ろぎーと耀とショータイム(に巻き込まれたことが人生最大の不幸的なお話)ウィズ戦闘フェーズ
微グロ注意的6話目
~サブタイが長いのは仕様です~
注意:今回、倫理観無視的会話や行いがあります。その手のことで気分を害される方はご注意ください。
「や、やめてください……!」
「へへ、いいじゃんよぉ。タノシーこと、しようぜ」
そんな月並み三下ド三流悪役発言が、俺が初めて聞いたチャラ男の言葉だった。
ハッキリ言って、雑魚臭しかしない。ていうか、別に俺としては、名も知らぬあの女性がどうなろうと、それこそ強姦されようが殺されようが、『痛ましい事件だねー』で終わるのだが……
キラキラニコニコワクワク。
って感じの顔をした耀が、過剰な期待を込めた眼で俺を見つめてくる故に、俺は〈正義の味方〉の仮面をかぶらなければいけないようだった。
どうせソッコーで剥がれるのにね。
「おら、暴れんなよ……ッ」
三下男とは別の、こちらは中々に厳つい容姿で強そうな方のスキン男が、強引に女性の腕を引っ張り、壁に押し付けた。
「ほらほらろぎー! 出番出番! 今っきゃないぜGOGOGO!」
「はいはい」
確かに、正義のヒーローとしてはベストなタイミングだけど、俺個人としてはこの先の展開の方が気になったり。
っとか言ってると誰かに怒られそーなんで、行きますか。
「はいはーい。ちょっと待ったー」
「……あァ?」
パン、パン、と乾いた破裂音を俺が出して、ようは手を叩きながら、俺は路地へと一歩足を踏み入れた。同時にスキン男が睨みの効いた顔で振り返り、ドスの効いた声を出した。こわいこわい。
「ンっだてめぇ。ここはガキの遊び場じゃねぇぞ」
これまた、テンプレなセリフをわっかりやすい悪人っぽい笑みを浮かべて言った。
「交尾する場所でも無いと思うんスけどねぇ」
意趣返しを意識して返したが、どうだろう?結果は……
こうかはばつぐんだ!! というテロップを流したいくらい、スキン男の顔が険しくなって三下男がよく分からんほうけた顔をして、女性が唖然とした。
「マジで何だこいつ。ねえ兄貴。こいつどーしやす?」
「うわ、現実世界で兄貴とか呼ばれてる人初めて見た」
スキン男は三下男の兄貴分らしーっすね。
「殺せ」
「え、へ、へい」
スキンの指示は明朗で快活で的確だった。口封じには痛めつけるだけじゃ足りないからねぇ。対して三下は動揺してるが、すぐに顔を引き締めて、懐をまさぐって、妖しく光るナイフを取り出した。
「へぇ」
意外だ。ただのゴロツキヤンキーの類だと思ってた。それとも、最近のヤンキーはナイフ所持がデフォなのか? 近くに隠れている耀が口笛を吹いたのが聞こえた。
「ガキ一人殺すのにナイフとは、大胆っすね」
まあ殴り殺す訳にもいかないか。俺の発言を無視して三下は走り出した。このナイフでころころしてやるぜ! って顔だ。
「ろぎろぎ、今がベストなシュチュエーションっしょ!」
言われなくてもわかってるよ。んじゃそうだな、宣言する言葉は……
前も触れたように、俺は能力者だ。それも結構便利な能力だ。能力名はって、そのまえに。
「俺に近づくと火傷するぜッ!」
俺は叫んだ。人指し指を突きつけて。ナイフ男ははぁ? って顔のまま、ナイフを突き出してきた。俺はそれを間一髪で、上半身を捻って躱した。
ナイフ男の手は、俺の体から30センチも離れていなかった。そして、能力、発動。
「うわっばあぁじいぃいああぁあああッ!!ッッ!?」
解読不能の悲鳴を上げながら、ナイフ男はナイフを取りこぼし、ただの男になった。男は、ナイフを握っていた右手が突然炎に包まれ、発狂したように踊り狂っていた。
しっかりばっちり、俺の能力が発動したようだ。
