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ろぎーと奇怪な仲間たち  作者: 黒白紫苑
始まりの話
2/15

ろぎーと授業(の合間の小休止的休み時間のお話)

 登場人物紹介的2話目



 ~サブタイが長いのは仕様です~


言葉ことは、遅かったじゃん」

 教室に着くなり、後ろの席の男が声を掛けてきた。

 男、名前は山田大和やまだやまと。俺の友人関係において、唯一と言っていい“普通人”である。

「今日も耀あかるちゃんと登校っスかー、羨ましいぜこんにゃろめ」

「大和だって彼女いるじゃん」

 そう、まさかのこやつ、彼女持ちだ。しかも結構かわいい。顔も成績も平均ど真ん中のくせに。特徴とかあんまりないくせに。あっさりした顔とキャラが受けたのかな。く、悔しくなんか……いや、正直かなり悔しい。素直が一番だ。

「いやぁ、香菜は違うガッコだしさー」

 とか言いながら、顔がメチャクチャ緩んでる。へらへらしてる。うっわむかつくわー。

 むかつくから、思いっきり肩パンした。

「いって、ちょ、なんだよっ」

 ガス。ガス。ガス。ガス……

「ちょい、マジで痛い! 痛いって! 力加減忘れてますって言葉さん!」

「リア充に加減などいらん」

 も一発殴った。力みすぎてゴス、と鈍い音がして、かなり痛そうな感触だった。

「いってぇええ! おまマジいい加減にしろよ! 言葉だって鏑木かぶらぎさんがいるだろッ」

「う、いや、アイツはあれだろ。ほらなんつーか、なぁ」

 そういえば、今日は穂花ほのかからの熱烈な朝の挨拶がないな。と思った刹那! その時俺に電流走る……ッ!

「ろぎーさぁん! おっはようございまーうぐッ!?」

 後ろから誰かが迫ってくる気配がしたので、咄嗟に飛び退いたら穂花だった。抱きつこうとしてたらしい。空振りした勢いのまま、大和の机に突貫してた。

「とわっ! だ、ダイジョブっすか鏑木さん!?」

 ダイジョブっすか鏑木さん!? じゃねぇよ。お前が咄嗟に机を反対から押さえたせいで穂花のダメージ2倍だよ。どうせなら古風のギャグ漫画ばりに2人で絡み合いながら転べばよかったのに。そして事故キスでもすればよかったのに。

 そうすれば脳内お花畑の穂花のことだし、俺から大和に鞍替えしたかもしれなかったのになー。

「うおーい、全部声に出てんゾー」

「え、マジで?」

 心の声がダダ漏れだったらしい。やべーやべー、気を付けないと。ってもう遅いか。

「もうっ、酷いですよろぎーさん。私そんな尻軽じゃありません! こんな地味男なんかに惚れるわけないじゃないですか! 事故キスなんかしたら殺菌消毒しますよっ」

 うわ、さらっと抉るなぁ。

「え、ヒドくない? 何気に鏑木さんすっげぇ毒吐いたよね? ねぇ?」

「えっと……」

 どうやら大和、かなり傷ついたっぽい。香菜ちゃんという彼女が居ながら、こいつ穂花のこと好きだからな。もちろんアイドル的な意味でだろうけど。

 実際、穂花はお世辞抜きにかわいいんだよなぁ。長い黒髪とか、赤いカチューシャも似合ってるし、顔も整ってる。まつ毛が長い。唇がぷっくりしていて美味しそう……主に性的な意味で。俺にカニバリズムの気はないっす。

