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プロローグ

「『この物語はフィクションです。実在する人物、団体等には一切関係ありません』……?圭介さん、郵便受けに何か変な紙が入ってたんですけど?」

「どれどれ。……中々に洒落てる投げ込みチラシだな、おい。新手の新興宗教かよ?」

「『新手の新興宗教』って表現は『頭痛が痛い』に通じるものがありますよね!」

「そんなのを世紀の大発見みたく言われても反応に困るんだが」

 季節は、秋。爽やかなこの季節、世間では「スポーツの秋」「芸術の秋」、はたまた「食欲の秋」などといって楽しくすごすのであろう。

 ……俺もそんな世間の仲間に入りたかった。

 当たり前の日常を羨む俺の現状はというと、困惑の一言につきる。……困惑?自分で言っておいて何だが、そんな生ぬるいものではない。明らかに脳の処理限界を超えている。


「(どうしてこんなことに……。神よ、俺はそんなに日頃の行いが悪かったのだろうか?)」


もう一度言おう。

 俺、蛍火(ほたるび)圭介(けいすけ)は困惑していた。

 今まで信じたことのない神を恨むほど、その困惑はひどいものだ。

 ……また自分で困惑とか言ってるな。

 何を言ってるんだお前状態の思考を一度消去し目の前の現実を見ようとし……。


「……はぁ」


 思わず嘆息。


「どうしたんですか?ため息なんかつかれて?ため息をつくと幸せが逃げていきますよ?」

「大丈夫だ。幸せなら絶賛逃亡中だから。すでに閑古鳥が鳴くくらい伽藍堂だから」

「そうですか。それなら安心ですね。もう逃げるほどいないんですから」

「……誰のせいだ、誰の」

「少なくとも私のせいではありませんよね?」

「逆にお前以外の原因言ってみろよ」

「うーんと。季節の変わり目だから、ですか?」

「……はぁ」

「どうした「無限ループは勘弁してくれませんかね!?」……そうですか。残念です」



俺の目の前では、『見た目は中学生くらいの』、『ウサギの耳のようなものが頭に生えた』、『火星人(自称)』が、『特に苦労している様子もなく箸を使い、和食を食べて』いた。……なぜ箸が使えるのか、などと言った疑問は最早抱かないようにしている。 他の突っ込み所も以下同文。


「……口にするの何回目か分かんないけど、月に帰ってくれないかな、本当に」

「確か四回目ですけど、帰りたくても帰れないんです!あと私は火星人です!帰るなら火星ですよ!」


 ああ、分かっているとも。

 これが現実で、しばらくは受け入れなければならないということも。

 ……それにしても。


「(……本当に、俺が何をしたというんだ……)」


 どこで選択肢を間違えたのだろうか。それとも回避不可能なイベントだったのか。

俺は再び嘆息した。

 そして、無駄なことと思いつつも、余りに長かった今日という日を思い出し始めた。


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