「うぐああ、あぁあ、あっづぃい!!」
なんども右手を壁に叩きつけて、ようやく炎が消えた。男の右手は赤くなり、結構ヒドイ火傷を負ったように見える。
そんな悲惨な情景を完無視して耀が、朗らかにセリフを吐きながら物陰から出てきた。
「ろぎー。流石に今の宣言はダサいよ」
「うえ? マジ? 俺的に、格好いいと思ってたんだが」
「もう、ダッサダサ。おじいちゃんの腹巻くらいダサい」
「そりゃダサいなおい」
この場にそぐわぬ俺と耀の掛け合いを見て、やけど男とスキン男は呆然としてた。その隙に、女性は二人の間を駆けて、俺と耀の背後に隠れた。
「た、助けてください……ッ」
おおっと? 今のを見て、俺を頼ってくるとは。普通は不気味がったりすると思うんだけど。状況が状況だから、思考回路がゆるゆるなのかね。
「ま、最初からそのつもりっすけど」
「ひゅ~。カッコイー」
「茶化すな」
またも気の抜けたやりとりを始める俺と耀に、
「て、テメェら! な、何しやがった!」
やけど男が激昂した。
「“ら”って、私“は”なんにもしてないよぉ?」
確かにそのとおりだが、むかつくからその言い方ヤメロ。
「ちっ、騒ぐんじゃねぇ。どうせなんかのトリックだろーが」
確かにトリックはトリックだけどさ。ロジックが科学的じゃないからトリックとは言わない気もするけど。
なーんて呑気に考えていると、スキンが迫ってきた。俺は一応、女性陣2人をジェスチャーで下がらせた。
「おいおいつるっぱげ、俺に触れると怪我するぜ?」
「ウルセェ。死ね」
スキンは動じなかった。拳を振り上げ、思った以上に速い速度で拳が迫ってきた――
「――〈宣言〉は、したからな」
俺の呟きが、届いたかどうか。とにかく、スキンの拳が俺の腹に打ち込まれた。ガツンと強烈なショックが脊髄を伝って脳に響いて、一瞬だけ視界が揺らいだ。直後に押しつぶされた内臓、特に胃が悲鳴を上げて、嘔吐するみたいに中のものを吐き出してきて、俺自身も嘔吐しそうになった。
「う、ぐうぇ」
潰れたカエルみたいな声で俺は呻いたが、俺を殴ったスキンの悲鳴はそれ以上だった。
言葉にするのは難しい。強いて言うなら、ぐるぁあああがあああみたいな悲鳴が上がった。痛みに眉をひそめながら顔を上げた。見れば、スキンの右手の指はバッキバキにあっちゃこっちゃ曲がり、手の甲も無事では無さそうだった。
「あ、兄貴ィ!?」
右手を火傷した男が、悲鳴に似た驚愕の声をだした。
「ぐぅぅう…………ど、どうなってやがるぅ」
激しい痛みに襲われてんだろーな。とはた目にもわかるほど、スキンは大粒の脂汗を額に浮かべている。
「だから言ったのに」
まったく、もう一度言うが、だから言ったのに。『俺に触ると怪我する』ってさぁ。
ぶっちゃけ、意味が分かるわきゃねぇと思ってたから、俺もそこそこ意地が悪いんだな。再確認した。
「おうおう。今度のはいい感じに決まったねぃ」
骨バキバキの手を、解剖やってる最中の研究者みたく、興味深そうに見ながら、耀が褒めてくださった。
「でもでもぉ、殴られて痛がったのはマイナス点だから残念! 『そこそこ頑張りましたでしょう』止まりです!」
「語呂わるっ」
そこそこ頑張りましたでしょうって……あれ? 意外に語呂良かったかも。
「て、てめ、なんなん……だ……? お、おい」
「ん?」
スキンの方が、俺に向かって険しい顔を向けてたんだが、急に驚いたように目を見開いた。なんだなんだ? って、あ、そうか。
「お、お前……なんだよ……その、“眼”」
「あ、兄貴? なに……ってああ!」
今の俺の瞳って、
「あ、青く光ってる……!?」