 何よりスタイルがいい。耀と違って胸がでかい。身長もそこそこ、170センチ近かった気がする。足とかすらっと長くてモデル体型なんだよなー。くびれもエロい。

「あれ? 言葉くん? 今の流れは俺にテキトーな慰めを言ってー、俺がツッコミするところじゃないのかなー?」

 なんか大和が寂しそうな目で見上げてきた。ああ、そういえばそんな感じだったかもしれない。つーかなんで床に座り込んでんだ? ショックで椅子から滑り落ちたとかかな。

「ゴメン。忘れてたわ。てかどうでもいい」

「ど、どうでもいいとかゆーなよぉおお。ウサギは寂しいと死んじゃうんだぞぉぉおお!」

 叫んだに大和に、穂花がおとがいに指を添えて首を傾げた。

「大和さん、それ、迷信らしいですよ?」

「ま、マジで!? 大和、ショック!」

 きもい。かなり切実にきもい。男が1人称自分の名前とか……

「死ねばいいのに」

「え!? なんでっ!?」

 あ、また心の声が漏れた。まあいいか。本当に思ったことだし。

「ところでほのかー」

「あれ、スルーですかッ!?」

 うるさい。

「なんですかっ?」

 穂花は俺に話しかけられたのが嬉しいらしくて、声が弾んでる。

「次って何の授業だっけ」

「ええっと、確か数学ですよ!」

 数学……たっちーか。メンドイなぁ。声でかいんだよなあの先生。

 でもなぁ、数学はなぁ、苦手だからなぁ、授業受けなきゃヤバイよなぁ。

「な、大和」

「え、いきなりなに? 何なの!?」

 床に寝転んでグレてたから振ってやったのに、ノリの悪い奴だ。

「あ、ろぎーさん! 言い忘れてました!」

「ん? 何が?」

 突然穂花が騒ぎ出した。基本的に穂花は微笑んでやりとりを見守ってるタイプだが、時々暴走する。今もそうだった。

 すぅぅ、と息を吸って、はぁぁ、と吐いた。え、なんだ?

 身構えた俺に対して、ハッキリと明確に聞き間違えのないくらいしっかりと、

「好きです」

 そう言った。

 足元で大和がひゅうっと出来ない口笛を吹いてた。

 ああ、もう、なんつーか。

「あ、うん。知ってる」

 既に言われ慣れてるけど、恥ずかしいんだけど。素っ気なく返すのが精一杯なんだけど。なんなんだマジで。いい加減やめてくれ。絶対耳とか赤くなってるぞ俺、顔全体もあっついし。ああ、やな汗かいてきた。

「やっぱり、伝えるっていいですね!」

 とか爽やかに言ってるけど、お前、それいつでもどこでも気が向いたときに言ってたらありがたみないだろ。

 これだからラブリスト(自称)は。

「ふへへ、相変わらず愛されてるねーろぎー」

 きみー、みたいな発音で俺を呼んで茶化してきたのは確認しなくても耀だ。いいタイミングでトイレから帰ってきやがった。

「くっそーうらやまけしからんな。鏑木さんに告られるなんて!」

「黙れボケ。されるこっちは恥ずかしぃーんだよ」

 穂花はまあ、俺のことが好き、らしい。

 ある日、普通に遊んでいたら唐突に『ああやっぱり耐えられませんここはラブリストとしてぶつかるべきですよねっ! ろぎーさん好きです愛してます超、ラブですぅ!』と弾丸のように告白(?)されて、それ以降は好意を隠すこともなく真っ直ぐ好きですアピールしてくるんだが、正直、多感な高校生である俺には刺激が強すぎだ。展開がぶっ飛びすぎていまいち真剣に受け止められないし。

 正直、女友達が互いに好きだーって言ってるような、あんな感覚にしか捉えられない。

 そうしてラブリスト(自称)である穂花は突然、いきなり、脈絡なく俺に伝えてくるわけだ。『好きです』と。マジで恥ずかしい。この前なんか授業中に言われてクラス全体がざわめいた。うおお思い出したら羞恥がぶり返してきた!

「悶えてるねーふっへっへ」

 物凄く悪者っぽい笑いだ。

「お前人事だと思って――――」


 ――――キーンコーン……カーンコーン……


 無い胸を張った耀の頭をぐわんぐわん揺らしてやろうと思ったのだが、いいタイミングでチャイムが鳴ってしまった。古風な音のチャイムである。

「おらー席着けー」

 しかも数学のたっちーこと立川が速攻入ってきた。仕方ない、頭部揺すりの刑を執行するのは後にしてやる……

 斜め後ろの席で耀が「ふへへ」と笑ったのが聞こえた。くっ、ムカツク……ッ!

