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非日常になった世界でも日常を過ごしたいなと思いまして。  作者: あかさとの
5章 適応する世界でものんびりしたい
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Xmas特別編 とあるログハウスのクリスマス

時系列無視です。


 今日はログハウスでクリスマスパーティをするということになっている。思えばパーティなどしたことがなかった俺はいつもより豪華なご飯が並ぶのだろうという程度にしか考えていなかった。

 だからなのかは知らないが、今日もフェリシアは元気である。


 「さぁ悠人ちゃん! 今日はお出かけします!」


 「おう、いってら〜」


 「……悠人ちゃんも行くんだよ!」


 「おう、いってら〜」


 「ぐぬぬぅ……新素材が待ってるのに」


 「え? なんだって? 新素材って言った?」


 「そう! 新素材だよ! うれしいね! うれしいよね!」


 「うん、うれしいうれしい。そんでどこにあるんだ?」


 「ふふん! 着いてきたまえ!」


 「着いてこいって、走ってこいって?」


 チビの上にすでに乗っているフェリシアに聞くと、自分の後ろ側のチビの背中をトントン。そこに乗れということだな。しかしチビに跨るのはいろいろと大変なのだ。そこで俺はさくらに頼み“馬”を貸してもらうことにした。


 「呼ばれて飛び出て馬馬馬馬〜ン!」


 「馬よ、相変わらずテンションたけーな」


 「え? だってすんごいテンションだださがったネガティブホースが壮絶な顔をして恨み言を言いながら出てくるよりは楽しいじゃろう?」


 「まぁ、うん」


 「して、お主らを乗せれば良いのじゃな?」


 「頼めるか?」


 「まかせんしゃい! 我は彼の地に君臨せし土地神の神馬!それくらい容易いんじゃもん! ブルル!」


 「よし、アシはゲットしたぞ。フェリも乗るだろ?」


 「え、でもチビがせっかくやる気に」


 チビを見ればチビは馬に乗りたそうにこちらを見ている……気がした。そんなチビに「乗るか?」と問うとすぐさま小型化し超小型犬サイズになる。そのままフェリシアの胸にジャンプし、フェリシアもそれをキャッチ、準備は完了だ。


 「チビも乗ってみたかったの?」


 「わふ! わふ!」


 「そうだね、いつも乗られる側だもんね」とフェリシアは言うが、当たり前のように乗っているのはフェリシアくらいだ。越えられない壁が間にあって次に香織、次が俺か。

 ところでフェリシアもバウリンガルなのだろうか。


 「チビの言葉がわかるのか?」


 「言葉っていうか、それっぽい感覚? みたいな?」


 「なんとなくわかるってことか」


 「プライベートダンジョンを含めた21層よりも浅い層のモンスターは、ある意味僕の子供みたいなものだからね。だからじゃないかな?」


 「へ〜。そういえばエアリスもわかるんだよな?」


ーー はい。余裕のよしこちゃんです ーー


 「ま、そうだろうね〜」


 以前から通訳みたいな事してるしな。しかしいちいちネタが古い。今時よしこちゃんは聞かなくなった名前だから、その名前が流行った時代のギャグはどうなんだろう。まぁいいけど。

 とりあえずチビの言ってる事がわかるのはエアリスとフェリシア、つまりダンジョン生まれなやつだけだ。つまり俺にチビの言っていることがわからなくても何もおかしいことはないということだけはわかった。


 「そんなことより早くいこ!」


 「はいはい」


 俺たちは馬に乗りダンジョン内の森を駆け抜けた。この馬はパッカラパッカラと足音はするのだが、それに伴う衝撃が全くなく単純な平行移動をしているような感覚だ。しかも巨大なため大人三人が乗ってもまだ余裕があったりする。

 そのまま馬に揺られ、とはいえ揺れないので運ばれた先は、21層の視界が届く範囲では最果ての地だった。視界が届くとは言ってもここまで車並みの速さで二時間ほどの移動時間だったことから、百キロメートル以上離れた場所なのは間違いない。


