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昼時 01


 ヴァーリア国・東門付近のとある街。


 街角の売店で、ローブを羽織った青年が、置かれてた新聞を手に取りその記事に目を通す。


 記事には「ヴァーリアの街中で、一般人が殺害される。犯人は異界人か」と書かれていた。



「よう、お姉さ・・・いや、お兄さんか」


 レジのカウンターから顔を覗かせた年齢40代程の男性が、青年に話しかける。


 店員の男性は青年が女性だと思った様だが、無理もない。


 消えそうな光の様に、淡い色の金髪をした綺麗な顔立ちは、ぱっと見ただけでは性別を判断出来ないだろう。


 

「最近は、なんだか物騒だな。お兄さんも気をつけろよ」


「・・・ええ、そうですね。こちらの新聞、頂きます」


 青年はそう答えながら、財布を取り出す。


 青年の左腕は包帯が巻かれている為、青年は右手だけで器用に財布から硬貨を取り出し、レジの男性に差し出した。



「なんでも、噂じゃ昨日もどっかで殺人事件があったらしいじゃないか」


「そうなのですか。怖いですね。早く解決すれば良いのですが」


 青年は男性へ新聞と金銭を渡しながらそう言う。


「ああ。それじゃ、気を付けてな」



 青年は「はい」と返事を返し、店を出る。


 その様子を、店内にいた一人の女性客がじっと見ていた。




***




 青年が店を出て、裏路地を歩いていた時。



「きゃっ!」


「おっと」


 角から飛び出してきた若い女性が、青年へ縺れる様にぶつかる。


 青年に抱きとめられた女性は「ご、ごめんなさい。急いでまして!」と言い、焦った様子で青年から離れる。


「いえいえ、こちらこそ。怪我はありませんか?」


「はい、大丈夫みたいです。本当にすいませんでした!」


 女性は青年へ一礼して、駆け足で裏路地を去っていく。


 青年は、去っていく女性の後姿を見ながら、包帯の巻かれた左腕を撫でた。




*** 

 



「・・・ふふ、ふふふ」


 裏路地を出た若い女性は、そのまま反対側にある別の路地へと入ると、誰も追ってきていない事を確認して懐から財布を取り出す。


 その財布は、青年が持っていた物であった。



「なにこれ、すっごい大金じゃん」


 どうやら、彼女はわざと青年にぶつかりその際にスリを行っていたらしい。


 手に入れた大金を見て、思わず笑みを浮かべる女性。 



 その時、裏路地を進む彼女の前方に、人影が現れる。



「あ、さっきの・・・」


 裏路地に入ってきたのは、先程の青年であった。


「えっと、どうしました? あ、もしかしてさっきぶつかったときに何か物を壊してしまったでしょうか?

それなら弁償しましょうか?」


 女性は取り乱す事なく、自然な様子で財布を懐に隠した。



「いいえ、違います。実はある物を探してまして」

  

「なるほど、探し物ですか? それでしたら、あっちの方向に落とし物を預かっている場所がありまして。よかったら一緒についていきましょうか?」 

 

 あくまでも財布の事は知らないと、白を切って話す女性。



「大丈夫ですよ、その必要はありません」


 青年が微笑む。


 場所が場所であれば、恋に落ちていたかもしれないであろう綺麗な笑顔である。



 だが、女性が感じた胸の高鳴りはそんな恋愛ドラマの様なものではない。



 まるで死神に微笑まれた様な、冷たい感触。



「探し物は、もう見つかりましたので」


 青年がそう呟いた瞬間。



「んがっ!?」

 

 青年が女性の首を掴む。 


 そして、女性の腹部を黒い刃が貫いた。


 女性の腹部から赤い液体が流れ出す。


 そして黒い刃が引き抜かれると、女性の体は力なく地面へ倒れこんだ。  


「うっ、ぐぇっ・・・」 


 女性はまだ息がある様子だが、最早声を上げる事も出来ない。


 青年は女性へ近付くと、懐を探り財布を取り出す。 



「貴女みたいな人は、自分から人目の付かない所へ行ってくれるので助かります」


 そう言いながら、青年は左腕の包帯を解いていく。



「それじゃあ"探し物"を頂きますよ」


 青年の言う探し物とは、財布の事ではない。


 彼は、食べる物を探していたのだ。



 包帯を解いた青年の左腕は、人の物とは思えない、異形の形をしていた。 

  

 肌色は真っ黒で、指の代わりに牙の様な鋭い爪が生え、軟体動物の様な触手が無数に巻き付いている。


 

「ぁ、ぁ・・・っ!!!」


 女性は目の前の"化け物"から逃れようと、生きようと必死に力を振り絞って、手足を動かし身体を引きずる。


 しかし、女性にはとても逃げ切れる力など残っていない。



 異形の腕が、飢えた獣の様に牙を開き女性に襲いかかった。

 


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