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クロベコ  作者: 蟹谷梅次
〈前〉流星─METEOR─
24/28

EPISODE 24 撃光

 その拳は強化されていた。

 まるで鋼のように、強く、硬く、しなやかに。赤く燃える拳を得て、クロベコは戦士としての格を上げたように思う。

 星太郎は天使の拳を腕でガードして、右のフックを叩きつける。

 天使はそを躱し頭突きをくらわせる。

 腕を払い合い、取っつかみ合い、頭突き合う。


「目を覚ますんだ、あんたはまだ哀しみを覚えている!」

「だからつらいんだ! かなえられない夢など妄想と変わらん」

「叶えるから夢だろ! 叶えるさ‥‥‥俺は‥‥‥!」


 天使はその腹を蹴り上げる。橋の上に乗り上げる。


「何度でも立つぞ‥‥‥俺は!」

「だから俺が来たんだ!」

「だったらわかるだろ! 俺はあきらめない!」

「うるさい!」

「うるさくない!」


 天使は水面を蹴り、その顔面に拳を叩き入れた。正面から受け入れ、かわりに横腹に膝を叩き入れる。


 宇宙色の閃光が走り、顔面に威力が底上げされた拳がめり込んだ。それを受け止め、踏ん張りをつけながら顎を殴り上げた。


「ぐわーっ」

「こんな事をしても、なににもならないんだ」

「なる」

「ならない! ‥‥‥だから終わりにする」


 天使の油機が砕けた。


「二十四」



クソみたいにごちゃごちゃした盛岡の清掃をする。

すると、「黒いのは人類の味方らしいぞ」というような話が広がった。「めっちゃ疲れた〜」とめっちゃ疲れた星太郎が言うと、駆けつけた雨音が飲水を渡した。


「おつかれさまです」

「どうも、ありがとう」

「なんだか雰囲気変わりましたね」

「そうかな」

「そうですよ」

「だといいな。‥‥‥両親のことを知ったんだ」

「あんまり仲良くないっていう‥‥‥」

「もう一組の方さ。俺は実は、四人いるんだ。親が」


その話をする。


「なんだか、星太郎さんの親、って感じの人たちですね」

「そうかな」

「はい」

「良かった。雨音くん、俺はもう間違えないことにした。俺は愛されて生まれてきたし、俺は愛されてここまで来た。それをちゃんと胸に刻んで生きていくことにする」

「僕も愛してます」

「俺も君を愛してる」

「よかった」

「‥‥‥でも、セキユは多分許してはならないことばかりをしてきた奴だ。これをきっちり終わらせたい。その後の話さ! ‥‥‥当初の予定通り、友達をたくさん作る。そして、楽しいことをたくさんする」

「旅行とか行きたいですね。スキーとか」

「福島にいきたいな、俺は」

「いいですね! 福島は魚がおいしいんです」

「楽しみだ」


そういう話が楽しかった。そうしていると、夕子がやってくる。


「君が最後に倒したあの天使な! 君に言伝だってよ」

「なんです?」

「セキユはなまじの力じゃ倒せない。せいぜい気をつけろ」

「ははは。‥‥‥そうか。なら安心だ」

「何故?」

「何故って? はは。変なことをお聞きなさる。ひとつ。俺にはあんた方がいる。ひとつ。いまはこんな事をしている場合じゃない。そして最後に‥‥‥岩手情緒は〝なまじ〟じゃない」

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