 「しかしダンジョンって、迷宮っていうより別の世界だよな〜。広いし」


 「そりゃね〜。20層と21層は特別な場所だからね。一応プライベートダンジョンはここから生えたと言える存在なわけだし」


 「そうなのか。っていうかここ、ダンジョンなのに寒くね?」


 「そうだね。でも目的地はもう少し先だよ。そこに山の谷間が見えるでしょ? そこから行けるよ」


 「ふむ。じゃあそういうことだから、馬よ、頼むぞ〜」


 「脚がなるわい!」


 それから更にしばらく進むと、あたりの景色はある一線から銀世界へと切り替わった。トンネルを抜けるとそこは雪国どころの話ではなく、谷間を歩いて周囲を山に囲まれた場所を歩いていたらいきなり雪国になったのだ。


 「ふお〜。さっむい」


 「雪だ〜! ふわふわしてる!」


 「実際触った事は……ないんだよな?」


 「うん、この体を創ってよかったよ。初めてがたくさんだよ」


 「そりゃよかった。それで、ここが目的地?」


 雪の中、もとい雪の上を滑るように進む馬に乗った俺たちが行き着いたのは一本の巨大な天を衝くかのように聳え立つ木だった。雰囲気としてはモミの木、しかしその巨大さは下からでは天辺がわからないほどだ。


 「そう。これがうまく育ってくれてよかったよ。よかったね」


 「フェリが植えたのか?」


 「ん〜……似たようなものかな?」


 「ふ〜ん。それで、新素材ってこの木か? 切ればいいのか?」


 「ち、違うよ! 確かにこの木なら丈夫で燃えないログハウスも作れると思うけど」


 「う〜ん。じゃあゲーム的に言えば、なんかイベントでも起きるのか?」


 「正解!」


 「ほぉ。まさかサンタクロースが来るとかじゃないだろうな?」


 「え!? どうしてわかったの!? すごいよ! すごいね!」


 「冗談のつもりだったんだが」


 「やっぱりイベントって大事だよね? だからじっくり仕込んでおいたんだ!」


 じっくり仕込んだ……?


 「なんだかいや〜な予感がするんだが」


 「悠人ちゃんなら大丈夫だって!」


 巨木の根本で予定の時間まで待っている間、フェリシアからいろいろと話を聞いておいた。どうやらここは特定の日時に男女のみで訪れることをトリガーとしてイベントが発生するらしい。そのイベントというのが……


 「来たよ! じゃあがんばってね!」


 「せめて戦える人と一緒に来たかった」


 俺たちの目の前には鹿……ではないな、トナカイの群れ。角は立派で地上のトナカイよりも少し大きい。そして毛の長さも地上のトナカイよりも長く、銀色にきらきらと煌めいている。目は赤ではなく薄い緑色だった。モンスターと言えば赤い目なのだが、そこはイベント限定の特別なモンスターだからかもしれない。


 一頭がこちらに角を向けて駆け出し、俺はその角を折らんと銀刀で一閃……したつもりなのだが、銀刀の刃はその角に受け止められしゃくり上げられた角によって宙を舞った。


 「うそだろ……」


ーー 仕方ありません。まだ銀刀はver.3 ですから ーー


 「しゃーない。『換装』」


 ペルソナモードへと移行し二メートルもの長さを誇る幅広の大剣にエッセンスを込める。またも突進して来たトナカイは剣煌を放つエリュシオンによって両断され、その体は黒いエッセンスに包まれている。他のトナカイが警戒し襲ってこないのをいいことにそれを腕輪に吸収、しかし不思議な事に角はそのまま地面に落ちている。手に取るとずしりとした重さを感じ、これが新素材なのだろうと思った。


 残りのトナカイも片付けると、どこからともなくシャンシャンと音が聴こえ始める。この時期、地上ではこんな音が入った曲が街の彩を一層際立たせているのだが、まさにそんな音だ。ということはそういうことだ。


 空からやってきたのは、赤い帽子に赤い服、そしてなぜか白と金のマントをつけた長い白髭が特徴的なお爺さんだった。表情はにこにこしているためその目は細められているが、薄らと見える両瞼の奥には金色の瞳が窺えた。


