表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
82/148

正義



 元々、コハクはあまり運動が得意ではなかった。


 故に、戦闘はあまり得意ではないが。

 

 使い魔の扱いは得意で、魔法の扱いはとても器用であった。

 

 この事をコハクは、なんとも自分とは噛み合わない才だと、時折悩んでいた。



 英雄の力である「魔創」は、相手に触れる事で発動する力だ。


 故に、前線で戦わなければいけない為、使い魔を操る暇は与えられないのである。


 けれど今この状況においては。

 

 コハクは使い魔の扱いが得意で良かったと感じている。   



 ユークリウッドとの戦闘を行う直前。


 コハクは数匹の使い魔に、雪妃の後を追う様に指令を出していたのだ。


 簡単な命令であれば、使い魔は自動で行ってくれる。


 お陰で、コハクは雪妃の現在位置を簡単に発見出来た。

  


「・・・これは、カノールの店?」


 自動で雪妃を追いかけていた使い魔達は、カノールの店の周囲で動きを止めている。


 使い魔の反応を探知出来るという事は、使い魔に気付かれ、破壊された訳でもないだろう。

 

 コハクは魔法で強化された脚を動かし、目的地へと走る。



(あんな激しい戦闘の後なのに、いつもより身体が軽い)

 

 魔法で強化したとはいえ、

その走る速さに、コハクは自分でも驚いた


(・・・これが、魔創の力なのか)


 ユークリウッドの持っていた魔力の量は相当で、並の魔術士の非ではない。


 コハクはその魔力を<インヴェイジョン>で喰らい尽くした。


 その為、コハクの身体にある魔力は、自身が想像出来ない程強くなっていた。



 コハクは地面を蹴り、跳躍する。


 強化された身体は、重力や風を操作する事をせずとも、

2階程度の建物であれば、簡単に飛び上がる事が出来た。


 

 上に上がると、目的地であるカノールの店が見える。


「・・・っ!? どういう事だ?」


 そこでコハクが見たのは、

 店に空いている穴、割れたガラス、そして、炎であった。





*** 





「みんな勇敢だねぇ。と言いたい所だけど」


 床に倒れる雪妃の肩に、カグリが剣を突き刺す。



「ぐぎゃあああああああああああ!!!」


「何故、命を張って私に剣を向ける? あんたが仲間である反乱者達の居場所を言えば言いだけなのに。

何、キミたちには自殺願望でもあるの?」



 床には、血まみれで倒れているカノールと煉の姿がある。


 身体には無数の傷が付いており、既に息はしていない。 


 カノールと煉の二人は、カグリへ歯向かい、そして殺されたのだ。



 カグリは雪妃の肩に刺している剣を動かし、傷口を抉る。


「うあああ!!! うぎゃあああ!!! ぐっ!!!」


「さて、嬉しい事に、もう一回チャンスがある」


 カグリは、兵士に拘束されている店員の少女を視る。


 次は、あの少女を殺すつもりなのだ。

 

「今度はちゃんと話してくれるかな?」



 

 その時、店の入り口が乱暴に開く。


「・・・!」


 現れたのはコハクである。


「なんだい、兵士かい。びっくりさせないでよ、危うく燃やしちゃうとこだったじゃん。

そんで、アンタ何処の班の・・・?」


 カグリは軽い口調でコハクに問いかけるが、コハクの耳には届いていない。


「な、なんだ・・・これ。

なんで、みんな・・・死んでる?」 

 

 床には、カノールに、煉、店員の少女の死体が転がっている。


 もう一人の店員の少女は、兵士に拘束されており。


 そして、カグリに肩を刺されている雪妃の姿がある。



「な・・・なんだ、ここ?」


 段々と、コハクの頭がその情報を理解していく。


 カノール達が殺されていて、雪妃が剣で刺されていると。




「あれ、お前見た事あるな・・・あぁ、Bランクにいるっていう"英雄の力”を持ってるとかいう奴か。

さては、お前・・・」


 コハクの様子を悟ったのか、カグリが笑う。


 カグリは相変わらずのふざけた態度だが、思考は冷静である。 


 コハクの表情を見て、ここの店との関係を悟ったのだ。



「何をしたんだ、あんたらは」


 コハクは盾を強く握り、右腕に魔力を込め、カグリを睨み付けながら、近付いていく。


「おやおや、やる気かぁ? 兵士が兵士の業務を妨害するなんて、大問題だぞ?」



「あんたらはッ!!!」


 だが、横にいた見張りの兵士が、魔法を放った。


「ッ・・・!!!」


 コハクの盾が、魔法の弾丸を弾き返す。



「Bランクの英雄ちゃんがぁ、まさか軍を裏切るとはねぇ?

