出会外。
デート開始的14話目。
サブタイは でえと と読みます。まさかの当て字!
※やや腐女子成分があります。マジでややです、っていうかほぼ無いです。
突然だが、デートに着ていく服に悩んだ事はあるだろうか。
俺はない。というか、無かった。
俺の今までの人生の中で、デートと言えば耀と一緒に適当に色々回ってだべるだけの、デートとは名ばかりの、ただ二人で出歩いているだけのものしかない。
あ、いや、他にもあったか。中学の頃――いや、この話はやめよう。悲しくなる。
他にも高木に強制的に荷物持ちとして呼ばれたこともあったが、あれを俺はデートとは認めない。たとえ二人きりだったとしても、だ。
という訳で、服装なんかには悩む必要がなかったのだ。
みんなで集まって遊ぶときは服に悩むのに、耀と二人で出かけるのには悩まないって、おかしいのか? でも俺あいつのことただの悪友だと思ってるからなぁ。
とにかく、だ。
俺は今日、この瞬間、ほとほと困っていた。
今日は、俺に向かっていつでもどこでも関係なしに「好きです」アピールをしてくる天然少女、鏑木 穂花との初デートの日なのだ。
うぅーん。何を着ていこうか。
正直、楽しみというよりも、不安の方が大きい俺だった。
✽
結局、服装はいつだったか高木プレゼンツ男衆を荷物持ちにして買い物しよう大作戦の日に着ていった服にした。一応、穂花からは「スタンダードで好き」という評価をいただいているからだ。もちろん、お世辞だろうが。
そういえばあの日は、耀のせいで散々だったな。不良二人から女の人を助けたり、不良を(文字通り)吹っ飛ばしたり、そのあと色々あったり……。
あの日の夜のことを思い出すと、未だに悶える。くっおぉ……やっぱあんなの俺のキャラじゃねぇ……。
しかも、次の日の不幸は中々酷いもんだったし……と考えながら30分ほど早く着いてしまった待ち合わせ場所で穂花を待っていた矢先。
「ろぎーさん。耀さんのこと考えてますね……」
後ろから、地の底から響くような声でそう言われて、俺は本気で心臓が止まるか飛び出るかするかと思った。
「ほ、穂花……!? そ、そんなまさか……ハハッ」
「怪しいですねっ。ろぎーさんは耀ちゃんのことが大好きですからっ!」
とりあえず声音がいつもの元気なものであることに安心しながら、俺は遺憾の意を示した。
「待て穂花。俺は別に耀のことは好きじゃないぞ」
「ええ、大好きなんですよねっ?」
「いや、違くてだな……」
「ああっ! ウルトラ好きなんですねっ!」
「話を聞けぇ!」
なんなんだ……なんでこんなにテンション高いんだ?
っと、危ない危ない、穂花のペースに乗せられて、俺の密かに考えていた計画を乱されるところだった。
とりあえず……っんん!
「その、似合ってて可愛いんじゃないか? その服」
「えっ……? そ、そうですかっ? そう言ってもらえると嬉しいです!」
第一関門、服を褒める。ミッションコンプリート!
穂花の今日の服は、白い花柄のワンピースの上に薄いピンクのカーディガン? ガウン? を羽織って、いつものカチューシャではなく花の髪飾りをしていた。
よく分からないが、結構気合入ってる気がする。
対する俺は……紺のTシャツに同色のパーカー。黒ズボン。オシャレ度ゼロ。
うっわ、やべぇ、不釣合い感ハンパない。
「あ、ろぎーさんはまたその格好なんですね! 嬉しいですっ!」
「……へ? はい?」
また、ってのは俺が前も同じ格好してたのを覚えてたんならおかしくないけど、嬉しいって変じゃないか?