大正解。俺は、能力発動中は、瞳がコバルトブルーに光る。っつっても、普段が青っぽい黒なせいで、ほとんど分からないんだけどな。今は夜で、路地は月の光も入ってこないから、光ってるのが目立ったんだろう。
「一応ゆっとくけど、カラコンじゃないぞ」
「な、何もんだテメェは」
何者、と聞かれても困るんだけどな。
「なあ耀。こういう時の決めゼリフって何がいいと思う?」
なので耀に意見を求めてみました。
「んんー。『主婦だッ!!』とかは?」
「俺は主婦じゃないし、それは違う漫画だ」
面白いよね、錬金術系ダークファンタジー。終わっちゃって残念だなー。
「まあなんていうか、能力者だよ。俺」
締まらない自己紹介になっちまった。のほほんと言い放ったせいか、男たちは額に青筋を浮べた。
「くっそ、ふざけやがって!!」
「ぶっ殺すッ」
ついに男×2がキレた。2人同時に迫ってきたので、どうしようかあ、と考えた結果。
「メンドイし、吹っ飛べ」
俺は、宣言した。同時にスキンが蹴りを、やけど男は殴りかかろうとして――
バッ。ビシャッ。と吹っ飛んだ。
というよりは、吹き飛んだ? どっちでも同じか。バッと体が文字通り“消し飛ん”で、大量の“赤い体液”が地面や廃ビルの壁に飛び散った。人間2人分なので、相当な量だ。吹き飛び方としては、地雷とか爆撃が直撃したように、俺を爆心地として放射状に血液が散乱した。
――運ないなぁ。履行率“大”かよ。
もちろん、運がないのは男たちのことだ。そういう意味で言えば、耀に“悪いこと”をしている場面を見つかったことそれ自体が、彼らの人生を大きく変えてしまうバッドラックだったと言えるけど。
ともあれ俺のバトルフェイズは終了だ。対戦相手が✽んだからな。
「相っ変わらず、ろぎろぎの“ショー”はド派手に終幕するねぇ」
耀は、俺が能力を発動して誰かと闘う事を“最上のショー”だと言って、ことあるごとに見たがる。俺としては普段から命狙われてる身なんで、能力の無駄使いはしたくないんだけど。
……そういえば、最近は“殺し屋”さんたち仕事してないな。いや、俺関係の仕事は一生引き受けないでくれると助かるんだけどさ。
「ぐりぐりぐりぃー」
耀が血の飛び散った地面をぐりぐり弄ってた。土遊びをするような無邪気さで倫理観を問われるような事をするんじゃありません。
言ってる俺が、倫理観崩壊してるけどさ。今更だが、これって殺人になんのかな。自覚ねぇーっていうか実感ねぇー。目の前で人が死んだっていうのに、俺の心が平時と変わることはなかった。世間的にはかなり奇人変人変態異常者の側に立っている事を自覚させられた。耀はそれ以上だが。
「おい耀。血なまぐさいから移動すんぞ」
そういえば、あの女性はどうしたんだろうか。非現実的な状況を見て逃げたのかな。
「えぇーこの匂いがいいんじゃん」
ブラクラをひまつぶしに見るようなヤツの神経は理解できんね。
っていうか、ここはどこなんだ?
今更な疑問に首を巡らせていると、反対側の路地の先、一本奥の道はかなり明るそうだ。視力にモノを言わせて凝視すると、電飾が過剰に施された看板が幾つか見えた。いわく――
『桃色クラブ』だの
『ハッピー♥ホテル』だの
あげく『愛・ホテルスマイル』だの……
うん? あれってあれか? あれなのか? いわゆる……ラブホ? つまり、あの通りは俗に言うホテル街?
「…………………………」
俺は、名残惜しそうに路地を覗いている耀に視線を送った。
それに気がついたのか、ん? と耀が振り返った。
――おめー、なんでこんなとこにいたのよ。
とある可能性が、浮かんでしまって、俺は眉根を寄せた。
【続く】
何はともあれお粗末様でした。
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