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番いの楽園

片割れの空

作者: 破竹

「隊長!わざわざ自分のような新人の巡回に随行して頂き、感激であります!!」


「堅くなるな。いつも通りでいい」


「はい!恐縮です!!」


「……少し堅いな」


「は…?」


「なんでもない。それより、今日はどうだ?何か気になる点はないか?」


「特に問題は見受けられません!いつもの平和な街であります!」


「そうか…?もう一度よーく見てみろ」


「は…はい!えーっと、ん…んんー…すみません。私ではいつもと変わらぬ街にしか…申し訳ございません!!」


「ふむ…それでは少し質問の仕方を変えようか。街の雰囲気はいつもと一緒か?」


「え…?あっ…そう言われれば、あの区間。何か楽しげというか嬉しげな住人が多いですね。ちょっとしたお祭り騒ぎのような…」


「あそこの区間で店を出してる主人の嫁が、妊娠したらしい。それでみんなで祝いの準備でもしてるんだろうな」


「はー…そうなのですか…それは確かにめでたい事ですね。…はっ!いや、隊長!我々の仕事は街の治安を守る事です!市民が喜んでいる姿を見つけるよりも、犯罪、その兆しを探し出し、市民に喜んで貰う事が責務なのではないでしょうか!?」


「はー…今年の新人は…いや…柔軟すぎるよりはマシだな。うん、マシだ」


「隊長…?」


「犯罪を探し出す。それは確かに大事だがな、そんなものはそうそう起きない。なるだけ起こしちゃいけない。だから俺たちがいる。それはわかるな?」


「はい!」


「犯罪は誰かが起こす。確信的であれ衝動的であれ、誰かが起こさないと犯罪は起きない。だからこそ住人を見ろ。良い事も悪い事もどんな小さな変化も見逃すな。」


「なるほど…」


「そういえば、お前は鳶のバードマンだろう。だったら目も良いし、力を使わず風に乗れるな。そうやってゆっくり飛びながら街を、住人を見てやれ。」


「は…了解…です」


「どうした急に?何か気に障ったか?」


「いえ…自分が鳶なのをご存知だったので…少し驚きました」


「まぁ、俺も似たようなもんだしな。そりゃわかるさ」


「似たようななど!そんな事はありません!隊長は鷲です!自分などと一緒ではありません!」


「…やれやれ。さっきも言ったがなお前は目がいい。そして風を掴み、羽ばたかずとも長く空に滞空出来る。加えて確か鳶は…止まっているものを狙うのが得意だったか?」


「それはまぁ…」


「他人の出来る事を羨むよりはな、自分が出来る事を誇れ。俺とお前に種としての優劣なんざないさ。ただ違うだけだ。俺は身が重いからお前より長くは滞空出来ない。俺は動いてるものを狙うのは得意だが、止まってるとからきしだ。ほら、大した事ないだろ」


「隊長…」


「ま、隊長らしい事はここまでだな。俺はちょっと下の連中の祝いに混ざってくるわ。お前は適当に切り上げて帰っていいぞ」


「え!あ、ちょっと!隊長!!」


「心配すんなー。ちょっと羽根を伸ばしてくるだけだー」

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