本当のロミオってなに?
わたしはモブだ。ただの丸と棒で描かれるようなモブだ。主役になれるのは、自分じゃないものを演じる時だけだし。そもそも、人生の始まりは普通でthe平均体重(20××年現在)で生まれ、母と父に大切に育てられた。与えられるべき権利、義務は全て与えられてるし、そつなくって訳ではないけどこなしてる。馬鹿やったこともあるけど、いつだってモブだし上手くいかなかった。テストだって社会とか以外は平均点、赤点なんてとったことはなかったけど。とれなかったら、主人公になれたんだろうか。どうせ運命なんて変わってないだろうけど。
でもそんな私でも、少しくらいは、モブじゃないとこもある。例えば、演劇部のロミジュリの主人公になれたことだ。フラグはたてたつもり。シェイクスピアのおぞましいけど可憐で素敵な世界の主人公に一度でいいからなってみたかったんだ。
放課後の合間の休憩時間
ペットボトルの凹む音と、タオルの擦れる音、上手くいかなくて叫び出す声。いろんな音が聞こえるこの時間がマジックアワーのようにいつもなら輝き出すのだけれど。今日は、あまりにも鋭くて冷たい音が聞こえて。自分の鼓動が引きつっている気がする。
「あいつは、モブじゃない。
あいつはロミオ役じゃないわよ。私に似合わないわ。」
いつの間にか、耳に入ってきた声。それを増幅させる沈黙。私の止まってた音が、時間が、響き始める。そっか。自傷するかのように私は、軽くため息をついて、心の中で謝る。みんなもそう思うよね。モブな私が笑顔でロミオ役なんてやるのがいけなかったんだ。でも、ジュリエット役の子に言われるのはきついなあ。一番好きな役柄の女の子に言われると本当に心から傷つく。誰かが、私の肩を撫でて大丈夫だよと言ってくれてはいるけれど。本当に思ってるかも不安な感じで言われてもって思うのは天邪鬼なのかな。もうしょうがないって割り切れるほど私の愛はお粗末じゃないから。それにみんなのロミオへの信頼が落ちてるような演技なんて誰も見たくないだろうし。
「先生。私柄じゃないんで主役おります。」
先生がそう?と言いながらもスムーズに誰かを呼んで確認をとる。その一連の動作が、私にモブが一番似合うってこと突きつけているようで。驚きと悲しみの連続だった。