 『ホーホーホーウ! 麗しの女神、お初にお目にかかります』


 その老人はよくわからない言語でフェリシアに向かって何かを言い恭しく一礼。エアリスもこの言語は知らないとのことでその時の俺には何を言っているやらわからなかった。


 『はじめましてだね。準備はできてるのかな?』


 『それはもちろんでございます。して、そこなおのこが女神様の見初めた者でございますか?』


 『えっへへ〜。そう見える? 見えるよね?』


 『ではその者にプレゼントを送ればよろしいのですね?』


 『ん〜。そうなんだけどそうじゃないっていうか。普通のを六人分、あと特別なのを一つお願いするよ』


 『女神様のお望みとあらば喜んで……と言いたいところではございますが』


 『わかってる。わかってるよ。楽しませればいいんだね?』


 『えぇえぇ、そうですとも。しかし私を楽しませてくれそうな者は……狼と馬は除外として、そこのおのこだけですね?』


 『そうだね、そうだよ。でも大丈夫だよ。あ、それと一応保険はかけておきなよ?』


 『ホーホーゥ! それほどですか! 楽しみです……タノシミDEATHネ〜』


 楽しげだった老人の表情が、修羅顔のまま笑ったような、別の意味で楽しそうな表情へと移り変わっていく様はホラー映画をみているような気分だった。フェリにどうしたのか尋ねると「あいつ倒して?」と非常にあっさりとした返事が返ってきた。


 老人は決して小柄ではない。むしろ俺よりも体格が良く恰幅も良いため対峙すると実際よりも大きく見える。そんなサンタスタイルの老人が修羅顔で歯が見えるほど口角を上げニヤニヤとしているのだ。おそろしいにも程がある。


 (これは子供には絶対見せちゃいけないサンタだな……)


ーー 種族……聖人だそうです。名称は……ニコラウス……クーネ、でしょうか。後半はノイズが走ったようでよく見えないのですが ーー


 (聖人様と戦えって? 冗談きついな……大体、ゲームでもこういうのってやばいやつだろ)


 聖人ニコラウス・クーネはその体躯からは想像できない軽やかな足取りでこちらへと突進してくる。その開かれた両の腕は俺を捕えんと迫るが、こちらとしてはジジイの抱擁など御免被る所存だ。しかし深い雪に足を取られいつものように動けない俺は、転移を使い空中へと跳んだ。そしてすぐさま翼を展開、今は仮面をつけているためその翼はドラゴンと見紛うほどの威容となっている。その翼を目にした聖人ニコラウス・クーネは驚きに目を丸くするが、その表情はすぐに元どおり。そして腰のあたりを手で探ったかと思うと、その手にロープのような鞭が握られていた。


ーー あれでマスターを絡めとって引き落とそうという魂胆ですね ーー


 (あれ切れないかなー)


ーー どうでしょうね…… ーー


 (うん、エアリスが不安そうだからやめておこう。まぁ当たらなければ——)


 『ホーゥ! 捕まえたぞい!』


 「は? いつの間に……ッ!」


 鞭を振るった仕草などまるで見えなかったのだが、実際に鞭は俺の右足に巻きついていた。そこから空中の俺と地上の聖人ニコラウス・クーネの綱引きとなった。


 (この鞭の能力かなんかか? 見えなかったぞ)


ーー お待ちください…………なるほど、目視した相手を好きなように『捕らえる』ことができるようです。しかし捕らえるという特性上、攻撃力としては皆無となります ーー


 (なんだよそのクッソチート。ってかそんなことができるならなんで足だけなんだ?)


ーー ……おそらく、楽しんでいるのでしょう ーー


 ドSサンタ? むしろドSのSはサンタのSだった? ってそんな場合じゃないな。


 (なるほど。要するに舐められてるわけね)


ーー はい。ステータスを調整しますか? ーー


 (頼む)


 綱引きの優劣は初めは俺の劣勢だったが、徐々に俺が巻き返していった。聖人ニコラウス・クーネの足がもうそろそろ地上から足が離れる……といったところになり、聖人ニコラウス・クーネはその鞭を霧散させた。


 「ふぅ。爺さん、綱引きは俺の勝ちみたいだな」


 『ホーホーゥ! やるのぉ若いの。タァノシイナァ〜』


 「ん〜? んー。何言ってっかわかんね」


 次に聖人ニコラウス・クーネが取り出したのは超巨大な鉈。全長およそ5メートル。それを軽々と片手で持ち上げ、肩でトントンとしている。表情はもちろん修羅な笑顔だ。

 サンタにあるまじき表情と、サンタが持っていてはならない武器にこちらは真顔にならざるを得ない。


ーー エリュシオンと同等の高度、切れ味と見ました。危険と判断します ーー


 (つってもあれ見てみ、ぎこちないけど居合っぽい構えしてるぞ)