「――? 言ったじゃないですか! スタンダードで好きだ、って! ろぎーさんは元がいいからそういうシンプルな服の方が私は好きです!」
「……ああ、そう。……ありがとう」
「いえいえっ!」
なんつーか、恋は盲目というか。
俺の元、つまり素材がイイだって? んなわけねーだろ。黒髪三白眼の中肉中背だぞ。
……悪い気はしないんだけどさ。
あー、ダメだ。
「どうにもペースを握られてるぜ……」
隣でルンルンしてる穂花には聞こえないように、俺は独りごちた。
✽
「何やってるんだよろぎー! 穂花は喜んでるけど全然リードできてないじゃないか」
「うーん、ねぇリンリン。私思うんだけどぉ、ろぎろぎに女の子をリードするのは無理だと思うよ? デートのとき、いっつも私が引っ張ってるもん」
「なっ!? そんなっ! 耀はもうろぎーとデートを!? くっ、僕でもまだしたことないのに……」
「いや、水代がしたことあったら問題だろ」
穂花と言葉がデートの待ち合わせに使った時計台の近くの茂みに、バカな学生四人が隠れてアホな会話を繰り広げていた。
「くっ、ここはやっぱり僕がろぎーをサポートするしか!」
「いや、てゆーか凛さんなんでそんなに燃えてるんスか」
「燃えてるんじゃない、萌えてるんだ!」
「よっ、流石ろぎほの萌え! 熱いねぇ」
「ろぎほのかぁ。どうせなら僕はろぎうす、いやうすろぎでやって欲しいなぁ」
「ろぎー×碓氷は私的には死んでもいいジャンルだよぉ。ここはあかろぎを押しますね」
「いや、耀ちゃんが攻めかよ!?」
「大和は死んでいい」
「「同感」」
「無意味に口撃されたっ!?」
「腐女子ワード全開の会話に参加できる時点で、死んでいいよねぇ」
「うぐっ……」
「え、僕は?」
「ぺらっぴはキモイ変態だからオーケーさっ!」
「そっか、安心したよ」
「どこに安心できる要素があったんだ!?」
「「「大和、うるさい空気読め」」」
「え、なんか、すいません……」
大和ではツッコミ力が足りず、実質ツッコミ不在の中、四人(主に三人)の会話はヒートアップし、とんでもないカオスの領域に到達していった。
✽
「さ、ろぎーさんっ、行きましょうっ」
「あ、ああ」
それはいいけど、ナチュラルに手を繋がないでくれ。ドキッとする。
そう言えば、勢いでデートすることになったから行く場所とか決めてないけど、どうするんだ?
ということおで訊いてみた。
「なあ、今日はどこに行くつもりなんだ?」
後ろの方から、なぜかこの場にいないはずの高木の声で「なんで君が考えてないんだよ!」と叫ばれた気がする。……? 幻聴か。
「んー、そうですねぇ」
おとがいに人差し指を添えて上をむいた穂花は、パァッと華やいだ微笑を俺に向けて。
「どこでもいいですっ! 私、ろぎーさんとならどこでも楽しめますからっ!」
うわぁ……。ハズカシイ。
「ラブホでも?」
恥ずかしすぎて、つい耀と接する時のようなシモネタを放ってしまった。やっべ。
っていうか、もしかしてこの発言の方がハズカシイのか? ああ、悪友(と書いて耀と読む)のせいで俺も感性が崩壊しているんだと改めて思い知った。
つーか、
「……ろ、ろぎーさんとなら、どこでも……///」
とか言うのやめろ。恥ずかしい上にツッコんでもらえないと悲しい。
「いや、冗談だから……」
「えっ?」
「いや、本気で悲しそうな顔すんなよ……対応に困るだろ……」
あーくそぉ……。
穂花と二人きりって、やりづれぇ……。
久しぶりに、耀の存在が欲しくなった。雰囲気ブレイカーとして。
……文句ばかりも言ってられない、というか文句を言うのは贅沢、か。
「とりあえず、モールでも行くか」
「はいっ」
こうなったら、精々楽しんでやるぜ!
【続く】
穂花と言葉のデートはどうなるのか、そして四人のストーキングの行方は――!?
誇張してすみません。そんな熱い展開にはなりません。
ちなみに前書きにも書きましたが、サブタイは でえと と読みます。まさかの当て字!
(大事なことなので二回言いました)