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非日常になった世界でも日常を過ごしたいなと思いまして。  作者: あかさとの
4章 うつろう世界でものんびりしたい

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休日は大体なかったことになる件


 目が覚めるとほどよい距離で香織が寝息を立てていた。視界の中に顔全体が入らないほどの距離は、密着しているよりもなんだかドキドキしちゃうな。とりあえず起きてもらおう。


 「おはよう」


 「うぅ〜ん。おはよう……ございま……すぅ」


 「……あれ? 起きたと思ったのに」


 反応がない。いや、ないっていうかしてない、だろうか?

 こういう時は必殺の……効くだろうか? ええい! 勢いは大事だ! 


 「……ありがとね、香織」


 「……ふふっ」


 俺にできる必殺技なんてこんなものだな。呼び捨ててしまったが本人も良いっていってたしいいか。

 しかし反応はしたがすぐに起きるようなことはなかった香織を寝かせたまま俺はリビングへ。するとチビもついてきたのだが、おそらくお腹が減っているのかもしれない。育ち盛りだもんな。もうすでにデカいんだけど。

 キッチンではいつも通り悠里がトントンとリズミカルな音をさせていた。


 「おはよう悠里」


 「おはよー。もうすぐできるから待ってて」


 俺に続きさくら、杏奈、少し遅れて香織が起きてきた。ダンジョンができる前ならこんな生活は考えられなかったな。だって女性四人と一つ屋根の下なんだぜ? ベッドに潜り込んできたり風呂場に転移してきたり、過剰なスキンシップも割と多いんだ。だけど一線は越えてないんだよ。逆に信じられないだろ。『ワタシの功績ですね』と言うエアリスだが、実際そうかもしれない。関係にはいろいろあるが、“そういう関係”になってしまうと不和を招く可能性が高そうだからな。


 それはともかくとして26層を見て来なければならない。また25層のようになっていたらと考えてしまい、ちょっと焦りのようなものを感じてしまうからだ。

 昨日はその対処で疲れてしまって、フラストレーションが爆発しかけたと言うか、ちょっと嫌なやつになってしまったという自覚があるし、知るならなるべく早い段階に余裕を持って、と思ったのだが。


 「今日は26層に行かないでお休みにした方がいいんじゃないかしら?」


 そんなことをさくらに提案されるが、やっぱり余裕のあるうちに知っておいた方がいいような。


 「武器をがんばって作ったのにその後はあんな光景を何度も見ることになりましたし……休日にしましょう?」


 俺がリビングにきてからすぐに起きてきた香織も休日派。

 俺だってできればそうしたい。好きなことをしながらのんびりという俺流のんびり術を実行するためにダンジョンで暮らしてるようなものなのに、あんな絶望感を何度も味わうのは嫌だ。それはそうなんだが。


 「そうっすねー。あたしもそれが良いと思うんすよ」


 そして杏奈もか。まぁみんな気遣ってくれてるんだろう、それはすごく感じる。でもいつやるのって言われたら、今でしょってなる、そういう世の中じゃないか? こんなとき悠里なら背中を押してくれるんじゃないかと思ったりする。


 「ごはんできたよー。悠人、今日は休日にしようよ。今やるよりも後にした方がいいことだってあるんじゃない?」


 結局みんなの意見は一致していた。


 「多数決なら決まりよ?」


 「民主的ですね!」


 「じゃあ今日は格ゲーしましょーよー。手取り足取り腰取り教えてあげるっすよ?」


 腰は格ゲーに関係……ないよな? 杏奈はいつもこんなだから、一瞬腰が関係あると、感覚が麻痺したように感じてしまった。


 「じゃあ悠人、自衛隊が攻略できなかったダンジョンに行ってみない?」


 「それいいわね〜」


 「白い鴉がいるところですよね? 香織も行ってみたいです!」


 「仲間外れは嫌なんであたしも行くっすよー」


 ということで煮え切らない俺の代わりに女性陣が予定を決めていく。それに関しては俺も異論はないし、他のダンジョンがどういう感じなのかみてみたいし白い鴉にも興味ある。どういう鳴き声なんだろうか。普通にカァーカァーなんだろうか……まぁいい。


 朝食の後、準備をしてからリビングでのんびりとさくらの紅茶に癒され、そのまま離宮公園ダンジョンへエアリスに頼んで転移した。一度転移の珠十個ほどにそこを登録しログハウスに戻る。それをみんなに渡してまた転移でダンジョンへ。

