ろぎーと休日(に起きた思春期の弊害的なあれこれのお話)
通常運転的4話目
~サブタイが長いのは仕様です~
突然だが、容姿の話をしようと思う。
俺は身長177センチで、体重は67キロだ。あ、これは容姿じゃないか。
目付きが少し悪くて、瞳の色が青がかった黒。鼻は別に高くないし、これといって特徴の無い顔かもしれない。顔のパーツが崩れてないのが密かな自慢だ。
髪は面倒くさくて切ってないので、少し伸び気味だ。長くなってきた髪を見てると、中学時代を思い出すなー。
俺の中学時代はどうでもよくて。
俺はぶっちゃけイケメンとは言い難い。と自分では思ってる。それは碓氷をひがんでいる様子からもわかると思う。
んでそんな俺がどうしてこんなことを考えているかというとー。
「まあ、この服で、いいか……な?」
今日の着ていく服に悩んで、姿見をじぃーと見ていたからだ。
濃紺の半袖シャツ(中心に白で文字とか書いてるTシャツ)の上に同色の半袖パーカー、ズボンはグレーのジーパン。
無難だ。まったくもって無難だと思う。
つーかなんで俺が遊びに行く時の服で悩まなきゃならないんだ。と思わなくもないけどさー。そこはほら。
「思春期ですしー?」
髪を引っ張ったり服を摘んで見たりしながら呟いた。だって思春期だからなー。なんたって思春期ですからねー。思春期最強。とりあえず思春期だって言っときゃなんとかなるからなぁ。
つーわけで思春期真っただ中な俺は例え気心のしれた友人と遊びに行くにしても、服装その他が気になっちゃうわけですよ。
「っと、もう12時か」
約束は13時だからそろそろ行かんとな。
「財布良し。ケータイ良し。腕時計良し。……うん、いいだろ」
ちなみに財布の中身は5千円入ってる。
部屋から出た瞬間に姉に会って「あ、行ってきます」と言うと「いってら」と見送られた。
「イッテキマース」
玄関でもう一回形だけ挨拶表現をして、扉を開けた。外は風が気持ちいい晴天だった。
✽ ✽
「ろぎーの格好、無難で面白くないねぇ」
ぐさり。
出会い頭に俺の心を抉りとっていったのは誰であろう高木だった。
「うっせ、悪かったな」
「スタンダードな感じで私は好きですよっ」
フォロワー穂花の発言、意外に心にきますよ? 主にダメージとして。フォローになってるようでなってねぇ。
時刻は12時58分。遅刻ギリギリ飛び込みセーフな時間だった。あっぶねぇ。遅れたら高木に何されるかわかんねぇし。今日一日荷物持ちとかやらされかねん。
「つーか、アホの碓氷はどうした」
まさか遅刻か。
「まだ来てない。見ればわかるでしょ?」
「まだ来てないですよっ。見てわかりませんかっ?」
二人同時に同じようなことをいいやがった。つーか珍しく穂花が馬鹿にするようなセリフを吐いた気がする。気のせいって事にしたい。切実に。
「んじゃ耀は……ってあいつは今日はお休みだったか」
「……ふぅーん?」
「んだよ高木、その何か言いたげな顔は」
「べっつにぃー?」
一重で切れ長の両目を細めた表情の高木。いつになく嗜虐的な顔してんなぁ。過去にも触れたかもしれないが、高木は俺ら5人(誰がなんと言おうと5人)のメンバー内では、基本的に他メンバーの暴走を止めるツッコミ役だ。
だがしかし、ドSでもある高木の口 撃は、時として物理的な殺傷能力を秘めているとしか思えない鋭さで俺たちの精神や心に突き刺さり、切り裂き、貫く。高木、恐ろしい子……! とか言いたいくらいヤバイ。
その上、高木は俺に対して容赦ないからな。中学時代からの付き合いの気楽さなのか、はたまたその他の理由か、それは俺にも分からんけど、確実にあいつは俺をいぢめる事に喜びを感じている。
「やあやあ3人とも、早いなぁ」
のうのうと碓氷が登場した。タイミングが悪いような良いような、つまり微妙なタイミングで登場しくさりやがった。とーりーあーえーずー……
