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クロベコ  作者: 蟹谷梅次
〈前〉流星─METEOR─
19/28

EPISODE 19 転調

 八月九日。午前一時半。遠野市の山の管理者のもとにパトロールをしていた警官から電話が入った。山のなかの木々に、十人以上の子どもの遺体がぶら下がっていた。警察が調査した所、身寄りのない子どもだった。

 遺体が発見された現場に‥‥‥夕子に連れられて、星太郎はそこに来た。

 亡くなってしまった子どもの写真を見せられ、それを凝視する。


「天使は身寄りのない子供を使って、何らかの儀式を行っていたらしい。その儀式が何かは分からないけれど‥‥‥おかしな獣の声も聞いたと。それから、赤子が何十人もくっついたような、不気味な化け物の目撃情報もある」

「‥‥‥‥‥‥」


 天使というのは、こういう非情なことをやってしまえる。

 それを、改めてつきつけられた。


「天使は何処に!?」

「目撃情報や、浩二が作ったパルス受信レーダーの情報から追ってみたが‥‥‥人間に変わられた以上、追いかけられないわ。身寄りのない子供はまだまだいる。もし、そういう子供がターゲットになっているのだとしたら、厄介なことになった」

「‥‥‥‥‥‥」


 苦痛だけが、募っていく。


「俺が探します」

「できるの?」

「俺は‥‥‥クロベコだ。どうとでもなるはずだ‥‥‥」

「我々警察もレーダーフル稼働で天使を探る」

「変身時に発生する生体パルスの追跡だけじゃ敵わないところもありますので、いままで確保した元天使の身元を洗い、そもそも組織全体を暴いてやろうじゃないかという派閥もあります。彼らの力もいりますね」


 遠野市を中心にして、近隣の市町村に天使用の監視カメラを設置している。町中だけではなく、森林などにも。


 それをもとにして、動きを予測していく。


 夕子は寝ずにその作業を行っていた。そして、八月二十日。


 つねに生体パルス感知を再好感度にしながら生活をしていたせいで、星太郎の顔は険しかった。身体を鍛え上げながら‥‥‥あわよくばセキユの存在も感知してやろうと考えていたが、それらは一向に現れない。気が立っていた。サンドバッグを殴った所、大きく吹き飛んで、中身が弾け跳んだ。


「アッ‥‥‥わーっ! す、すいません! うっかりしてて!」

「いいんだいいんだ、失敗は誰にでもある」

「いや、ほんとうに‥‥‥」

「しかしすごいなぁ、滝! お前‥‥‥パンチだけでサンドバッグを破壊しちまうとは!」

「何か嫌なことでもあったか?」

「‥‥‥少し。理不尽に、人の命が奪われて‥‥‥それで、そのことが‥‥‥少し嫌なんです。今は、そんな事してる場合じゃないのに‥‥‥それなのに‥‥‥みんな、自分の事しか考えんのですよ」


 拳から血が‥‥‥流れ落ちて‥‥‥。


『そうだ‥‥‥子どもたちは‥‥‥苦痛を知らないで生きるべきだ。もう、幸せを願ってもいいんだ‥‥‥それなのに、天使だとか名乗っておいて、人を殺すばかりの‥‥‥一つ覚えの馬鹿どもは‥‥‥それを構わないで、殺して、殺して、殺してしまえる‥‥‥だから、許せない‥‥‥許せないんだ‥‥‥』


 それが、星太郎にとって‥‥‥何よりも許せない。

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