 命知らずだな。てことで、ミナツくん。その裏切り者のBランクを始末して?」


「了解しました」


 カグリの命令を受け、ミナツという兵士が剣を抜き、コハクへ迫る。



「君は、君たちはここで何をしていたんだ?」


 コハクは、近づいてくる兵士の少年へ問う。



「任務ですよ。反乱者と、その味方の異界人の始末だ」


「なんで。カノールさんは、センリさんの知り合いで、ちゃんとこの店も国から認められて、生活していたのに」


「じゃあ、何故そいつらは反乱者の味方をしたんですか?」


「カノールさんは、行き場の無くした子供を助けただけだ。何かおかしい事でもあるか?」

 

「・・・俺は今日、はっきりわかりました」   



 ふぅ、と息を吐いて、ミナツという少年は脚を止める。


「例え、反乱者ではない異界人だとしても。

結局は、反乱者と同じ考えを持っているのだと。

カグリさんの言うとおり、異界人はそのまま放って置くには危険な存在だ」


「そんな事はない。それは君たちが煽ったから招いた結果じゃないのか?」


「そうか。兵士であるお前さえも、所詮は異界人なのか。だったらもう、容赦する必要はないな!!!」



 ミナツが剣を振るう。


 言葉の通り、その剣に容赦は無かった。



「俺は、自分の大切な人が、異界人共に奪われる事が許せない!!!」


 ミナツが剣を振るう。


 ミナツの剣とコハクの盾が衝突し、激しい金属音が鳴る。


「俺は、皆が、そして愛する人が、傷つけられる事なく安心して暮らせる為に、戦っている!!!」


 ミナツは、自身の意思を叩きつけるかのように、力の込めた一振りを振り下ろす。

  


「・・・そうか」


 コハクは、そのミナツが振るう剣へ向かって、勢いよく盾を叩きつけた。

   

「・・・ッ!!!」


 ミナツの振るう剣が、コハクの盾に大きく弾き返される。


 コハクは続けて盾を振るい、ミナツの手を叩きつける。



「ぐあっ!?」


 盾を叩きつけられた衝撃と痛みで、ミナツの腕から剣が離れ、床に落ちる。



 ミナツは落ちた剣を拾おうとするが、コハクはその剣を遠くへ蹴飛ばした。



「じゃあ、逆に聞きたいんだけど」

 

 コハクが拳を強く握ると、

魔創で蓄えられた魔力が拳に注ぎ込み、力が溢れるのを感じた。



「今この場で大切な人を傷つけられているのは、誰だと思う?」


 そして、コハクは拳を振るう。


 ミナツは両手で顔を覆ったが、コハクの振るう拳は、その両腕のガードを押し退ける程に強力だった。


「がっ・・・!?」


 ガードの空いた顔面へ向け、コハクはもう一度拳を叩き付ける。


 コハクの振るう拳が、ミナツの顔を捕える。


「うぐっはッ!?」


 ミナツの歯がへし折れ、床に倒れ込む。



「おやおや、あの力・・・Bランクだと思っていたが」

 

 一方的な展開に、傍観していたカグリが、ぼそりと呟いた。

 


「ぐ、くそ・・・!」 


 ミナツは鼻も折れているらしく、血を噴き出していた。


 それでも、床に手を付き、立ち上がろうとする。

 

 コハクは、そのミナツの首を掴み上げた。


「ぐあっ・・・!?」


 そして、ギリギリと、ミナツの首を締め上げる。



「大切な人を、傷つけたのはどっちだ?」


 コハクの腕に強化の魔法が流れ込む。



「お前らの方だろうが」


「あ"ッ・・・!?」


 そして、コハクはミナツの身体を持ち上げ、腕を振るう。


 それはコハクの華奢な腕からは、想像出来ない力であった。


 凄まじい速度でミナツの身体が投げ飛ばされ、壁を突き破って、外に転がり落ちた。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