ーー そうですね。おそらくトナカイとの戦いを見ていたのでしょう ーー


 (じゃあ次はあのでかすぎる鉈と居合勝負しろってことか)


ーー ステータスは調整完了しています。がんばってください ーー


 いつの間にか降りはじめた雪が一瞬俺の視界を塞いだ瞬間、聖人ニコラウス・クーネがその巨大な鉈を振るう。視界は塞がった瞬間があっても索敵、さらにはホルスの目、それらを合わせた【天眼】を持つ俺にとってそれは不意打ちにはならなかった。構えている間に流し込んだエッセンスを爆発させ、辺り一面を灰塵と化すつもりで放った一撃、渾身の【雷火閃ライカセン】は鉈を融解させ焼き切り聖人ニコラウス・クーネの前面に深く刃を食い込ませた。しかしその刃は食い込んだだけで衣装が少し切れた程度だった。血のようなものは流れていない。


 『ホホホーゥ! これは、コレハ! タノシイ! ダノジイイ!』


 「え? なんだって?」


ーー 難聴ですか? ーー


 「いや、言語的に。っていうかアレが効いてない勢いなんだけど。あんなの倒せねーだろ」


 「もうちょっとがんばってみてよ! 勝ったらご褒美あげるからさ!」


 「ご褒美? それはなんだね?」


 「僕の抱擁とか?」


 「よし、割に合わん、帰ろう」


 「あー! 待ってって!」


 「冗談だ、っていうか帰してくれそうにないし、もし帰れても追いかけてきそうじゃん、あいつ」


 視線の先には聖人ニコラウス・クーネ。聖人という言葉が似つかわしくないその表情は修羅や鬼の類が嗤っているように思える。『ダノジイヒイイ!』などと訳のわからないことを供述しており……などど考えていると先ほどにも増した速度で砲弾を思わせる突進を仕掛けてくる。不可侵の壁を試してみたのだが、不可侵のはずの壁が押されるのだ。それが示すのは、聖人ニコラウス・クーネの“格”が龍神イルルヤンカシュに匹敵するということ。


 「なぁフェリ」


 「どうしたんだい?」


 「事故が起きちゃってもいいのか?」


 「事故? ん〜、まぁ……いいんじゃない?」


 「よし、じゃあ——」


 今からちょうど一ヶ月前、新しいダンジョンからモンスターが襲来した。とはいっても無事に解決して事なきを得たのだが、その時よりも更に威力を高め相手の破滅のみを目的とする光を両の手に作り出した。

 例によって突進してきた聖人ニコラウス・クーネの懐に入り込み、俺は両手を広げその恰幅のいい腹へと突き出した。一瞬剣の形をとった光の奔流はその体を焦がし貫く。


 『ホ、ホーホゥ……』


 『楽しめたかい?』


 『えぇ、それはもう』


 『じゃあ夜までにプレゼントよろしくね!』


 『す、少しくらい休ませて……なんでもありません』


 聖人ニコラウス・クーネの表情は穏やかなものへと戻っており、貫かれた腹に手を当て仰向けに寝転んでいる。満足そうな表情を浮かべたまま光の柱へと姿を変え、光が収まると聖人ニコラウス・クーネは姿を消していた。


 「で、結局終始何言ってるかわかんなかったんだけど?」


 「悠人が勝ったからプレゼントをくれるってさ!」


 「じゃあ俺たちがここに来た理由ってサンタに直接プレゼントを強請りにきたって事なのか?」


 「そうだね! そうだよ!」


 「っていうかチビも参戦してくれてもよかったんじゃね? それに馬、お前だって弾除けくらいにはなるだろ?」


 「それはだめだよ〜。動物愛護に関して意識高い系だから。それにチビはまだしも馬は無理だよ」


 「なんで?」


 「弱すぎて」


 「なるほど」


 落ち込んだ様子で「ひどいんじゃもん」などと馬は言うが、カミノミツカイのくせに弱いのは事実なんだし仕方あるまい。


 ログハウスへと帰った俺たち。時刻はもう昼を回っておりログハウス内は朝とは違って色とりどりに飾り付けられていた。どこから買ってきたのか小さなモミの木もあり、杏奈とリナが飾り付けをしている。悠里と香織はリビングの飾り付けを終え料理中、さくらはマグナカフェへと用事を済ませに行っている。


