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初めての班 01


 ヴァーリア国外・Bランク帯地域、深部。



 コハクの操る羽虫型の使い魔が、林の中を飛翔する。


 僅かに光を放つ使い魔の後を、黒い影が追いかける。

 6本の脚を持つ、狼の様な姿の魔物である。


 兵士達の間では、その見た目のまま"魔狼"と呼ばれている。



「一匹、釣れた!」


 コハクが合図を出す。


「俺も見えたぞ。魔物は野乃花の方に向かっている!」


 マジックデバイスを通じて、班員の一人でありそして班長である、煉という青年の声が響く。



「ひぃ、わ、私の方ですか!?」


 同じく班員である少女・野乃花は、怯えながら慣れない様子で盾を構える。


 魔狼は使い魔を追い林を駆け抜け、そして鋭い爪を生やした前脚を掲げて使い魔へ飛び掛かる。


 その瞬間、使い魔が爆発を起こし、爆風が魔物を炙る。

 魔狼は呻き声を上げながらバランスを崩し、野乃花の近くへと転がり落ちた。



「野乃花! 魔物を!!!」


「は、はい!」


 野乃花は剣と盾を構え、地面でもがく魔狼へ接近する。

 だが魔狼は態勢を整えると、野乃花が剣を振り下ろすより先に、前脚を掲げて野乃花へ襲いかかる。



 見た目こそ普通の狼に見えるが、しかしこの魔狼は後ろ4本の脚で立ち上がって、そのまま襲い掛かるという攻撃法を取る事がある。


 そうなると、身体のサイズが大きく見えるだけなく姿形も異様に見え、戦い慣れていない兵士にはより恐ろしい魔物に映る。

 


「ひっ、ひぃぃ!?」


 驚いた野乃花の手から剣が滑り落ちるが、野乃花は盾で、必死に魔狼の攻撃を受け止める。

 魔狼は鋭い牙の生えた顎で、盾に喰らい付いている。



「オイ、このクソ魔物がッ!!!」


 野乃花が盾で受け止めている魔狼を、班員の一人・カイが剣で切り裂く。


 背中を切り裂かれた魔狼が口から盾を離し、吠えて威嚇する。

 そして魔狼は身体を上げ、再び野乃花へ攻撃を仕掛ける。


「ひゃああ!? こ、こんのぉ!!!」


 野乃花が魔狼の頭部へ盾を叩きつける。


 振るわれた盾は、野乃花の弱弱しい様子からは想像できない威力で叩きつけられ、

 魔狼の身体が、軽く4,5メートルは吹き飛んだ。



「よし、トドメはいただくぜ」


 地面に倒れる魔狼へ、カイが剣を突き刺して止めを刺す。


「はぁ、良かったぁ・・・」


 はぁー、と大きく息を吐きだす野乃花。



「皆、まだ油断するな」


 煉が皆に呼びかける。


「魔狼は最低でも3体でグループを作る習性がある。まだ2体は近くにいるはずだ」



 その瞬、近くで小さな爆発が起こる。


「っ!? 使い魔が・・・!?」


 爆発は、コハクの操っている使い魔の一体が攻撃を受け、自爆して起きたものだ。

 

「ちょっと、自分の使い魔でしょ! ちゃんと見ててよ!」


 そう言いながら、ハルが腕に魔力を込めていつでも魔法を撃てる準備をする。



「そうしたいんだけど、一度に見れるのは一体だけなんだよ!」


 コハクは直ぐに使い魔を生成し、爆発が起きた方へと飛ばす。  



「待って、見付けたっ!」


 ハルが魔法を放つ。

 放たれた魔法が地面に着弾し、爆発を起こす。


 その衝撃で、近くの草陰に潜んでいた魔狼が飛び出す。


 飛び足した魔狼は煉へ向かい突進していくが、煉はすぐさまそれに反応する。

  

 そして、襲い来る魔狼を一撃で両断した。



「すごい・・・これがAランク兵士なのですね・・・」


 班で唯一のAランクである煉の戦いに、野乃花は呆然と見とれていた。 



「野乃花さん、気を付けて。まだ魔物が近くに居るはず」


 コハクがそう言った瞬間、草木を裂いて魔狼が現れる。


「いたっ! こっちだ!!!」


 魔狼は草陰を利用し、身体を隠しながらコハクへ接近する。

 コハクは魔狼へ向け魔法の弾丸を放つが、草木が邪魔をして中々命中しない。 

 コハクは舌打ちし、剣を抜く。


「くそ、場所が悪い! 野乃花さん、剣をっ!!!」

 

 鋭い爪の生えた前脚を上げ、魔狼がコハクへ襲い掛かる。

 が、魔狼が通過する地面の下には、コハクが1体の使い魔を待機している。


 魔狼がコハクへ向かい飛びかかった瞬間、使い魔が爆発し、飛びかかってきた魔狼の身体が、空中でもう一度跳ねる。


 そして、地面へ落下した魔狼へコハクは剣を振るい、魔狼の前脚を切断する。

   

 切断された魔狼の前脚から黒い霧が漏れ、それは<インベイジョン>によってコハクの腕へ吸い込まれていく。


 コハクは魔狼へ止めを刺そうと剣を握り直す。


 だが、魔狼は急に起き上がり、鋭い牙の生えた顎を開く。



「ぐっ!?」


 魔狼はコハクの剣に噛みつき、そのまま力任せに迫り、コハクを近くの大木まで追い詰める。

 

「くそっ、このっ・・・!!!」


 コハクは片手で魔狼の首を掴むと、インヴェイションで魔狼の魔力を奪い始めた。


 徐々に魔狼の力が弱まっていく。

 


「こ、コハクさん!? 今助けます!」


 野乃花が慣れない動きで剣を振り、魔狼を切り裂く。


 コハクは、野乃花の攻撃により怯んだ魔狼を地面に押し倒す。


 そして魔狼に食らいつかれている剣をそのまま強く押し付け、魔狼の頭部を切り落とした。



「はぁ、はぁ、やった・・・」

   

「コハクさん、大丈夫ですか!?」


 野乃花は慌ててコハクに近寄る。


「はぁ、危なかったけどなんとか。助かったよ」


 コハクは息を整えながら、野乃花の手を借りて立ち上がる。



「魔物は今ので最後か?」 


 やがて、カイと煉、ハルが集合する。 


「さぁな、それは分からん。まだいるかもしれん。注意して進むぞ」


 班長の煉を先頭に、コハク達は林の中を進み始めた。   



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