 なぜこんな面倒なことをするのかというと、俺やチビと違い他のメンバーはメイトブレスレットで転移すると消耗が激しいのだ。エアリスによると少しずつ効率化をしているらしいがそれでもまだ多く、転移の珠を使い捨てた方が低コストなんだとか。


 「そういえば“大いなる意志”によると、大人数でダンジョンに入ると難易度があがるんだったよね?」


 「そういえばそうだったわね。五人と一匹だけど大丈夫かしら?」


 「ちょっと不安だけど」


 「大丈夫っすよー、何も問題ないっす」


 おお! さすが格ゲーマニア、なにかそういうパターン的なものを発見したのだろうかと思いその根拠を問う。


 「え? ないっすよ?」


 「悠人さんは香織が守るので大丈夫です!」


 「じゃあその香織は私が守ればいいよね」


 「じゃあじゃあ悠里さんはあたしが守るっす!」


 「それなら私はどうすればいいかしら? 全員守っちゃえばいいのかしら?」


 うん、期待した俺が間違っていた。ただのパワープレイ、ゴリ押しだな。でもなんかいいな。


 「さくらさん男らしい! 素敵っす! 結婚してっす!」


 「あらあら。うふふ〜」


 ぼそっと、ゲームのようにお互い助け合うパーティみたいだと言うとみんながそれを起点に話を進める。


 「お! いいっすねそれ! 何パーティにします?」


 「御影と雑貨屋で……“御影屋”かしら?」


 よっ! 御影屋! つってね。歌舞伎とかで客が言うやつみたいだ。でもそれじゃさくらとチビが入っていないな。


 「じゃ、じゃあ、悠人さんを守り隊! というのは?」


 男のくせに女に守ってもらうなんて! とか言う人が出てきそうだな。でも俺は知っている、女性は強い、と。特にここにいる女性たちは。


 「悠人と愉快な仲間たち?」


  悠里が言うそれはいかにもありきたりな、むしろ名前考えんのめんどくせー派がよく使う気がする。個人的にはそれでもいいんだが、自分の名前が入ってると途端に「それはちょっと」となるな。


 「まぐまぐ、なんてどうっすか?」


 流れをぶったぎって意味有り気な言葉を発する杏奈。一体そこにはどんな意味が込められているんだろう。


 「意味なんてないっすよ〜。なんかかわいいなーって。それでも強いて意味をつけるなら〜……マグネティックとかマグナとかそういう感じっすかね?」


 磁石?


 「磁石みたいに惹き合った、なんてどうです? ちょっとロマンティックじゃないっすか? それにマグナ・ダンジョンから始まった集まりみたいなもんですし。ダンジョンがなければ、あたしたちってたぶん知り合いにすらなってなかったと思うんすよね!」


 「私は良いと思うわよ?」

 「私も良いと思うよー」

 「香織も賛成です!」


 なるほど。反対はいないみたいだし、それなら俺もいいかな。


 「じゃあ“マグマグ”結成……と言いたいとこっすけど、ぶっちゃけ“ログハウス”で良いような気がするんでログハウスで!」


 俺も含め「ここまでの流れは一体どこへ」と思ったに違いない。

 でもこういうのって、話し合ってる段階も楽しかったりするんだよな。


 ということでログハウスにいる俺たちののパーティ名は“ログハウス”に決まった。そのまんま、安直オブ安直である。


 現在地は離宮公園ダンジョン一層だ。さくらが一度外に出てこれから攻略することを伝えに行き、俺たちは入り口にシートを敷いてその帰りを待っていた。

 しばらく経つとさくらが戻ってきた。なぜか総理と自衛官を伴って。


 「み、みんな〜? ただいま〜」


 「お邪魔するよ」


 「おじいちゃん!?」


 珍客に対しそれぞれ挨拶をする。というかこちらが珍客か。杏奈は初対面だったようだが、悠里は「お久しぶりです」と言って世間話までしていた。


 「香織〜! 元気だったか?」


 「うん。おじいちゃんも元気そうだね?」


 「元気じゃないと総理なんてやってられないからね」


 そういうもんだろうか。それにしてもなぜこんなところに総理が?


