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第一話 ナツヒとの遭遇④

◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆


引っ張られて、引っ張られて引っ張られて、ようやく到着したらしい。

 計30分超の苦行だった。

 え?学校? ……諦めたよ。一回休んだ程度で単位が貰えないわけじゃないが、だからといってわざわざサボる必要もなかった。激しく鬱だ。今日は出席点が割と重要な英語があったのに……。代変のメールはさっき打ったけど明日聞かれるであろう質問どうしろと?


 それは置いておいとくとして、だ。いや置いておきたくはないんだが。

 ……ここって、今朝の新聞に『UFO墜落予想現場』って書いてあった裏山、だよな?


 いや、偶然だ、そうに違いない。二つの物事が連続して起こったからといって、そこに因果関係があるとは限らない。冷静に考えよう。


自称・火星人が自宅に襲来

裏山に連行される

そこは今朝新聞に載っていた「UFO墜落予想現場」である


「怪しすぎるわ! 」

「ど、どうしました急に!? 」


 ドッキリか!? 新聞記事を含めて全部ドッキリなのか!? というかむしろドッキリであってくれ頼むから!


「着きましたよ」

「……ここ?」


 ナツヒが指差すその先には、何もなかった。




 ……不自然に焦げている周りの木々に目を瞑れば、の話だが。



 嫌な予感ゲージがすでにメーターを振り切っている。


「ここです」

「……それらしきものは何も見当たらないんだが?」

認識阻害(ステルス)のスイッチ入れてますから」

「認識阻害ぅ?」

「そうです。……スイッチ、オフ」


目の前に突然、銀色の金属光沢を放つ物体が現れる。

 ……円盤(フライング・ディスク)型って、いやいやいや。


「ベタすぎるだろ」


 なんか、急に冷静になれた。目の前に急に物体が現れたのに、冷静になれた。

 人間なにがきっかけになるかわからない。


「ベタをいくなら、あなたは何が起こったのか分からないまま私に光線銃(レイガン)で身体に穴を開けられ、絶命してしまう可哀想な第一発見者ですね」

「……キツいこと言うね」

「まあ、私は見ての通りタコではありませんので、ご安心ください」

「ウサミミだもんな」

「これはUSaMiMIです」

「ウサミミなんだろ?」

「USaMiMIです」

「……ごめん、解説よろしく。頭使うの面倒になってきた」

「これは

Ubiquitous

Saturated

Micro

Machinery

Instrument

 略してUSaMiMIです。これは身分証明書かつ携帯電話かつリモコンみたいなものでして、まず火星人一人ひとりに固有のUSaMiMIが与えられます。これはそれぞれ違った波を出しているので身分証明になり、またその波を用いることで遠方の相手ともコンタクトがとれるから携帯電話になります。また最近のアップデートで電化製品全般を操作出来るようになりました。そもそもこのUSaMiMIはかの天才ジョーガ博士によって考案、発明されたものでありまして」

