覚醒。
ヤンデレ(?)的13話目。
長らく更新してなくて……申し訳ありませんっ!
お詫びに今流行りのヤンデレ(?)要素を加えてみ……バカな、もう流行りは過ぎた、だと?
※若干ヤンデレ要素あります。ほんと若干です。あとヤンデレ好きの方、流行り終わったとか言ってすみません。
ショタ系転校生、犬童 紫がうちのクラスに転校してきてから、一週間が経った。
女子による休み時間の質問責めも一段落して、クラスにいつもの静かさが戻ってきて、俺はようやく落ち着いて休み時間を過ごせるようになった。
しかし、安寧と同時に、不快感も訪れた。
原因は一つ。
犬童 紫だ。
あの転校生様は、なぜか、ことあるごとに穂花を“借りて”いくのだ。利子つけて返せボケ。
つまり、この不快感は、俺たちの、いや俺の平穏を転校生という侵略者に犯されていることから来ているのだ。
……俺、意外に束縛するタイプなのかなぁ。耀の時もそうだったけど、俺って結構独占欲強いんだよな。
「やっべぇぜ耀、俺、実はエスだったかも」
「男に対しては確実にそうだねぃ」
「ああ、お前に対しても、な」
ふざけたことを抜かしたので、訂正しておいた。
あれ? 訂正になってない?
「えへっ、ろぎろぎになら……いいよ」
「ロウソク飲ますぞ馬鹿」
「せめて垂らしてよぉ」
どこにだよドアホ。
「舌か、下?」
「お前が俺の思考を読んだことも驚きだが、お前のセリフが漢字で脳内変換できたことに驚いたわ。そして馬鹿なこと言ってんな」
「冷静に長いツッコミお疲れ様」
犬童と穂花を観察(監視?)しながらいつもの様に耀と馬鹿話をしていると、後ろからツヤのある声が聞こえてきた。
「高木、お前ってトイレどっち入んの?」
「トイレから帰ってきた瞬間にそれ訊くんだ。行く前に訊いてくれれば一緒にイこ? って誘ったのに」
あははバカ言え。お前ぜっったい女子トイレ入るだろ。あとエロイ。耀と違ってエロネタが普通にエロイ。そんな高木は僕っ娘なのか男の娘なのか、深淵の謎だ。
――しかし、
「あの二人は何話してんだろーなー……」
あの二人ってのは犬童と穂花だ。めちゃくちゃ気になる。
「ってことで大和、お前盗み聞きしてこい」
「んぐぐ!? んーんー! んんん!!」
「あ? お前何で猿轡噛まされてる演技してるんだよ」
「んー! んんー! んぐぐぐぐ!!」
「あ、ゴメンね戦艦。猿轡よりパンツが良かった?」
犯人お前か。てっきり大和が構ってもらえなさすぎて猿轡噛まされてるふりしてるのかと。っていうかなぜお前は猿轡なんて持ってるんだ耀。
「……なぁ高木ー、お前なら盗み聞きくらい余裕だろ?」
「報酬を払ってもらえないと僕の忍者スキルは使えないよ」
「忍者!? お前、まさか伊賀の……!?」
「ううん。木〇葉隠れ」
「ナ〇ト!?」
「うわぁああ!! お前らスルースキル高すぎだチクショぉぉおおお!!」
全力で大和を無視して高木との会話を楽しんでいたら、全力で泣き叫ばれた。うるせぇ。
「っていうかなんで解放されてんだ。やっぱ演技だったのか」
「ふへへ。猿轡されて無言で泣いてるの見たら、可哀想になっちゃって……」
「おま、自分でやっといて……」
なんてアホな茶番を続けていると、犬童と穂花のおしゃべりが終了して、穂花がこっちに来た。
「すみませんお待たせしちゃって」
「いや、いいよ」
穂花の言葉にいつもの勢いがないのは、気のせい、じゃないよな。
お疲れ様。
「やーやーほののん! お疲れ様! ささっ、ここ座って! 胸揉んであげるから!」
「むしろ私が揉んであげましょうか?」
「ちっぱいゆーな!」
言ってねぇだろ。
「まぁまぁ穂花。何なら全身くまなくマッサージしてあげるよ?」
「服を剥かない、ローションを使わない、医学的に意味のあるマッサージしかしない、というのを守ってくれるなら、お願いします凛ちゃん」
高木が穂花をマッサージだと!? と上がったテンションは穂花の物凄くローテンションな雰囲気に当てられて萎んでしまった。大和も残念そうだ。
しかし! 我らが高木サマはこの程度では怯まない!
「知ってる? 穂花。性的なマッサージってキチンと医学的にリラックス効果があるんだよ?」
ニッコリ、と物凄くいい笑顔でエロイことを言う高木サマ。一生ついていきます。
「凛ちゃん?」
「……ホントだよ?」
「り・ん・ちゃ・ん?」
「………………」
しかし、しかし……今日の穂花は一味違った。っていうか誰だお前。そんな笑顔の後ろにはんにゃ面が浮くような女子、俺は高木以外に知らないぞ……!? しかもあの高木ですら目をそらすほどの迫力……。
穂花、お前、今俺の中で『実は一番変人かもしれない人第一位』に加えて『実は一番怖いかもしれない人第一位』にも輝いたぞ。真っ黒に。
「あ、ろぎーさんっ!」
「は、はい!?」
やべ、思わず敬語に。
「……好きです」
「……うっ」
しっとりバージョン……だと……!?
これは、破壊力が高すぎる……っ!
「言葉……俺、久しぶりに本気の殺意覚えちまったよ……」
「黙れ彼女持ち」
「ろぎー、僕、今ちょっと恥ずかしい」
「安心しろ、俺もだ」
「ろぎろぎ、明日デートしよっ♥」
「勘弁してくださいっ!」
なんだこの空気。いつも以上にカオスだぞ。若干一名(意外にも大和)を除いて、全員軽く赤面してる。
「耀さん。私、最近気づいたんです。恋の障害って、壊すためにあるんだ、って」
ひぃ! ほ、穂花の殺気が! 耀に向いてるはずの殺気が俺にも向いている!
「ごめんなさい! どうか命だけは!」
軽く涙目で耀が土下座している。珍しい光景だ。気持ちはよくわかるが。俺も今脅されたらコンマ一秒でゲザー(土下座する人)になれる自信がある。
「ろぎーさん……」
「は……はい……」
こ、こわ……。
「耀さんと、デートなんて、しないですよね……」
「……も、もちろんじゃないですか」
「じゃあ――」
怯える俺の目の前で、穂花の空気が一瞬でパァッと華やいだ。穂花が、ニッコリと笑って、手を握ってくる。
「私と、明日、デートしてください!」
「…………は」
はい?
マジで?
「言葉……お前って奴はぁぁああ!!」
足元で(高木が拘束したから)這いつくばっている大和が叫んだが、それに言葉(俺の名前じゃない方)を返す余裕もない。
やっべ……。
穂花にデート誘われたの、何気に初めてじゃん……。
【続く】
※ここの定型文は今回から不規則になります※
次回……穂花とデート……ッ!