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深が覗く 03


 コハクとハルは、ふらつきながら森を進んでいた。


 最早、二人に走る気力は残っていない。


 途中で魔物に出くわしたりしたが、弱い魔物ばかりだったのは不幸中の幸いだろう。



「・・・みんな、死んじゃった。なんで、なんでこんなことになったの」


 死んだ魚の様な目で、ハルは呟く。



 ・・・みんな、死んでしまった。


 コハクの脳裏に、目の前で野乃花が魔物に喰われる瞬間が浮かぶ。 


「やっぱり、あの時に戻るべきだった。洞窟が危険だと感じた時点で、引き返すべきだったんだ。そしたら、きっとみんな死なずに済んだんだ」


 コハクは、あの時自分が一言言えなかったことを悔やんだ。

 もしかしたら、その一言で結果は少しでも変わっていたのではないかと考えてしまうのだ。


 

「何言ってるの? 私のせいだって言うの?」


 ハルが脚を止める。

 

「・・・あ、別に、そういう意味で言ったんじゃないんだけど」

 

「ふざけないでよ!!!」


 そして、ハルはコハクに掴みかかった。



「あんたがミスしたからでしょ。もっと早く希少種を仕留めていれば魔物が洞窟まで逃げる事はなかったのに。あんたや野乃花が折角のチャンスを掴めないからこうなった!」


「・・・ハル、何言ってるのさ」


「なのに、私のせいにするつもり!? 異界人のくせに、男のくせに、英雄の力なんて持ってるくせに、何もできなかったのはあんたでしょ!? 私が折角パーティに誘ってやったのに!!! なんでこうなるのよ・・・!!!」


 ハルが泣きながら叫ぶ。

 だがコハクは彼女に同情は出来なかった。 



「ミスしたとかどうとか・・・ハルの言ってる事、訳わからないよ。僕らはみんな全力だった。手を抜いてなんて居なかったじゃないか」

 

「そう、じゃあもういい。言っても分からないなら、もういいわ」


 ハルはコハクから手を離して涙を拭った。


「何が英雄の力よ。馬鹿みたい。なんも使えないじゃない」


 ハルはそう吐き捨てると、コハクに背を向けて先を進み始める。



「・・・何だよ。自分だって、何も出来てないくせに」


 コハクはぽつりと呟いた。


 ハルだってただ命令するだけで、希少種に致命傷は一切与えていないくせに、なんでそんな事が言えるのだろうかと。

 そう怒りを感じながら、コハクは重い足を動かして林を進んだ。 

  

  

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