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クロベコ  作者: 蟹谷梅次
〈前〉流星─METEOR─
18/28

EPISODE 18 感情

 アルバイトがあるのでさようなら、と。

 星太郎が警察署を出たのは午後三時頃だった。

 星太郎のアルバイト先はファミリーレストランだったが、最近の不幸があってからというもの、人の数は減っており、仕事も言い方が悪くなるが、汗のかく心配のないものだった。

 そうしてボケーッと仕事をしていると、いつの間にか「君そろそろ帰りなさいね」と店長に言われ、ボケーッと帰る準備をして、ボケーッとした顔でクッソダサい青いバイクに跨る。

 そうしていると、「アッ、滝くん」と声がかかる。

 その声がした方を向いてみると、いつぞやのクラスメイト。

 そして、その後ろにはなんと普段いじめてくる彼ら。


 垂れかけていた前髪をかき上げながら、「どうもです」と会釈をして、発進しようとするとそれを停められる。「えーお前滝なの、信じらんねぇ」だとか「ステロイドかな?」だとかを言われる。しばらく言わせてから「君好みの顔になれたかな」と言ってみると、沈黙。図星だったらしい。


「ボクシングジムに通い始めたんですよ。才能自体はあったらしくて‥‥‥それで、短期間でここまで鍛えることができたんです。長田くん、君に似合う男になるためにですよ。はは」


 身長も百八十センチメートル。筋肉質。整った顔立ち。それを自覚して、ちょっとしたやり返しをしている。彼も人顔である。


「それじゃあ、これから予定があるので」

「何処行くの?」

「病院です。一応身体の様子は見ておけってしつこく言われているんです。最近は怪我もたくさんしてましたし。その関係でね」

「そっか」

「はい。はは。それじゃあ」


 城南総合病院に行き、主治医明信に会いに行く。

 その結果、特に異常はなく、安心したが、明信は言う。


「しかしね、クロベコになるのはやはり危険だな。一歩道を外れれば、肉体を蝕む毒にもなる」

「気をつけて使うようにはしています。例えば、使う必要のない相手には使わないように、とか」

「最近は再生能力も上がってきて、怪我の心配も無いだろうが‥‥‥変に治ってしまう可能性もあるから、怪我をしたら治っても思い出したらでいいので、ここに来てくれないか?」

「はい。ありがとうございます」


 そして、帰宅。両親とは会話もなく帰宅後すぐに眠りについた。

 翌朝、目を覚ますとすぐにシャワーを浴びて、家を飛び出した。

 清子はまた声をかける機会を失った。自分も部活動があるので、朝食を食べると、着替えて家を出た。食卓には手つかずの朝食が置いてあった。部室でテニスラケットをいじっていると、友人が「そういえば!」と声をかけてくる。


「セイちゃんのお兄さんって、最近彼女できたんだね!」

「エッ?」

「この前さ、親と一緒に歩いてると、お蕎麦屋さんから出てくるのが見えたんだよね。結構小柄だったけど、すんごい美人さん!セイちゃんのお兄さん最近かっこいいから、ああいう彼女ができるのってなんか納得できちゃうな〜。でもなんか悲しいね、実はちょっと気になってたんだよね、あの人優しいから」

「そ、そうなんだ‥‥‥」


 すこし、モヤっとする。

はは:怒、哀、嘲笑


ははは:喜、楽、幸福

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