表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
97/148

変化



「つまりだな、いくら力があっても、一人で出来る事には限りがあるのだ」


 アルスフォードは、皿に積まれた肉を一切れつまみ飲み込むと、話を始めた。



「我の力は強い。センリは更に強い。けれど、我らが二人いても、世界を変えるには至らない。

皆の為に戦い、沢山の魔物を倒し、英雄の様に扱われても。

認められるのは我らだけで、異界人達が救われる訳じゃなかった」


 時折、自信過剰になるのは相変わらずだが、

しかし話している内容は、昔のアルスフォードの口からは間違えても出てこないだろう。

 

 

 ―――彼女が変わったのは、式利の影響か。


 コハクはそう察した。


 式利の理想を継ぐ事が、アルスフォードにとっての立ち直るきっかけであり、戦う理由であったのだ。


 なんて前向きな理由なのだろうと、コハクは目の前の少女を素直に尊敬した。 



 反乱が終わり、異界人が更に危険視され始め、周りの人間が、勝手な持論で異界人を責める度。


 コハクはそれに唾を吐き、心を捻じ曲げて、そうしてようやく前に進む事が出来た。

 

 そうして、その反動で魔物を狩っているのが、今のコハクだ。

 

 戦って結果を出すしか、認められる方法を見つけられないからである。 


 けれど本当は、戦うだけでは何も変わらないと、コハクは分かっている。



「自分を変える事も難しいが、他人を変える事はもっと難しい。民の異界人に対する敵意は、そう簡単には変えられなかった」

 

 センリは、何か悟った様な寂しげな顔でそう言った。


「式利はさ、本当に器用な奴だったよ。俺達と同じくSランクの任務に出てるのに、他にも色んな事やってたんだぜ?

俺は・・・もう魔物倒す事しか、余裕が無いのにさ」


「・・・それは、移住のせいで戦力が偏った、しわ寄せですよね?」 


「まぁ、そうだな」



 ヴァーリアに住む殆どの異界人が、南の街に強制移住させられたということは、つまり。

 

 その分だけ、他の街の兵力が減ったという事でもある。


 あの反乱を治めた事で、反乱者達がほぼ壊滅した為、

街の警備に兵力を割く必要は無くなり、その分の兵力は余裕が出来たが、

それを考慮しても、異界人兵士の兵力が無くなる事は、軍に大きな影響を与えている。



「前まではさ、危険度Sランク帯の強い魔物を倒す事が任務だった訳だが。

でも今は、AランクとSランク帯の境界を走り周るのが任務になってさ。

単純な任務の危険度は下がったんだが・・・

なんだろうな、前よりもずっと、疲労感というか、疲れが溜まる様になってきたよ」


「・・・つまり、効率重視の作業ゲーやってるって事ですよね?」


「あぁ、それだ。まぁ、ゲームだったらまだ良かったんだけどな。

何キロも走りながら作業ゲーさせられるのは、マジでキツい」

 

 コハクが苦笑いを浮かべながらそう例えると、

 同じ世界出身であるセンリもまた、ふふ、と苦笑いした。

  


「作業ゲー?」


「作業げー? 吐くのか?」


 出身の違うフローラとアルスフォードには、通じない。


 コハクとセンリ、転移する前の世界が同じである二人にのみ通じる例えである。




 その時、急に食堂が騒がしくなる。


 何人かの兵士、それも上級の者達が、慌ただしく食堂に入り込んできたのだ。

 

 そのうちの一人が、コハク達のテーブルに近付く。



「コハク。ここにいたか」


「・・・ん、あぁ、デルバードか」


 それは大柄な男性兵士であった。


 デルバードと呼ばれたその兵士は、コハクと同じ班の、班長である男性だ。



「緊急の任務だ。一秒でも早く、準備をしろ」 

 

「緊急? 半年ぶりに恩人と食事する事よりも緊急な事か?」


「あぁ、そうだ。半年前の反乱が優先度"5"だとすれば、この優先度は"10"だ」


「まてまて、それは分かりやすい様な・・・分かり難い様な言い方だが。

・・・それはあの反乱よりも、緊急だという事か?」


「そうだ。冗談を言っている暇などない」


 

 半年前の反乱は、近年ヴァーリア国で起きた事件の中では、トップクラスに大きな事件であった。


 だが今伝えられた任務は、それよりも緊急の任務である。

  

 

―――何が起きている?


 コハクだけでなく、その場に居るセンリが、アルスフォードが、フローラが、異様な緊張感を感じた。

 

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