 耀への怒りをエネルギーに、数学の時間を寝ないで過ごしたのであった。


  ✽ ✽


「うやあああああああ気持ち悪いぐわぐわする三半規管が死ぬぅうう」

「ふははー思い知れー」

 授業が終わったと同時に耀の頭をぐるんぐるん回した。耀は三半規管が弱いので、頭部揺すりの刑はかなり効果的なのだー。

「ふははー」

「おぉう……本当に吐きそう……」

 手を離して高笑いしてやっても、机に突っ伏して反応してこない。これは大ダメージを与えたな!

「相っ変わらず仲いいっスなぁ」

 隣で見てた大和がしみじみ呟いた。

「戦艦、見てたんなら助けてよぉ」

 戦艦ってのは大和のあだ名だ。耀いがいは誰も使ってないけど。てゆうか大和の方がみじけぇじゃん。意味ねー。

「いやぁ、困ってる耀ちゃんなんて珍しいんで、つい」

「つい、じゃないっすよ童貞早漏やろーめ」

「ど、童貞ちゃうわ!」

「え、お前もう香菜ちゃんとしちゃってるの?」

 なんかショックなんだけど。

「そりゃあ、清く健全な男女の仲ですから?」

「マジっすか」

 言葉、ショック! とかやろうかと思ったけど、それは大和のキャラだから止めとこ。同レベルに見られたくないし。

「つーか耀、ダイジョブか? ずいぶん静かだけど」

「うるへー、頭ぐわぐわ痛いんだよぅ」

「……だいぶ効いたみたいだな」

 やりすぎたか、反省反省。次からはヘドバン的縦運動だけにしておこう。

「そういえば、今日はやけに静かだな?」

 思えばクラス全体が比較的うるさくない。そしていつもは嬉々として寄ってくるアイツもいない。アイツというのは碓氷うすいのことだ。

「あ、居た。おーい影薄碓氷ー」

「僕はあんまり影薄くないと思うけどなぁ」

 声をかけると、微笑しながら顔を上げた。顔の周囲に光の粒子でも出てそうな美しい微笑だ。イケメン滅びろ。

 つーか、なにやってんだ? なんか必死に机に向かってたが。

「なんか今日は大人しくね?」

「うん? 忘れたの?」

「へ、何が」

 碓氷が微笑を微苦笑に変えた。

「今日、英語基礎の小テストだよ」

 うえ、忘れてた。

「クレバー川田の?」

「うん。クレバー川田の。あ、もう授業始まるね」

 げ、マジで!? 慌てて腕時計を見ると、10時48分。あと二分で授業が始まる。もちろん次の時間はクレバー川田先生の英語基礎だ。

「うわ、やっべ」

「ははは、ご愁傷さま、ろぎー」

「ろぎーゆーな」

 イケメンに俺をあだ名で呼ぶ権利はねぇ。様を付けろ様を。言葉様と呼べ。ってんなこと(脳内で)言ってる場合じゃなかった。

「なあ範囲ってどこ――――」


 ――――キーンコーン……カーンコーン……


 あ、チャイム鳴った。

「のおおおおっ!」

「はい、席に着いてー」

 しかも川田先生そっこー入ってきた! マジか! 終わった!

「虛木、何してんだ。早く席戻れ」

「あ、うっす」

 注意された。

「ろぎろぎ、私あたま痛くてしゅーちゅーできなぁい」

「俺は勉強してないから点数とれなぁい」

 くそう、耀とバカなことやってるんじゃなかった。

「じゃあ今日は小テストなー」

 そう言いながら配られてきたテストはことごとくなんにもまったくもって欠片も分からなかった。

 自分に、合掌。南無。

 当然ながら俺の小テストはほとんど白紙で回収された。



  【続く】

 何はともあれお粗末様でした。



 感想、ご意見、ご要望、何でも大歓迎です。


 お気に入りしてくれると作者が泣き叫んで喜びますです。

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