EPISODE 24 撃光
その拳は強化されていた。
まるで鋼のように、強く、硬く、しなやかに。赤く燃える拳を得て、クロベコは戦士としての格を上げたように思う。
星太郎は天使の拳を腕でガードして、右のフックを叩きつける。
天使はそを躱し頭突きをくらわせる。
腕を払い合い、取っつかみ合い、頭突き合う。
「目を覚ますんだ、あんたはまだ哀しみを覚えている!」
「だからつらいんだ! かなえられない夢など妄想と変わらん」
「叶えるから夢だろ! 叶えるさ‥‥‥俺は‥‥‥!」
天使はその腹を蹴り上げる。橋の上に乗り上げる。
「何度でも立つぞ‥‥‥俺は!」
「だから俺が来たんだ!」
「だったらわかるだろ! 俺はあきらめない!」
「うるさい!」
「うるさくない!」
天使は水面を蹴り、その顔面に拳を叩き入れた。正面から受け入れ、かわりに横腹に膝を叩き入れる。
宇宙色の閃光が走り、顔面に威力が底上げされた拳がめり込んだ。それを受け止め、踏ん張りをつけながら顎を殴り上げた。
「ぐわーっ」
「こんな事をしても、なににもならないんだ」
「なる」
「ならない! ‥‥‥だから終わりにする」
天使の油機が砕けた。
「二十四」
◆
クソみたいにごちゃごちゃした盛岡の清掃をする。
すると、「黒いのは人類の味方らしいぞ」というような話が広がった。「めっちゃ疲れた〜」とめっちゃ疲れた星太郎が言うと、駆けつけた雨音が飲水を渡した。
「おつかれさまです」
「どうも、ありがとう」
「なんだか雰囲気変わりましたね」
「そうかな」
「そうですよ」
「だといいな。‥‥‥両親のことを知ったんだ」
「あんまり仲良くないっていう‥‥‥」
「もう一組の方さ。俺は実は、四人いるんだ。親が」
その話をする。
「なんだか、星太郎さんの親、って感じの人たちですね」
「そうかな」
「はい」
「良かった。雨音くん、俺はもう間違えないことにした。俺は愛されて生まれてきたし、俺は愛されてここまで来た。それをちゃんと胸に刻んで生きていくことにする」
「僕も愛してます」
「俺も君を愛してる」
「よかった」
「‥‥‥でも、セキユは多分許してはならないことばかりをしてきた奴だ。これをきっちり終わらせたい。その後の話さ! ‥‥‥当初の予定通り、友達をたくさん作る。そして、楽しいことをたくさんする」
「旅行とか行きたいですね。スキーとか」
「福島にいきたいな、俺は」
「いいですね! 福島は魚がおいしいんです」
「楽しみだ」
そういう話が楽しかった。そうしていると、夕子がやってくる。
「君が最後に倒したあの天使な! 君に言伝だってよ」
「なんです?」
「セキユはなまじの力じゃ倒せない。せいぜい気をつけろ」
「ははは。‥‥‥そうか。なら安心だ」
「何故?」
「何故って? はは。変なことをお聞きなさる。ひとつ。俺にはあんた方がいる。ひとつ。いまはこんな事をしている場合じゃない。そして最後に‥‥‥岩手情緒は〝なまじ〟じゃない」




