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「・・・コハク。私を止めに来たの?」


 向かい合うコハクと雪妃。


「もう一度、考えて欲しいと思ってね」



「・・・もしかして、ずっと私の事を探し回ってたの? 参ったなぁ、コハクってば完全にストーカーじゃん」


 雪妃はいつも通りを装う様に、冗談を言って笑った。 


「そう思われる事くらいは覚悟してるよ」



 建物の周りには、コハクの操る羽虫型の使い魔が留まっている。 


 コハクは、いつ起きるか判らない反乱の為に、時間があれば街に使い魔を待機させていた。


 反乱が起きた時、直ぐに状況を確認し、軍よりも早く雪妃の居場所を把握する為だ。

   

 雪妃達の隠れ家がカグリに襲撃されたと知ったコハクと式利は、すぐに雪妃の生死を調べ、そしてこの西の街に隠れているだろう所までは割り出していたのだ。   




「妙な羽虫が飛んでいると思ったら、面白い兵士が付いてきたもんだな」


 カミノがぼそりと呟く。


 カミノは二人を見ても、魔法で反撃する事なく、興味ありげな表情で二人を眺めた。



「カミノさん、この提案は、貴女にもしているのですよ」


 続けて、式利が口を開く。


「あなた方が救世主と呼んでいる霧の異界人も、無敵ではありません。魔物を所持しているのは予想外でしたが、その程度で軍は倒せませんよ」


 そう言う式利の手は、常に剣の柄に触れており、カミノが妙な事をしないようにと警戒している。


「軍は容赦なくあなた方を殺すでしょう。ですが、今ここで降伏し、この反乱を中止すれば、命は助けてあげますが」


「・・・ふむ」


 カミノは特に返事を返すことなく、面白い奴らだといわんばかりに、くすりと笑ってる。



「この街にも、もう直ぐ軍が到着する。僕らとは違って、反乱者は問答無用で殺す様な兵士達が。その前に、決めてほしい」


「・・・本気で、私を助けようとしてるの?」

 

「もちろん、当たり前だよ」


 コハクは一歩ずつ、雪妃に近づく。



「止まって」


 だが、雪妃はコハクへ向け拳銃型の魔術器を向ける。



「私は、コハクが思っている様な人間じゃない。だって私は、人を殺した事があるから」


 雪妃は、一言一言かみ締めるように、コハクへ向けそう言い放つ。


「事故とかじゃなくて、間違いなく私の手で兵士を殺した事がある。私は、最初からこっち側の人間よ」


 雪妃は未だ銃口をコハクへ向けたままだが、その表情に敵意は無かった。

   


  

「あー。あのさ、兵士のお二人さん?」


 今まで口を閉ざしていたカミノが、話に割って入った。



「そんなにその子が大事なら、こちら側に付いたら? 反乱者になったらどうだい?」


 そしてカミノは、コハクと式利の向け、そんな提案をし出した。  

   

「兵士相手に仲間の勧誘をするとは。受け入れると思うのですか?」


 淡々とした調子で、式利が返事を返す。 



「私も元ヴァーリア軍の魔術師だ。キミ達だって、いつまでも軍の言いなりになる事はない」


「貴女は、違反行為をして軍をクビになった魔術師でしょう」


「キミだって異界人だろう? この国はおかしいと思わないか?」



「どの世界に行こうと、まともな場所なんてありませんよ」


 カミノの問に、式利ははっきりとした口調でそう返す。


「どんな世界に行こうと、何処かは狂ってるものなんです。そんな中でも、上手く生きていくしかないんですよ」



「そうか。では仕方が無いな」


「・・・っ!」


 妙な気配を察した式利が後ろを振り向く。


 そこには、黒い不気味なローブに身を包んだ、救世主・霧の異界人こと、ユークリウッドが立っていた。



「交渉失敗ですね」


「しょうがないです。雪妃さんの決めた事だし」


 剣を抜くコハクと式利。

 

「コハクさん、まさか彼女を見捨てる訳じゃないですよね?」

   

「そんな事、出来る訳ないじゃないですか」


 コハクは腕に付けている籠手形の魔術器に触れ、それを起動する。



「軍が雪妃さん達を見つける前に、反乱を終わらせる」


 コハクの腕、脚、腰、胴体に、魔法で収納されていた鎧が展開されていく。 



「そうですね。さっさと霧の異界人を倒して、雪妃さんを助けに行きましょうか」

 

「はい・・・!」


 スマートな魔法の鎧を纏ったコハクと、剣を構えた式利が、ユークリウッドと対峙する。


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