「遅刻野郎には、天誅ぅー!」
遠慮と容赦と情けを一切かけない右ストレートを放った。
「くっ、危ない……ッ」
切羽詰った声と表情で、っていうか実際にかなり危険な状態だったけど、碓氷が体を倒すようにして俺の拳を回避した。ちッ、やるなこいつ。
「油断禁物だよ」
と思ったら、いつの間にか俺の影に隠れていた(影法師って意味ではなく)高木が碓氷に躊躇いなく前蹴りをかました。碓氷の顔面に直撃した。碓氷は悶絶してもんどりうった。
「ふ、不意打ちとは……ッ、やるじゃないか……ッ」
モロに入った顔面の右側を押さえている姿がやけに様になってるのがムカツク。このまま『ふはは、こうなれば我も真の力をうんぬん』とか言い出しそうな雰囲気すら漂っている。碓氷のバカ、場のノリによっては中二病が発症、時には暴走すっからなぁ。
しかしそんなことよりも、俺には可及的速やかに確認すべき事象があった。
「なあ碓氷、何色だった?」
今だけは以心伝心することを許可するのでこれだけで悟れ碓氷。
「ん? ああ、可愛い✽✽色――」
碓氷の言葉はそこで途切れた。表情を凍りつかせた碓氷を見までもなく、俺も背後におっとろしい殺気を感じて恐る恐る振り返った。
般若面を背負った高木がいた。
「――コロスッ!」
高木がキレた!?
「うわあ待て高木話せば分かる!」
「そ、そうだよ凛! そもそもミニスカでキックなんてする凛が悪いんじゃないかぁー!?」
「黙れ思春期エロザル共ぉ! 天誅!」
只今非常に残酷なことが行われています的なテロップを流さなければならないような事をされました。
「ふう、記憶の抹消はこれぐらいで十分かな」
コトを終えた高木はいつものクールな態度に戻っていた。
俺たちはいつの間にかグールみたいな死体に変わっていた。
「き、記憶どころか存在を抹消されっかと思ったわ……」
「ろぎー、僕は決めたよ。金輪際、凛のスカートは覗かない。絶対にだ」
そりゃあったりめーだろ。つ-か、ろぎーゆーな。と罵声を浴びせる体力も気力も残っちゃいなかった。
「お疲れ様ですっ」
穂花だけが変わらず、うん、まったく変わらず微笑んでいた。俺たちが【自主規制】や【自主規制】や【自主規制】されている時すらも変わらずに。
実は穂花は、揺るがぬという意味では一番の変人なんじゃなかろーか。
「穂花、ヘルプ」
とはいえ、ロープ(なぜか高木が所持していた)に碓氷と一緒にまきまきされて路傍に転がされている状態は非常によろしくないので、実は変人度No.1疑惑が浮上した穂花に助けを求めた。
「はいっ! 任せてください!」
てけてけ寄ってきた穂花がロープに悪戦苦闘している際、色々と姿勢を動かしたその時だった。
「あ、パンチラ」
碓氷のバカが余計な一言を漏らした。その瞬間にロープが解けた。碓氷だけもう一度捕縛された。
「あれ? 穂花? どうして僕だけ縛られたままなんだい?」
しかも自覚なしっすよこのアホ。アホ碓氷は伊達じゃなかった。……碓氷のアホさ加減に敬意を払って合掌。南無。
「一生そこで悔い改めるといいですよ水代君っ」
「あれ? なんで名字呼びなの!? いつもは下の名前で呼び捨て――――」
「行こうか、穂花」
「ええ、行きましょうっ。ね、ろぎーさんっ」
「あ、ああ。――悪いな碓氷」
無常にも見捨てられた碓氷に謝罪して、俺も女子2人(片方は怪しいが)の後を追った。この世は弱肉強食。今この瞬間は、高木と穂花が強者で、俺たちが弱者なんだよ碓氷……。
「え、ちょっと? 本当に放置なのかい? ろぎー!? 言葉さーん!? 穂花!? 凛!? 誰かぁー!!」
背中越しに虚しく響く碓氷の声を聞きながら、俺は無力感を噛み締めて、後ろ髪を引かれる思いでその場を後にした。
【続く】
何はともあれお粗末様でした。
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