EPISODE 18 感情
アルバイトがあるのでさようなら、と。
星太郎が警察署を出たのは午後三時頃だった。
星太郎のアルバイト先はファミリーレストランだったが、最近の不幸があってからというもの、人の数は減っており、仕事も言い方が悪くなるが、汗のかく心配のないものだった。
そうしてボケーッと仕事をしていると、いつの間にか「君そろそろ帰りなさいね」と店長に言われ、ボケーッと帰る準備をして、ボケーッとした顔でクッソダサい青いバイクに跨る。
そうしていると、「アッ、滝くん」と声がかかる。
その声がした方を向いてみると、いつぞやのクラスメイト。
そして、その後ろにはなんと普段いじめてくる彼ら。
垂れかけていた前髪をかき上げながら、「どうもです」と会釈をして、発進しようとするとそれを停められる。「えーお前滝なの、信じらんねぇ」だとか「ステロイドかな?」だとかを言われる。しばらく言わせてから「君好みの顔になれたかな」と言ってみると、沈黙。図星だったらしい。
「ボクシングジムに通い始めたんですよ。才能自体はあったらしくて‥‥‥それで、短期間でここまで鍛えることができたんです。長田くん、君に似合う男になるためにですよ。はは」
身長も百八十センチメートル。筋肉質。整った顔立ち。それを自覚して、ちょっとしたやり返しをしている。彼も人顔である。
「それじゃあ、これから予定があるので」
「何処行くの?」
「病院です。一応身体の様子は見ておけってしつこく言われているんです。最近は怪我もたくさんしてましたし。その関係でね」
「そっか」
「はい。はは。それじゃあ」
城南総合病院に行き、主治医明信に会いに行く。
その結果、特に異常はなく、安心したが、明信は言う。
「しかしね、クロベコになるのはやはり危険だな。一歩道を外れれば、肉体を蝕む毒にもなる」
「気をつけて使うようにはしています。例えば、使う必要のない相手には使わないように、とか」
「最近は再生能力も上がってきて、怪我の心配も無いだろうが‥‥‥変に治ってしまう可能性もあるから、怪我をしたら治っても思い出したらでいいので、ここに来てくれないか?」
「はい。ありがとうございます」
そして、帰宅。両親とは会話もなく帰宅後すぐに眠りについた。
翌朝、目を覚ますとすぐにシャワーを浴びて、家を飛び出した。
清子はまた声をかける機会を失った。自分も部活動があるので、朝食を食べると、着替えて家を出た。食卓には手つかずの朝食が置いてあった。部室でテニスラケットをいじっていると、友人が「そういえば!」と声をかけてくる。
「セイちゃんのお兄さんって、最近彼女できたんだね!」
「エッ?」
「この前さ、親と一緒に歩いてると、お蕎麦屋さんから出てくるのが見えたんだよね。結構小柄だったけど、すんごい美人さん!セイちゃんのお兄さん最近かっこいいから、ああいう彼女ができるのってなんか納得できちゃうな〜。でもなんか悲しいね、実はちょっと気になってたんだよね、あの人優しいから」
「そ、そうなんだ‥‥‥」
すこし、モヤっとする。
はは:怒、哀、嘲笑
ははは:喜、楽、幸福




