クレヨンジュウ 2
安売りセールの時のママって、本当にすごいんだ。
安い物を手に入れる為なら、怖いものなしになっちゃう。
その黒ずくめの男の人は、僕を見て何か言いたそうにしたが、僕はツンと顔を逸らせてやった。
僕だって、ヒガイシャなんだからね。
僕が欲しいのは、三十六色のなのに。
たった今、露店でママが買ってくれたのは、十二色しかないんだから。
金も銀もない。これで、何を描けって言うんだろう?
箱の裏の説明書きには、ガラスなどに書いて消せますとあった。
それを見ると、水性のクレヨンは普通のクレヨンより高いから、得をしたとママは喜んでいた。
水性のクレヨン、か。
僕は、家に帰って自分の部屋に帰るなり、早速そのクレヨンを試してみる。
曇り空を背景に、窓に一杯に落書きを始めた。
水で消せると分かっているから、遠慮もない。
これは結構お買い得だぞと、その時になって僕は思った。
スケッチブックよりも窓はずっと大きいから、僕は大きな怪獣を描くことができた。
そいつは目が赤で、身体は緑色で、背中には紫色の刺が生えてるんだ。
ガウガウガウなんてね。
口からはオレンジ色の炎を出して……。
気が付けば空は、僕の描いた怪獣で、一杯になってしまっていた。
しかも僕が描き終えた途端、そのクレヨンで描いた怪獣は、本物になってしまったのだ。
ううん。僕が窓に描いた絵は、空にくっきりと写っていて――ええっと、何て説明したらいいんだろう。
とにかく僕は、空にクレヨンで怪獣の絵を描いちゃったのだ。
僕は、慌てて窓を開いた。
町の中は、大混乱になっているようだ。
車のクラクション、パトカーのサイレン。
近所でも、騒ぎに気付いて窓を開けて外を見た人々は、口々に怪獣だと叫んでいる。
そうなのだ。
僕が使ったクレヨンは、空に絵が描けるだけでなく、描いたものが本物になってしまう、魔法のクレヨンだったのだ。
空に描かれたクレヨンのカイジュウ。
あいつは、クレヨンジュウだ。
僕は、大変なことをしてしまったらしい。
クレヨンジュウは、オレンジ色の炎を吹き上げ、しっぽをブンブン振り回している。
あんな長いしっぽなんか、描かなきゃよかった。
それに、炎なんか口から出させなければよかったのだ。
ああ、このままじゃ、町が大変なことになっちゃう。
僕がそう思った時だ。