「いや、そこまでで十分だから。そんな歴史とか興味ないから」

「えー、ここから笑いあり、涙ありの一大スペクタルが展開されるのですよ!?興味湧きませんか!?」

「ああ、興味ないな」

「………」


 あ、拗ねた。説明の時、饒舌になったから何かと思ったが、説明好きなんだな、こいつ。


「まあ、話を戻すとしまして。信じていただけましたか?」


 ……ドッキリ成功の看板はまだか。まだなのか。思わずキョロキョロ。


「何してるんです?」

「いや、看板をだな……」

「看板?」


 すげー不思議そうな顔された。

 すでに諦めの境地に達しそうだが諦めるな俺。


「もう少し証拠がほしいな」

「どんなものを見せれば納得していただけますかね? 」

「逆にに聞くけど、あとどんなものがあるんだ? 」

「あとあるのは……キャベツの千切りもできるおろし器に、真ん中が赤いフライパンに……」

「……通販で買っただろ、間違いなく」

「ええ、そうなんですよ。あとは……原子変換装置くらいですかね」

「さらりと言うなさらりと。最後のなんだよ最後の! 」

「え? 地球にはないんですか、これ?」

「無いよ! 少なくとも俺の知る限りじゃ! 」

「じゃ、これ証拠でいいですね。さっそく使ってみましょう」


 10分後


「……錬金術ってレベルじゃないだろ」

「どんなものですか」

 マジで土から金出来ましたよ。金本位制の危機だよ。今違うけどさ。

 原理はこいつも知らないそうだ。何でも一企業が独占販売。中身はブラックボックスなんだと。残念だ。


こうなってくると俺の家に侵入した時も認識阻害を使用したと考えられるな。つまり、それだけ小型で持ち運びの出来るものがあるということだ。

 そもそもここまで見事な光学迷彩はまだ出来て……いないよな?俺が知らないだけ、なんて話じゃないよな?今ある情報から考えると……。

 ……未だに大がかりな手品の類と考えることも出来るが……。


「……認めるよ。少なくとも地球外から来たということは」

「よし、勝った」

「勝負だったんか」

「優勝商品はお泊り券だと聞いているのですが?」

「誰がいつそんな取り決めしたよ」

「私がついさっき決めました」

「清々しいまでに自己中心的だな」

「死活問題ですので」

「泊めた時のメリット、デメリット」

「お、その気になりましたか?」

「条件による」

「メリットは私が火星の話をたくさん話します」


 ……まあ、おもしろそう……ではあるな。

 いやいや、流されるなよ、俺。


「デメリットは?」

「エンゲル係数が」

「ありがとうございましたまたのご利用はお待ちしておりません」

「びっくりするくらいの反応で拒否しないでください!」

「死活問題だからな」

「くぬぅ」


うん、家でもいったけどそんな余裕はない。お金が全く無いってわけではないけど。いくらかは趣味に使ってるし。

 あとその顔は女の子としてどうかと思う。

 俺は親の仇か。


「……こうなったら最後の手段です」

「……嫌な予感がしてならないんだが、聞こう。その手段を」


 どうも俺の生命の危機な気がしてならない。予感が外れますように。

 だが往々にしてこの手の予感は当たるものでありまして。


「『あなたに襲われました』って交番に駆け込みますよ」

「冤罪による社会的抹殺手段キター!」


 ……テンション上げてる場合じゃない。

 洒落にならない手札(カード)を相手が切ってきた以上、こちらも何か対策を講じなければ。


「あ、あと10秒で決めてくださいね」

「鬼かお前は!」

「いいえ、火星人です」


ああ、あのどや顔をギャフンと言わせたい。考えろ、考えるんだ!この場面を逆転する一手を!

 このままじゃ、


 泊まるのを拒否する→警察の御用になる


 泊まるのを許可する→周りの人に万一見つかる→変態(ロリコン)のレッテルを貼られる


 の二択なようで結果はほとんど変わらない選択肢を選ばなければならないことになるぞ!


「はい、時間です」

「え゛」

「モノローグ中は時間が流れないとでも思ったんですか?」

「そういうメタな発言は謹んでくれませんかね!?」

「それはそうとしまして。結論をどうぞ」

「………はぁ。何で俺だったんだ」

「私の火星人的勘」

「……理不尽もここまで極めると、いっそ清々しいな」


 ……諦めよう。

 結論。全力で隠蔽。

 少なくともご近所の噂にならないように。

 これしかない、というよりはこれしか浮かばない。

 ……激しく行き当たりばったりな気がするが仕方がない。厄介なのに目を付けられたとしか言いようが無いな、本当に。


「いいよ、分かった。俺の負けだ」

「よっしゃ二連勝!じゃあ帰るまでの間ですが、よろしくお願いします。……えーっと」

「蛍火圭介だ。好きに呼んでくれ」

「ナツヒといいます。よろしくお願いしますね、圭介さん」

「……俺としてはあまりよろしくしたくないんだが……」

「む、まだそんな事言いますか。そんなんだから彼女居ない暦=年齢なんですよ」

「激しく余計なお世話じゃ!」


……早くも後悔してきた……。いや、でも他に手が浮かばなかったんだ、しょうがないじゃないか。


 いや違うな。正確にはそもそも途中から断るという選択肢が頭の中から消えていた。


 まるで思考そのものを弄られたかのようだ。


「ブツブツと何を言ってるんですか?……あ、もしかしてフランケンシュタイナーよりも神田地獄の方が好きでしたか?」

「今更そんなところに突っ込みは入れん!あと競技が急に腕相撲になったな、おい」

「突っ込み巧いんですね、ボケがいがあります」

「……俺としては何故そんなにも地球について知っているのか気になるのだが」

「その話は追々話しますよ」

「………はぁ」


 どのみちこいつとはしばらくの付き合いになりそうだ。さっさと他のことを考えるか。

 

 こうして『俺』蛍火圭介と、『火星人』ナツヒとの第三種接近遭遇は、俺が一方的な被害を受ける形で終わった。


 初めましてのかた、初めまして。他の作品を知っているかた、いつもありがとうございます。

 作者のオルメスです。

 このたび、オリジナル小説を書きはじめました。

 遅筆かつ駄文ですが最後までお付き合いいただければ、一素人作家として無上の喜びを感じます。

 どうぞ、よろしくお願いいたします。

 ……なんと本文に比べ堅苦しい後書きか。我ながら。

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