 「視察という形で来ていたのだが、西野君がダンジョンから出てきてね。香織もいると言うから久しぶりに顔もみたかったし、そのついでにモンスターを一匹倒そうと思ったんだよ」


 それを聞き、今日は攻略じゃなくなった事を確信した。


 「そういうわけだから、御影君、よろしく頼めないかね?」


 「ネクタイピンは……ちゃんとつけてますね」


 「当然だ」


 「あっ! これが電話で言ってたネクタイピン……虹星石もダイアモンドみたいにカットすると、こんなに綺麗なんですね〜」


 「うむうむ。御影君に大事な指輪をもらう時には同じようにカットしてもらうと良い」


 「え? じゃあ今から香織ちゃんの星銀の指輪に付けてる虹星石、ラウンドブリリアントしよっか?」


 なぜか急に静かになったのだが……あれ? 俺、なんか変なこと言っただろうか? 俺たちにとって大事なのは自衛に役立つ星銀の指輪だよな。


 「……ほんとうに彼で大丈夫なのか? 香織……」


 「うぅ〜……悠人さんってこういう人だから」


 「そ、そうかい……どうしても煮え切らないようならおじいちゃんがガツンと言ってやるから言いなさい」


 「おじいちゃんは余計なことしないでっ!」


 「お、おう……そ、そうだなすまんすまん」


 何の話をしているのやら。

 チビがちっちゃな尻尾をふりふりして総理を窺っているが、香織と仲良く話すのを見て自分も混ざりたくなったのだろうか。


 「わふ!」


 「お? ちっちゃくて気付かなかったが、この子が先日君が言っていたチビか?」


 「はい。チビ、ちょっとおっきくなって」


 俺の陰に隠れるようにしていたチビが元のサイズに戻るとその体高は俺の胸のあたりまで来ていた。最近は基本的に小型化しているが、それでも成長するらしい。

 総理は大きなチビに感嘆の声を上げ、一緒に来ていた自衛官は息を呑み、さくらは「また大きくなったわね〜。逞しいわぁ〜」と言って横腹をくすぐる様に撫でていた。なぜだろう、さくらが言うとその仕草も相まってドキリとさせられる。


 「な、撫でても大丈夫かね?」と言った総理はこちらを見る。


 「大丈夫だと思いますよ。いいよね、チビ?」


 「わふ」


 「で、では失礼して……お、おお……これは……なんという手触り」


 しばらくもふっていた総理は満足すると隊員に対し戻るように指示、しかし隊員は一歩も引かず一緒に来ることになった。総理はモンスターを一匹倒すのが目的のようなのですぐ済むだろうが、この人数でどの程度難易度が上がるのか不明なのでちょっと不安はある。そもそも難易度があがる条件ははっきりとはしておらず、入場時の人数次第ではないかというのはあくまで想像に過ぎない。


 “大いなる意志”は人数が多くなると、とは言っていたが最初に入った時なのか、同時に入ったと判定された場合なのか、ダンジョン内の総数なのか。ともあれ俺たちは総理と隊員を囲む形で進む。このダンジョンは入り口はそれほどでもないにもかかわらず通路が広く、七人で移動してもそのままの隊形で進む事が苦にならない。

