表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
46/148

対の終着


 

 南第4地区にある、ヴァーリア軍の基地にて。


「ぐぅっ・・・」


 ユークリウッド裂かれた肩に手を当てて止血しながら、治療用の魔術器で傷を癒すコハク。


 援護に駆け付けた兵士達の御陰で、なんとか無事に逃げる事が出来た二人は、基地の一室で傷の治療をしていた。



「ちっ、やられました。骨が折れてるかもしれません」


 式利も胸を抑えながら、コハクと同じ様に傷を癒す。


「ごめんなさい。僕がセンリさんみたいに強くないから」 


 弱々しい声でコハクが言う。



「そんな事を謝罪するのは止めてください。センリ様はヴァーリアでもトップクラスの剣士ですよ? いくらコハクさんが英雄の力を持つとして、そんな高いハードルを求めたりしていません」


「そ、そうですよね」


「そうです。・・・ところで」


 ひと呼吸程の間を空けて、式利が口を開く。



「あれは、雪妃さんでしたよね?」


 その名前を聞いて、コハクははっと目を開いた。


「はい。あれは雪妃さんでした。まさか雪妃さんが、反乱者だったなんて」 



 裏路地で、反乱者の少年を助けたのは、間違いなく雪妃であった。


 初めは知らなかったとはいえ、コハクは雪妃に魔法を撃ったという事になる。


 その一撃で彼女との距離が一気に引き裂かれてしまった様な、コハクはそんな喪失感を感じていた。 


 合わせる顔が無いとはこんな気持ちなのかと、コハクはそう感じた。



「私も、雪妃さんが反乱者だったなんて、初めて知りました。けど良く考えれば、不思議だとは思わないです」


「そう、なのですか?」


「はい。あまり他言する事ではないですが。彼女は昔、奴隷としれ売られかけたんです。

裏で奴隷商売をしている者達に捕えられ、連れて行かれそうになっているところを、私が助けたんです」


「そう・・・だったのですか」

 

 コハクは、雪妃が小学生くらいの頃に、この世界へと転移してきたと言っていたのを思い出した。


 彼女は「今までよく無事に生きて来れた」と自分で言っていたが、それはきっと、想像するよりもずっと過酷な生活だったのだろうと、コハクはそう思った。

 


「ところで、コハクさん」


 改めて、式利はまたコハクへ話を振る。


「ひとつ、相談なのですが・・・」




***




「逃したか」


 とある建物の一室で、ユークリウッドが呟く。


 彼の特徴的な異形の右腕には、血が滴っている。

 

 それは彼の血ではなく、交戦した兵士達のものだ。


 しかし彼が死体を引きずっていないという事は、兵士を狩り損ねたのだろう。



「困ったな。これじゃあ今日は飯抜きになってしまう」


 ふぅと息を吐くユークリウッドの元へ、一人の反乱者の青年が駆け寄る。

 


「ここに居ましたか、救世主様。街の警備をしていた兵士達が、撤退していきますが・・・」


「ええ、知ってますよ」


 そう返事を返し、ユークリウッドは青年へと近付く。


 そして。



「えっ?」


 青年の腹部に、黒い刃が突き刺さる。


「なん、で・・・!?」


 そして次の瞬間には、青年の上半身は半分に両断されていた。


「やっぱり、彼らの仲間になっていて良かった」


 床に倒れる青年を見下ろしながら、ユークリウッドはまるでお菓子を与えられた子供の用に、くすりと微笑んだ。 



「さぁ、アリア。頂こうか」


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