疑問。
新章突入的10話目。
サブタイの形式は、各章ごとに変わるのです。
突然だが、
「突然だけど、なんでろぎーってカノジョ居ないんだろうね」
「…………」
俺の恒例の挨拶が、最近は遮られ気味な気がするぜぇー。
「ね?」
しつこい。
「なんで耀はモテないんだろーなー」
「失敬な。ロリコンにはモテるもん」
ぷんぷん、って言いながら両手を頭の上でぴょこぴょこさせてニマニマ笑っている。超絶に意味が分からん。
しかし、俺になぜ彼女いないのか、か。
うぅん。うぅーん。ううぅーん。
「クラスの女子が変なんじゃね」
俺が考えた末に至った正解は、それだった。
「否定は出来ないねぇー」
出来ないらしい。ちなみに今は、俺が耀の家に遊びにきている。部屋には二人きり。それでこの話題は狙ってるんだろーなー。この程度で勘違いするほど、俺は初心じゃねぇぞこのやろー。
「でもでも! ろぎーにはほののんが居るからいいよね!」
「何がだ」
どこもよくない。確かに穂花は俺に好きだとか愛してるとか言うとるが、俺はそれを真剣に受け止めれてないんだから、戯れと同じだっちゅーの。
つーか、付き合うなら普段のメンバー以外にして欲しい。もっと言ったら同じ高校の女子は嫌だ。変人ばかりだ。全身包帯まきまきな女の子とかばっかりだし。容姿のレベルは高いのになー。もったいないなー。わが校は残念な美少女ばかりなのだ。
俺的には残念美少女の筆頭だと思っている(もちろん本人には言わない。喜ぶから)耀はにひにひ笑っている。これは、まだ何かリアクションを期待してるのだろうか。
うぅーん。まあ、じゃあちょっと真剣に考えてみるか。
「ぶっちゃけ、だ。穂花は可愛い」
「うん。そうだねぇ」
耀が頷く。まだ笑顔だ。
「あとスタイルもいい」
「うんうん」
表情は変わらず。でもちょっと身を乗り出してきている。
「頭もいいし、性格も『あれ』以外は問題ない」
あれ、というのはどこでもいつでも愛を伝えてくるあれだ。
「ふにゅふにゅ」
期待に顔を輝かせている。これってどっちを望んでんだ? 分かんないので素直に行こう。
「けどやっぱ付き合うのはないわぁー」
「えぇー!? ここまで来て!? そりゃないよろぎー!」
大げさに驚かれた。予想してただろうに。演技力は俺たちの中でもダントツな耀がやると、本当に驚いてるように見える。
「まあおフザケはナシにしてさ。どうしてほののんはないの?」
「どうして、って……」
どうしてだろう?
穂花を女として見れないか、と問われれば、見れる。性的興奮を覚えるか、と聞かれれば、覚える。けど、何かなぁ。何か、よく分からんが拒絶反応があるんだよなぁ。
「わっかんね」
もう考えるのが面倒だ。俺は耀のベットに寝転がって目を閉じた。
耀が「ちょっとろぎー私の匂いが染み付いた」うんぬんと言ってたが、気にしないで寝た。
✽
「ろぎーさんっ。お早うございますっ」
「んあ?」
机に突っ伏して寝ていた俺は、穂花の明るい声で起こされた。
「もう授業は終わりましたよっ」
ああ、そっか。さっきは現代文の時間で、寝ちまってたのか。自習だから問題は無いだろう。
「起こしてくれてサンキュ」
「いえいえっ」
お礼を言うと、穂花はにっこりと笑う。不意に数日前の耀との会話が思い出された。
『どうしてほののんはないの?』、か。改めて本人を見ても、よく分からん。頭に居座るモヤのような疑問に促されて、穂花をじぃっと見つめる。正解を探すように見つめ続けていると、穂花が顔を真っ赤に赤らめて視線を逸らしてしまった。
「あ、あのっ、そんなに見つめられると恥ずかしいですっ」
「え、ああ」
なんかデジャブを感じたが、気のせいだろう。
それより、穂花が照れてる姿って意外に珍しい。普段は恥って言葉を知らないんじゃないかってくらい真正面から『好き』とか言ってくるからな。
なんとなく得した気分になって、自然と顔が綻んだ。
「おいおい言葉さんよ。なにいい雰囲気になってるんですかー?」
……そりゃあんまりにも無粋だぜ、大和よ。
「妬いてんのか」
「ちっげーよ! 悔しんでるんだよ!」
意味変わんねぇだろ。
「お前そろそろ香菜ちゃんに報告すんぞこら」
香菜ちゃんとは大和の彼女で、結構かわいい。何気に、俺も仲がいいのでメアドも持っている。ただ、あの子もちょっと変わってんだよなぁ。体の一部が欠損しているぬいぐるみが大好きらしい。感性が怖すぎる。
「いや、ちょっと待った。それはナシで頼む。マジで。このとーり!」
慌てたように大和が拝み倒してくる。香菜ちゃん、けっこー嫉妬深いし気にするタイプだもんな。大和の一部が欠損させられかねん。
なので妥協案を出した。
「ゲーム一本で手を打とう」
「いや高いっす! 流石にゲームは高いっすぅ!」
「ろぎーさんっ。お寿司とかどうですかっ?」
穂花が情けのない提案をしてきた。その話、乗った!
「いいねぇ。俺エンガワとか好きなんだよな」
「いやいやいや! お寿司って、なんで今その話してんすか!? もしかしてあれですか、俺が奢る的なノリですか!」
「そうですけどっ?」
「うん」
「むりぃぃいい! ぜっっっったい無理だからな!」
大和が絶叫した。うるせぇ。
「んじゃ報告で」
「勘弁っ!」
ザッ、と地面に正座して、大和が土下座の準備姿勢になった。その時。
「面白そうな話をしてるね。ろぎー?」
「あ、高木」
絶対に狙ったタイミングで高木が来た。大和の表情に、絶望の色が浮かんだ。どういう訳か、大和は高木に弱い。何か弱みでも握られてるんだろうか。
「り、りりり凛さん……っ!? お、面白そうというのはッ」
「ん? 山田の奢りでお寿司屋さんに行くって話でしょ? 面白そうだね」
悪魔のような小悪魔笑顔になっている。可愛いいしエロいけど怖い。高木はそんな、男の娘あるいは女子だ。未だに表現に困る。もう性別は高木でいいか。
「まあでも、山田みたいな小物にそんな懐の広さがあるとは思えないし――」
考えるようにおとがいに指を添えた高木に、大和が安堵の息を漏らした。おいおい大和。
高木がそんなに甘いわけないだろ?
案の定、高木はにこりと慈愛の女神もびっくりな微笑みを浮べた。
「僕たち全員分のマッ〇でいいよ」
そう言った高木の後ろには、机に腰掛けて手を振る耀と、哀れむように眉を下げた笑顔を浮かべる碓氷がいた。つまり、俺たち五人分の〇ックを奢れと言っているわけか。
鬼だな。
「…………………………」
絶句して開いた口が塞がらないどころか顎が外れそうな大和に、流石に同情の念を覚えた。
ご愁傷さまです。アンド、ゴチになります。
【続く】
何はともあれお粗末様でした。
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