ろぎーと学校の仲間たち(との学食での結果報告的バカ騒ぎのお話)
登場人物紹介的3話目。これにて主要メンバー全員登場、かも。
~サブタイが長いのは仕様です~
時と場所は移って、時は昼休み場面は我らが高校の誇る学生食堂、略して学食へ。
学食には長テーブルが多数、窓際のカウンターテーブル風テーブルが二箇所ある。俺たち5人は長テーブルの一角を陣取っていた。
「ろぎー、今日の小テスト、どうだった?」
席に着くなり、高木がそう言った。表情には出てないけど、思いっきりバカにした雰囲気だった。
「訊くな高木。その質問は、お前が女装っ子なのか否か、くらい深遠に埋もれているべき問いなんだ!」
「勝手に僕の存在を深淵の謎にするなよ」
一人称は僕。声は、まあどっちかって言うと女子! 胸は耀並みにない。身長は男子にしては低く女子的には普通。そして服装は、緑のチェックスカートにワイシャツ、黒い薄手のカーディガンという俺らが通う秋月高校の女生徒の制服を着ている。
しかし、高木 凛をただの僕っ娘と定めるのはまだ早い。
女装っ子、いわゆる男の娘というやつなのではないか、という疑惑があるのだ。というか高木自身が『僕は心は女の子だよ』と明言したことにより、現状この高校では高木は男の娘という認識なのだ。
「ねね、リンリン、そう言うなら性別をハッキリさせようぜー」
さすがは耀。いつの間にか高木の背後に回り襲いかかった!
「甘いねあかるん」
しかし、
「あ、あり?」
がばぁっと抱きついたはずだったのに、いつの間にか高木は耀の背後に立っていた。いやいやいや、どうやったんだよそれ。超スピードか? 時間を止めるスタンドか? お前はデ〇オか。
「まあまあ、凛は男か女か分からない方がエロいからそのままでいいよ」
「黙ってろイケメン。さらっと不純なこと言うんじゃねぇ」
碓氷が余計な事を言った。ていうかなんだ、どうしてこいつはそういうことを言う時も爽やかな笑顔なんだ。
「……で、実際どうだったの。ろ・ぎ・い・君?」
「うっ……」
にやにやしてやがる。ショートの黒髪の下にある顔は、いわゆる中性的な感じで、アジアンビューティーというか、日本美人的な美しさだ。その顔で責め立てるような表情をしている高木は、ぶっちゃけエロい。
じゃなくてぇ。
「うるさいな。ダメダメだったよダメダメ! 七割白紙だチクショー」
「あ、前に同じー」
高木急襲作戦に失敗した耀は自分の席、俺の正面に戻っている。両手を上げてブラブラさせている。
「ぺらっぴはどうだったのん?」
話を振られたのはぺらっぴこと水代碓氷。あだ名の由来はご想像通りでございます。
「おらどうだったんだよペラペラ」
「ぺらっぴとかペラペラって安直すぎるあだ名だよね」
「「黙れ優男」」
俺と耀の発言はシンクロ率120パーセントだった。
「ホント仲いいよね。あかるんとろぎーは」
高木がちらっと穂花を見た。
「そうですね、羨ましいですっ。でも耀さんは私にとっては恋敵には成り得ないので問題なしですよっ!」
と、何だか挑発じみたことを穂花が言う。
「それどーゆー意味ですかねぃ」
「耀さんに女性としての魅力で負けているはずがないという意味ですよ!」
断言しなさった。さすが天然ラブリスト(自称)っすねー。相手を抉るセリフをさらっといいなさる。
今の発言にはさしもの耀も口元をぴくつかせた。まあぶっちゃけ事実だけどな。耀はロリコンにしか需要なかろう。
「でもでもぉ、ろぎーは幼女趣味なんだもんね?」
「はい? どこがどうなったらそうなる」
俺にそんな特殊性癖があるワケないじゃないですかヤダー。
「朝言ってたじゃん」
…………あー確かに。
「ありゃ冗談だ」
「それじゃあ、ろぎーはどんな女性がタイプなんだい?」
「ろぎーてゆーな」
「耀や穂花や凛はいいのに僕はダメなのかい?」
たりめーだイケメンが。
「俺をあだ名で呼んでいいのは女子だけだってこったー」
「それは、僕を女子と認めてるってことかな」
高木さんがにやにやして痛いところを突っついてきた。そーなんだよなー。
「高木はエロいからおっけーってことで」
「僕も色気はあると思うんだけどなぁ」
「うるせーボケ碓氷。そんなこと言ってるからゲイ疑惑が浮上するんだよ」
それだけならざまー見ろで終わるけど、俺までゲイだと思われるとかマジ勘弁っすよー。
「でもでもでもぉ、ろぎろぎのタイプはちょっと興味ありますねぇー」
耀まで乗って来ちゃったじゃねーか。勘弁してくれ女子の前でそんなこと言えるか!
「うるせーうるせー、結局てめーの小テストはどうだったんだよ碓氷こら」
「あ、誤魔化すんだー」
「ふぅーん、怪しいね。変わった趣味なのかな?」
「ろぎーさんっ、なんなら『好きなタイプは穂花』とか言っちゃってくれてもいいんですよっ」
女子陣営(若干1名怪しいけど)がうるせー。恋バナに群がる女子高校生かお前ら。
「助けろ碓氷」
「僕の小テストは満点だって、さっきクレバー川田が教えてくれたよ」
「やっぱお前黙ってろ」
「そういえば、大和君はどうしたんだい?」
黙ってろっつったろーがい。だがナイス話題変更だ!
