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第14話 軍師、服を奪われる

 元気になった魔王は、ひたすら『ブサイク大好きサイコちゃん』を造り続けていた。

 そのうち魔王城にいる不細工な魔物は全滅したので魔王は反省した。


 あと、姿を見ればストレスがたまるスィの姿がそこかしこに見られるようになって気が休まらなかった。

 純度百パーセントの自業自得だけど。


「こんにちは。暇なので挨拶に来ました」

「……あんたは、本物?」

「この気高さと美しさ、そしてキュートな可愛さは偽物には出せないですね」


「そんな頭の悪いことを言うのは、本物みたいね」


 ほっとする魔王。


「で、何の用?」

「残念ながら、私は偽物です」

「え? ちょ……抱きつかないで!」


「爆発します、爆発します、バクハツシマス、バクバクバクバク……」

「きゃぁぁぁぁぁぁぁぁっ!」


「まあ、冗談ですが」

「あんたはぁぁぁぁぁぁっ!」


 ちびりかけた魔王は、がくがくとスィを揺すった。

 スィは相変わらずの無表情で何を考えているのか見えない。


「それはそうと魔王様」

「何よ?」


「魔族七人衆(○´艸`)の三人まで見ましたが、私の好きな性別ではありませんでした」

「……みんな女の子ってわけね」


「かといって親友(マイメン)になれそうな子もいませんでした」

「リリフィーはそういう関係なんじゃないの?」

「あれはただの奴隷です」


 リリフィーが聞いたら確実にヤンデレ化しそうだった。


「もっと私に歳が近くて。私に似ているような人はいないのですか?」

「それがリリフィーだったんだけど?」


「あんな自分と同じ性の子を好む人ではなく、もっと私と趣味や性格が似ている子はいないのですが?」


 大いなる誤解を生んでいるが、リリフィーがどの性を好むかは魔王は知らない。

 とは言え、いきなりこんなことを聞いて来るという事は、キャンヴェラに凝りているという事かも知れない。

 