 少し進むとダンゴムシではあるのだが、俺が知っているのよりも二回りほど大きいものが数匹いた。


 「じゃあ一匹にして拘束しますので、大泉さんはそれをがんばって倒してください」


 総理の返事を待たずみんなで露払いをする。俺たちにとってこのくらいは朝飯前だ。


 「セイッ!」

 「【アイスランス】!」

 「よいっしょ!」


 雑貨屋三人娘がそれぞれの武器で数を減らす。


 「残り一匹になったね。じゃあ『腹みせて動くな』」


 「あらあら〜、お姉さんやることなかったわね〜」


 残り一匹、それも俺の【真言】によって強制的に柔らかい部分を差し出したような格好になったものだけになった。


 「み、御影君、あれを倒せばいいんだね?」


 尖った鉄の棒みたいなものを抱えた総理がちょっとビビリ気味に聞いてきた。


 「はい。腹は割と柔らかいので、そうですね……これを使ってください」


 この間作った武器の余りの槍を総理に渡す。少し重いようだが、そこは悠里が【メガパワーレイズ】をかけて解決している。

 そして総理の気合一閃……一刺? が炸裂……しただろうか? いや、しているはずだ。何せ総理、両肩に乗った責任の重さなら日本一。


 「ぇ、えいぃぃ!」


 「お、おじいちゃん弱そう」


 香織の言っていることには誰もが納得するだろう。しかし孫である香織以外それを指摘するなどなかなかできることではない。なんてったって相手は総理大臣なのだから。


 「こ、こういうことは苦手でな……」


 「よくおばあちゃんを捕まえられたよね」


 「……むしろ捕まったのはこっちなんだが。『私が守ってやるわ!』なんて言われてな」


 「さすがおばあちゃん!」


 そういえば香織のおばあちゃん、総理の奥さんは武術の心得があったんだったか。

 二人の会話を聞いていたみんなは一様に『あ〜、なるほど』と思っていた。

 チクチクと繰り返し、なんとかダンゴムシの腹に槍を突き立てることに成功した総理。無事腕輪を手に入れてご満悦の表情だ。


 「香織や〜、これでおそろいだな?」


 「そうだね〜」


 「そうだ、御影君」


 「はい? なんでしょう?」


 「ログハウスに連れて行ってくれんか?」


 いきなり何を言ってるんでしょうかこの総理は。

 隊員に止められるも諦めず、香織に言われても折れない総理。一旦入り口に戻り総理と隊員は一度外へ出て行った。


 その間に考えてみたが、ダンジョンの中で生活が可能であるということは総理として放っておけない案件だろう。そして大泉純三郎個人としては自分の孫がいるところなのだ。気にならないはずはない。


 「おじいちゃんったら無理言って」


 「ログハウスの転移の珠はあるし大丈夫だよ? それに離れもあるからそこに泊まってもらうこともできるし」


 「で、でもご迷惑じゃ……」


 香織は俺たちの事を考えてくれているということだな。まぁたしかに、ログハウスは俺たちの拠点というか休憩所というかそう言った意味合いの強い場所として建てた。となるとそこに総理っていう賓客を招くというのは、安らぎの空間の邪魔をしてしまうかもしれない、そういうことだろう。

 しかしさくら、的を射てしまう。


 「おじいちゃんに邪魔されるのが嫌なのよね?」


 「……正直言えば」


 みんなを気遣ってというより、香織自身がちょっと嫌だったらしい。たしかにもしも自分たちのシェアハウスに親が来たらとても嫌かもしれない。

 だがその環境を見たいだけかもしれないし、一度見てもらえば満足するのではないだろうか。授業参観? 家庭訪問? なんかそんな感じだろう。


 「そうかしら?」


 「そう思えないんですよね」


 少し経ち隊員だけが戻ってきて俺たちに出てきて欲しいと伝えられた。素直にそれに従うが……仮面つけてないな、大丈夫だろうか。そんな俺の不安を察したのかさくらが問題ないと言ってくる。


 「悠人君、ペルソナじゃなくても大丈夫よ?」


 「なんで?」


 「だって悠人君は私の推薦で探検免許を取った人よ? 居てもおかしくないじゃない?」


 「あ〜。そういえばそうか」


 さくらが言う理由に納得し、先頭を歩く自衛官についていく。

 総理は応接室のある建物の中で俺たちを待っていたようだ。その間に必要な連絡を済ませていたらしく、ログハウスに来る気満々といった様子だった。


 「皆、昼食はまだだろう? 蕎麦でもどうだね?」


 「護衛任務ではないのですよね?」


 「大丈夫だよ西野君。ペルソナを呼ぶまでもないさ。それに西野君がいれば問題ないだろう?」


 そう言った総理は俺たちにだけ聞こえるように「休日を邪魔したようですまないね」と付け足した。

 俺たちは総理に連れられ黒塗りの高級車二台でいかにも高級そうな蕎麦屋へと足を踏み入れた。そこは通常の席の奥に大小様々な個室があり、一番大きな個室へと通された。ちなみにチビは超小型犬サイズで香織に抱かれている。


 「総理ともなると、ペット連れてても文句言われないんですかね?」


 「ここの主人が毛が飛ばなければいいと言っていたからね、大丈夫だろう」


 それぞれが食べたい蕎麦を注文し舌鼓を打つ。総理が奢ってくれるというので杏奈は二回おかわりをしていた。そんな杏奈を見ていた総理は、俺たちにももっと食べなさいとすすめてくれていたのでみんなでりを一皿追加させてもらった。

 俺たちが食べている様子を見るのは総理にとって楽しい事らしく、杏奈がよく食べるのでさらにすすめていた。杏奈は容赦がないように思えたがそれ以上蕎麦を追加することはなく、実際はそうでもないかもしれない。


 「あっ、デザートのアイスクリームもいいですか?」


 「うむうむ、坂口君はたくさん食べるね、見ていて気持ちいいよ。いくらでも注文しなさい」


 やはり遠慮がないのかもしれない。しかし総理はそれを見て楽しそうだ。杏奈は節操無しのお調子者のように思えることが多々あるが、それでいて周囲へは気を配っている。おいしそうに食べる杏奈を見る総理の期待を裏切らないようにしているというのもないとは言い切れない。