「あいつは数学の補習。だから教室で弁当食ってんじゃね」
大和はぶっちゃけ、俺より数学の成績が悪い。というか全体的に成績が悪い。年中補習で昼休みを潰してる、そう彼こそ補習マスター大和! ……なんか語感的に某ギャグ漫画を思い出した。
すると突然、今までねねねどうなのさどーなのさーとうるさかった耀が虚空を光のない瞳で見つめ、遠い目をしていた。分かる、分かるぞ耀。今のお前の心境が俺には痛いほど分かる……!
「戦艦はあったま悪いからねぇ。仕方ないねぇ。ねぇろぎー」
遠い目のまま、俺に振ってきた。ここはいっちょ、現実を突きつけて差し上げよう。
「そうだな。来週は俺たちも大和のお仲間だけどな」
今日は金曜日で、たぶん英語の補習は来週の火曜か水曜だろう。あーやだなー。
「ふへへ、バックレちゃう?」
「魅力的なお誘いだが却下」
「うえーなんでぇ-」
「クレバー川田は容赦なく赤点を付けるから、だ」
去年はそれで何人もの犠牲者が出たらしい。くわばらくわばら。
「ろぎーさんっ、私がお教えしましょうかっ?」
穂花からありがたーいお誘いがあった。
「だが断る」
「どうして? 教えてもらえばいいでしょ」
分かってて言ってるだろ高木てめー。
「だって穂花、人にもの教えるの魔王級に下手じゃん」
「あうっ。そんなこと言わないでくださいよぅ」
俺の言葉に穂花がしゅーんと縮まった。反応がいちいちぶりっ子っぽいのは素で天然なのでご容赦願いたい。
「んでもろぎろぎ、ほののんお花畑略してほーけーはあったま良いよ?」
「てめー分かってて言ってるだろ。お前はシモネタ挟まないと死んじゃう病か」
そしてあだ名が異常に長い。なんだほののんお花畑って。的確すぎだろ。
「ふへへ」
穂花と違って耀のこれは天然なのか狙ってなのかわからなくなった。今日の朝こいつがキャラ作りとかいうからー。と思いながらにへーっと顔の筋肉を弛緩させた耀の顔をじっと見た。
じっっと見た。
じっっっと見た。
「ねえねえろぎー。私にも歳相応の羞恥心というものが」
何か顔を赤くさせてた。
「いや、歳相応の羞恥心はないだろ」
「バレまちたかー」
「うっわそれむかつく」
ていうやりとりを他の三人が白い目で見てた。いや穂花だけは微笑んでたけど。
「ろぎーとあかるんって時々さぁ、二人だけの世界に入ってるよねぇ?」
高木がマイナス273℃の視線を送ってきた。ちなみにマイナス273℃は絶対零度って意味ね! 一応!
「そうだよろぎー、たまには僕もその世界に入れて欲しいなぁ」
「碓氷はどうしてそう自分からゲイっぽい発言をするんだよ!」
「僕はろぎーが大好きだからね。あながち間違っていないよ?」
やめろぉぉお! 碓氷ファンの方々が俺を(かなり本気で)殺しに来るからやめろぉぉおお! あとお前はろぎーって呼ぶなっつってんだろーが! 1人称が僕なのが2人いるからややっこしいんだよ!
と叫んでいるとはいざ知らず……だと思うが、碓氷のヤローは薄く微笑んでる。
「私、最近思うんです。最大の恋敵は碓氷さんなんじゃないか、って……」
「いや、穂花。そりゃ勘違いだ。頼むからそういう発言は控えてくれ」
碓氷ファンがやばいから。割とマジで。一回屋上から吊るされそうになった恐怖が……あいつらは女の皮をかぶった悪魔だよ……。
「とっころっでろぎろぎー。いーまなーんじー?」
空気を読まない耀、グッジョブ。今の流れはせき止めなければ危なかった。食堂の机にダレている耀を一瞥してから腕時計を見た。
「今は――1時5分」
「じゃ、そろそろ戻ろっか」
高木の合図で各々立ち上がった。ちなみに、俺たちは穂花以外全員ハヤベンしてるので学食には駄弁りに来ているだけである。
「――あ、そうだ」
1人だけ学食で弁当を食べていた穂花(口数が少なめなのもそれが理由)が弁当箱をまとめるのを待っている間に、高木が華奢なおとがいに人差し指を当てて斜め上に視線を送った。そんな動作でもなまめかしく見える俺は思春期ですかねー。
「皆、明日って空いてる?」と高木。
「俺はだいじょーぶだけど」と俺。
「僕も平気だよ」と碓氷。
「私も平気です」と穂花。
「あ、ごっめーん私パス」とは耀。
……意外だ。
「何かあんのか?」
「んー? 気になるぅ?」
訊ねた俺に、いやらしく上目遣いで茶化してきた耀だが、まあ大抵こういう反応の場合は誤魔化したい時だと知っている。そっとしておこう。
「いんや別に。――それで? 高木プレゼンツ明日の予定は?」
「そうだなぁ、詳しいことは明日話すよ。とりあえず明日の1時、いつもの広場の時計台集合ってことで」
珍しく、さらっと濁された。何があんのかねぇ、楽しみだなっと。
「あ、もうチャイムなるぞ」
なんの気なしに見た腕時計は1時8分を指していた。チャイムが鳴るのは10分。ついでに二年生の教室は三階だ。
「だーいじょうぶでしょ」
指定席らしい俺の横に並んで「ふへへ」と声を出した耀の様子は、別段いつもと変わっている訳ではなかった。
まあ、気のせいだろ。
何となく不参加の理由が気になったけど、いつもと同じ。踏み込むことはしない。
少し急いで教室に戻った俺たちは、明日に思いを馳せていて午後の授業など聞いちゃいなかった。
【続く】
何はともあれお粗末様でした。
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