ーー はい。全くの別物です。ワタシであれば互いに融通し合うこともできますが、別々の用途もあります。ワタシのような存在がいれば調整は簡単なのですが、一般的な人類では不可能でしょうからマスター様は特別であると言えます ーー


 特別、か。そういえばステータス的な? 身体的な能力とかも成長したりするの?


ーー はい。身体的な能力、フィジカルを成長させるには経験値とAPの両方が必要となります。イメージとしては経験を元にAPにより身体機能の変化を促すといったところでしょうか。試しにステータスを変更しますか? ーー


 いえす。でもその前に現在値を表示してくれ。


ーー マスター様に合わせ、STR・DEX・AGI・INT・MND・VIT・LUCを円グラフで表示します ーー

 すると視界にステータスがグラフで表示される。特にこれと言って突出したもののない、平凡を感じるなかなか綺麗な円形のグラフだった。


 数値はないんだな。あとHPとかMPとかそういうのも。


ーー 数値化するための基準が曖昧なため、数値化を断念しました。独自の基準で数値化することは可能ですが、それはあくまでマスター様にのみ有効なものです。例えばSTRを10と表示しても、他人の定義での10とは差異があるため数値化は推奨されません ーー


 ほぉ。でもそんなに違うもんかね。


ーー 人種、年齢、性別等をわけて統計を取ることでより正確な共通の数値を割り出すことは可能ですが、マスター様の交友関係をスキャンした結果、サンプルが明かに足りないため検証は非現 ーー


 すばらしく鋭い刃を突き立ててきたな! グッサリきたよ! このやろう!


ーー 申し訳ございません。しかし時に愛を持って厳しく接することが大事、ワタシが先ほど拝見した恋愛白書にはそういう記述がございました。全てはワタシとマスター様の愛を育むためということでひとつ ーー


 恋愛白書っていうより子育て白書じゃねーのそれ。まぁいいや後半はスルー。


ーー ヨヨヨ ーー


 はいはい。それで? このステータスを上げれるわけ?


ーー はい。上昇、下降はワタシがサポート・代行して操作致しますので、理想のステータスをお望みください ーー


 下降もできるのか。まぁあんまり使わなそうだよな。下がってもいいことなさそうだし。じゃあとりあえず、この最弱のSTRとVITを一番高いINTとMNDよりも上げて……DEXとAGIもINTとMNDと同じくらいに。

 そう思い浮かべると、グラフのステータスが上昇する。同時にグラフが縮み、それに反比例して空白部分が増える。


ーー おめでとうございます。総合値が一定を超えたため上限値が伸びました ーー


 はいはいありがとう。そういう感じなのか。特化させたくてもなかなか難しいのかな。


ーー 星石をある程度集めればステータスの総合値が足りなくとも上限突破が可能ですが、現在の保有数では足りません ーー


 なるほど。じゃあそれは置いといて、STRとAGIを上げれるだけ上げてみて。


ーー ……可能ですが、全力で行動した場合にVIT不足により足が砕けたり振り抜いた刀と共に腕が飛んで行ってしまう恐れがありますので推奨しません。ですが、もしそうなった場合はワタシが誠心誠意尽くす所存でございますので心配はいりません。実行しますか? ーー


 いいえ。そうならない程度に他のステータスも調整してぷりーず。


ーー はい。調整しました。残念です ーー


 はいはいありがと。



 そんなこんなでいつの間にか日が変わっていた。


エアリスは主人公を元に作られているので頭のおかしい言動は主人公のせいです。

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[良い点] レビュー全文 【物語は】 主人公のある一言から始まっていく。主人公のモノローグにより、報告のようなスタイルで現状が明かされる。 この物語では、ダンジョンの中が『床、壁、天井が淡く発光して…
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