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アリア


「ユーくん」


 少女の声。


「ねぇ、ユーくん」


 その声で、コハクは目を覚ました。


 空も天井もなく、そこはただ白い。


「おはよう、ユーくん」


 コハクは顔を上げると、そこには薄い金髪の少女がいた。


 コハクには、彼女に見覚えが全く無かったが、しかし。


 何故か、コハクは少女の名前を知っていた。



「・・・アリア」


 コハクには、この場所がどこなのかもさっぱりわからないし、彼女が何者で、自分とどういう関係なのかもわからない。


 けれど、アリアは自分にとってとても大切な存在であると、

自分の唯一の生きる意味と言っても良い程だと、そう感じた。



 しかしどうしてか、アリアを見ると、嬉しさよりも恐怖を感じた。


 恐怖と言うよりも、それは飢えに近い。


 彼女自身を恐れているのではない。


 彼女を失ってしまう事を恐れているのだ。

 


 ふと、コハクは左腕に違和感を感じた。


 見ると、左腕は黒く、人間の物とは思えない形であり、

獣の牙のような爪が5本に、腕の周りには、軟体動物の様な触手が纏わりつく形で生えていた。


 目にするだけで恐怖を感じる姿だが、しかしコハクは何も感じず、それが当たり前に自分の腕なのだとすら感じた。



「ユーくん」


 少女がコハクを呼ぶ。


「私は、大丈夫だから」


 

 次第に、周囲の風景に変化が起きる。


 何も無かった空間から、次第に景色が生まれていく。



 そこは灰色の金属質な壁に囲まれていた。


 そして、少女の首や手足には鎖が繋がれている。


 その鎖はコハクの手足にも付けられていたが、しかしコハクのは、全て千切れている。



 小さなガラス窓の外に、数人の人間の姿が見えた。


 彼らは黒いローブに身を包み、魔術師の格好とよく似ていた。


 ここで何が起きているのか、コハクにはさっぱりわからない。


 ・・・そのはずなのに。


 何故か、何をしようとしているのか理解してしまう。



「ね、もう終わらせよう。もうこれ以上、苦しむ必要ないよ」


 アリアの細くて綺麗な指が、コハクの黒く異形の左腕に触れる。



「私はユーくんの一部になる。そういう運命だった。きっとその為に生まれてきた。

ずっと、ユーくんと一緒になる。私は、そういう風に出来ていた」


 コハクの意思とは関係なく、左腕の触手がアリアの腕に絡みつく。

 

 身体が、目の前の少女を欲している。



「私は許すから。ユーくんは生きて」


「・・・分かった。あぁ、分かった」


 アリアの細い腕がコハクの背中に回される。


 コハクは、その瞬間まで心が葛藤しているのを感じた。


 

 だが、左腕の触手は少女の身体を締め付け、爪の生えた手は、飢えた獣の口の様に大きく開く。


 もう、この腕に意思は伝わらない。


 鋭い爪は獣の様に、アリアの胴体に食らいつく。


「あ、あぁぁ・・・ぁ・・・」


 目の前で、自分の愛した少女が、血まみれになっていく。


 自分の腕が、少女の肉を削いでいく。


 

「あぁぁぁぁあぁぁあxxxがgxggggっzzggggxgzgzxxx!!!!!!!!」


 身体に液体の様なものが流れ込んでくる感覚。

 

 身体に力が染み渡ると同時に、それは全て後悔と、悲しみと、理不尽さに代わり。


 それは、力へと変化する。


 

 肩から黒い霧が吹き出し、それが形を造り、一本の、禍々しい腕が創造された。


 



「ああアァァァxxx!!!」



 分厚い扉が、空き缶の様に吹き飛ぶ。


 異変に気が付いた外の人間達が、慌ただしくなる。



 コハクは、身体が力に支配されるのを感じた。


 その力を抑えられず、床を蹴って駆け出す。


「ハハxxァァァxxxガァxxx!!!」



 目の前に出てきた物体は、全て引き裂く。


 テイザーガンや、束縛用の特殊武器が飛んでくるが、それらは全てコハクの身体をすり抜けていった。


 

 研究員達が、金庫の様に分厚い扉を閉めようとするが。


 その隙間に手を突っ込み、身体を霧状にして通り込む。


「ひぃぃぃ!!! ぎゃあああ!!!」


 人間の悲鳴が響くが、数秒後には何も聞こえなくなった。


 


 ***




 電源関係がショートし、パチパチと音を立てる。

 

 研究室には、通路は、無機質なガラクタと、有機的な赤い血肉が散乱していた。

  

 

「は、はは・・・」


 その研究室の物陰から、恐る恐ると人影が覗いていた。


「あぁ、あれが・・・"救世主"なのか・・・!」   

 

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