 スィの嫌な気分は魔王のいい気分。

 彼女の嫌なことは全てやってやりたい。

 ここだけ切り取ると、魔王すげえ嫌な奴だけど。


「それだと……エメルーシャかしらね? 研究担当だから、出ては来ないけど、歳は一つ下で、自分の担当に熱心で、サイコパスなところも似てるわね」

「私はサイコパスではありませんが?」

「サイコパスよ! 超ドサイコパスよ!」


「まあ、いいです、会いに行きましょう。どこにいますか?」

「研究棟よ」

「分かりました」


 研究棟などと言う存在を知らないがそう言って、魔王室から出た。

 とりあえず、魔王城をうろつくのはいつもの事なので、うろつきながら探すことにした。


「おお、スィじゃないか!」


 そんな不安定な動きを見せるスィの前に現れたのはキャンヴェラだった。

 副魔王的な地位であり、スィと敵対していたはずだが、会えば肩を組んで来る。


 彼女は体育会系で、勝負して負けたら親友(マイメン)になる単純系なのだが、スィは勝っても負けても遺恨を残す系なので、どうにもこの変わりようは苦手だ。


「すみません、何度も言いますが、あなたは私の好きな性別ではないのです」

「おお、前より育った気がするな! 成長期か?」


「成長期ですが、胸を無遠慮に揉むのは同性でも許させざる行為です」

「そんなこと言うなよ。私とスィの仲だろう? ん?」


 どちらかというと親戚のオバちゃん系だ。


 頬をくっつけて来て乳液を擦り付けて来るので困る。

 こんな人でもお肌には気を遣ってるのね。


「それで、何を困っているのだ?」

「エメルーシャという人がいる研究棟を探しています」


「エメルーシャか……奴は人の話を聞かない奴だな……大丈夫か?」

「あなたで鍛えられているので大丈夫です」



 オマエモナー。



 スィはキャンヴェラに案内されて、研究棟に連れて来られた。


「では、私は帰るが、また私の部屋にも来てくれ! いい豆腐を用意して待っている」

「植物性プロティンは私には必要ないです」


 一方通行のキャンヴェラをいつかどう利用するかを考えて別れ、研究棟に入る。


「すみません、あなたのアイドル、プリティ☆スィが慰労に来てあげましたよ」


 突然の訪問にもスィは常に上からだ。

 研究棟は、魔王城とは別棟の建物で、名前の通り研究を主にするための棟、ではあるが、基本的にエメルーシャしか使っていないようだ。


「うにゃ?」


 中から出て来たのは、肌の黒い女の子だった。

 小柄な女の子で、髪は長いが大雑把にまとめられていた。


「エメルーシャさんですか? 私は──」

「魔王様の作った爆弾にゃ!」


「いえ、その原型となった麗しの──」

「研究したいにゃ! 爆弾もっと作りたいにゃ!」


 エメルーシャはスィの腕を引いて奥へ向かう。


「すみません、あなたは私の好きな性ではありません」

「調べるにゃー! 隅々まで調べるにゃー!」


「でも、強く来られると切なく感じてしまう可能性もなくはないです」

「これ邪魔だにゃ! 脱ぐにゃ!」

「それを脱がされると私も切ないです」


 サイコとサイコの話は成立しなかった。

 スィは強引に服を脱がされ、隅々まで調べられた。




「ふう……疲れたわ」


 魔王は自室に戻って来ると、そんな言葉が漏れた。

 毎日の事ではあるが、魔王と言うのは仕事が多くて大変なのだ。


 しかも籠ってた間、直近の事はキャンヴェラにしてもらっていたが、先送りできるものはしていたので、それが今になってのしかかって来る。

 細かい仕事ばかりで、あまり進まないのでストレスがたまる。

 そして、そんな時に限って、最大ストレスのあいつがふらりとやって来るのだ。


 大体、自分にストレスをためないためにリリフィーを置いたのだが、彼女はいったい何をしているのだ?

 きちんと働いて欲しいものだ。


「はあ……あの子に押し付けても意味はないか……」


 自分の部下に責任を押し付けた自分を反省しつつ、ベッドに寝転がる。


「ぶふう」

「きゃぁぁぁぁぁぁぁっ!?」


 シーツの中から声が聴こえる。

 魔王は驚いてちびったが、五滴までは漏らしてないという独自ルールでギリOKだった。


「な、何!?」

「私ですが」


 ひょこ、とスィが顔を出した。


「何してんのよ!」

「あ、ちょっと」


 魔王はシーツを剥がす。


「な、な、何してんのよ!?」


 スィは、魔王のベッドで全裸になっていた。


「いやん」

「さっさと出てけ!」

「待ってください、これには訳があるのです」


「聞かない! 出てって!」

「そんなことを言わないでください。聞いてください」


「聞かない! 私は疲れてるんだから! これ以上プライベートスペースに割り込んで来ないで!」

「私もそのつもりなのですが、今回は緊急なのです」


「……何がよ?」

「エメルーシャという人に服を奪われ、体中を調べられたのです。それで服を求めてここに来ました」


「研究棟から裸でここまで来たの?」

「そうです」


「ここまで来たのなら、自分の部屋に帰ればいいでしょうが」

「ここが一番近かったのです。私も羞恥心から最も近い場所に逃げたのです」

「あんたに羞恥心があった方が驚きね!」


「それでこの部屋に来て勝手に服を漁ったのですが、ダサいのばかりで着られません。ついでにサイズも合いません。役立たずです」

「だったら出てけ! 裸のまま出てけ!」

「魔王様はそんな非道ではないのです」


「……じゃあ、どうするのよ?」

「魔王様の服を加工するのです。だっさいしくっさいけど、仕方がありません。最大の譲歩です」

「臭くない! 絶対に臭くないから!」


 魔王はだっさいのは認めてしまった。


「……まあ、加工して納得するなら勝手にすれば?」

「ちなみに退屈だったので、下着は全てエロい加工をしました」

「何してんのよ!」


 魔王は慌ててタンスを漁るが、物凄くV字が深くなってたり、股間に穴が開いていたり、清純派(○´艸`)魔王様の着けるものとしては、あまりにも過激だった。


「何てことしてくれたぁぁぁぁぁぁっ!」

「ちなみに、これが最後です。これ以外は失敗作です」


 スィが出したのは、魔王のおきにの服だった。


「それは駄目! っていうか最後ってどういうこと!? これ以外の服は!?」

「ありますよ。ただ、ちょっとだっさいのでエロく改造しました。明日からセクシー魔王と呼ばれますよ。よかったですね」

「余計なことをするなぁぁぁぁぁぁっ!」


 魔王はシーツを貸すことでスィを追い出し、何とかおきにを守った。

 その後、服と下着を大量に新調したが、夜な夜な自分の部屋でセクシー下着にセクシー衣装を着る魔王の姿があった。


 セクシー魔王はもうすぐデビューするかもしれない。

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