 昼食も終わりいつの間にか席を外していた香織が戻ってきたのを合図に離宮公園ダンジョンへと戻った。ダンジョンの前にある詰所にはこの場に似つかわしくないやさしそうなおばあさんがいた。


 「ん!? 初枝ハツエ!?」


 「おや、純さんに香織。やっと戻ってきたんだねぇ」


 「おばあちゃん! 来てくれたのね!」


 来てくれた、とはどういうことだろうか。そういえばさっき席を外した時、スマホを持って行っていたような。

 その香織は総理に向き直り言った。


 「香織が呼んだんだよ?」


 「そういうことさね。純さんがログハウスに行くからおばあちゃんも来てって言われてねぇ。純さん、抜け駆けなんて……いけずだねぇ」


 「そ、そうだな。ごめんよ初枝」


 「それでねおばあちゃん。西野さくら、佐藤悠里、坂口杏奈、そしてこちらが御影悠人さんです! あっ、それとこの子はチビっていうの。ほんとはすごく大きいけど今はちっちゃくなってるんだ。ねー、チビ」


 「わふ!」


 「おやおやあんた悠里ちゃんだったのかい? 美人さんになったもんだねぇ」

 「お久しぶりです、初枝おばあさん」


 「それとあんたが杏奈ちゃんだね。香織と一緒にダンジョンに行ってるんだってね。これからも仲良くしてやっとくれ」

 「初めまして香織さんのおばあちゃん! もっちろんそのつもりです!」


 「あんたが西野さくらさんだね。お姉さんみたいな人だって香織が言ってたよ。」

 「初めまして〜。あらあらお姉さんだなんて、お姉さんうれしいわぁ〜。」


 「そしてあんたが……悠人君だね」


 婆さんは品定めでもするかのように視線を這わせ、俺は思わず緊張してしまう。しかしすぐにそんな雰囲気は解かれ婆さんはにこにことし始めた。


 「……なかなか良い男じゃないか。香織が好きそうだねぇ」


 「は、はぁ。初めまして、御影悠人です。香織さんにはいつも助けられてばかりで」


 「そうかいそうかい。おっと、香織が抱いてる可愛い子がチビちゃんだね? よろちくね〜、お婆ちゃんだけど仲良くしてくだちゃいね〜」


 「わふわふ!」


 「は、初枝? 恥ずかしいからそういう言葉遣いは……」


 総理がそう苦言を呈すると「かわいいんだから仕方ないじゃないですか」と恥ずかしげもなく真顔で答える。それには然しもの総理大臣もタジタジだ。


 「それはそうなんだが、人の目があるんだから威厳というものがだな……」


 挨拶も済み小言を言う総理を宥めながらダンジョンに入る。ダンジョンには護衛が付いて来たそうな素振りを見せていたが、「夫婦水入らずを邪魔する気かい?」と言った婆さんには勝てなかったようだ。というか、俺たちがいる時点で水入りまくりである。


 「じゃあはい、これ持っててください」


 「ん? なにかねぇ?」

 「この珠は一体……?」


 (じゃあエアリス頼む)


ーー 大泉夫妻の転送を開始……完了しました ーー


 「さて、俺たちも行こう。『転移』」


 ログハウスに転移すると夫妻は興味深げに中を見て回った。個人の部屋は香織の部屋だけにしてもらい宿泊してもらうための離れも案内する。案内するとは言っても離れは大したものはないので、「ここが露天風呂でこっちが部屋です」くらいしかなかったが。しかし大泉夫妻にとってはとても素晴らしいものに感じたようで、終いには「ここに住んでもいいだろうか?」と聞いてきた。答えはもちろん、Noだ。でも時々なら遊びに来ても良いと思う。


ーー ご主人様、大泉夫妻のステータスをチェックしていませんね ーー


 (そういえばそうだったな。まぁそのうちでいいんじゃない? っていうか総理はチェックするまでもなく最低値だろうしな)


ーー わかりました。それにしても香織様がご主人様を守るとよく言っていましたが、どうやら血筋のようですね ーー


 (うん、それ俺も思った。大泉さん、奥さんには頭が上がらないっぽかったな)


ーー それが夫婦円満の秘訣とインターネットで見ましたので、ワタシもご主人様が頭が上がらない存在になれるようにがんばります。よろしくおねがいします ーー


 (何がよろしくなんだよ)


ーー おや? みなさんリビングに集まっているようですね。ワタシたちも参りましょう ーー


 そういうわけで俺はみんながいるというリビングへ向かった。



読んでくださりありがとうございます。

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