 「あ、悠人。おかえり」


 「悠人さんおかえりなさい! 飾り付けみんなでしたんですよ! ご飯も期待しててくださいね!」


 「ただいま。期待してるよー」


 さくらが帰ってきた頃には夜の帳が降りていた。そしてテーブルにはたくさんの食事が運ばれ、アルコール類やジュースも選り取り見取り、準備は万端とばかりにクリスマスパーティが始まった。


 そしてクリスマスプレゼントの交換となり……


 「クリスマスプレゼントの交換?」


 「まさか準備してなかったの?」


 「いやぁ……はは。すまん。そういう文化がまったくない育ち方をしたもので……」


 「そう。なら良かったよ」


 「え? 良かった?」


 「実は、みんなでなにか悠人君に贈ろうって話したのよ〜」


 「それで悠里が、クリスマスパーティとかの話は聞いた事がないって言ってたんです」


 「それでですね〜、あたしたちが楽しい思い出をプレゼント! ってことっすよ!」


 「思い出だけじゃなく、悠人サンに本当のプレゼントもありますよ!」


 悠里、香織、杏奈、さくら、リナ。みんなは俺がプレゼントを用意していなかったことを責めるどころかそれでいいと本気で思っているようだった。俺もプレゼントを用意しておけば……あれ? プレゼント?


 「ふふ〜ん。こんなこともあろうかと! 実は僕と悠人ちゃんとチビと、あとさくらの馬からのプレゼントがあります!」


 「え!? マジ!?」


 「なんで悠人ちゃんが一番驚いてるのさ。さっき行ってきたでしょ?」


 「え? ……あ、もしかしてサンタ?」


 「そうそう。まあボクたちが選んだわけじゃないから、何を貰っても文句は言わない事!」



 満足するまで飲み食いをし、遊んだりしながら賑やかに過ごした。それぞれが夢を見始めた頃、ログハウスの各部屋にはサンタクロースがプレゼントを配っていた。

 そして最後にフェリシアの部屋へ。何もない空間に音もなく現れた聖人ニコラウス・クーネは眠るフェリシアへ語りかけ、特別なプレゼントに手紙を添えて部屋を後にした。


 翌朝起きてきたフェリシアは俺を起こしに来た。近頃毎日起きれるようになったフェリシアはさくらが乱入していても香織がついつい俺のベッドで眠ってしまっていても関係ないとばかりに決まった時間に起こしにくる。


 「悠人ちゃん〜? なかなか起きないな〜。とか言って実は起きてるんでしょ!」


 「……ばれたか」


 「ふふ〜ん。あ、プレゼント届いてるよ! あとこれはエアリスに」


 「ん? これは……なんだ?」


 「そのうちわかる、かもね!」


ーー おお……ありがとうございますフェリシア ーー


 「いいっていいって〜」


 「さて……プレゼントはなにかな〜」


 これ見よがしに部屋の中央に置かれた、赤と緑の紙に包まれた箱のリボンを解く。中を覗くとそこには……


 突然部屋の扉が開き、杏奈が駆け込んできた。「ほんとにサンタからプレゼントがきたっす〜!」と、うれしそうにしている。そして俺の箱の中身を見て一言。


 「お兄さん、エロ本頼んだんすか? 必要ならあたしが一肌脱ぎますよ?」


 「ちがうわい。どうみてもこれってカタログだろ」


 「そうっすね。あたしのも同じだったんで、たぶんみんな同じじゃないっすかね?」


 「でも中身が地上のとは違うんだな。それにページを開いても開いても終わらないのに冊子自体はすごく薄いし。なんだこれ、超技術じゃん」


 「でもここから欲しいものを選べってことっすよね」


 「そうだな」


 カタログから欲しいものを選ぶまで一体どれだけの時間が必要なのだろう。来年のクリスマスになっても決まりそうにないなと思いつつ、俺たちは暇さえあればカタログを眺める年末を送る。



物語自体が平坦な話ですが1話からここまで読んでくれた方々ありがとうございます。寒さも一段と厳しくなってきましたが、どうか皆様お身体をお大事にお過ごしください。

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