EPISODE 13 蕎麦
一応身体検査をするぞ!
うわ! 本当に無傷じゃねぇか!
君本当に最近傷の治りがヤバいね。
そりゃまあ、クロベコですんで。
‥‥‥‥‥‥。
という一幕を挟み、解放。
されると、ちょうど昼飯時というのも有って、盛岡の街並みには、学生が夏休みだろうとそんなものもお構いなしに平日なので寿命を削ってしまうサラリーマンたちが、午後も働くためのエネルギーのために、飯屋を求めてさまよい歩いている。
サラリーマンたちに感謝の敬礼ダイナマイトを見事キメながら、盛岡城跡公園(地元民は岩手公園と読んでいる。昔の名前だね。イオンに対するジャスコのようなもの)のすくそばにあった〈蕎麦処 高崎〉に入店。
筋肉質とホッソリのカップル入店により、店主の高崎小百合は「わー」と言った。
筋肉質とホッソリのカップル(※カップルではない)はその「わー」をあえて無視して、蕎麦を注文すると、「今日暑いからざる蕎麦でもよかったかもしれませんね」「注文した後に言うんですか」などと簡単な雑談に洒落込んだ。
傍から見ると、二人ともとっても幸せそう!
よかったねー。
そして、蕎麦が出てくると二人は年齢の割にとてもお行儀よく食うものだから、小百合はまた「わー」と言った。
このくらいの年齢の人間というのは、だいたい蕎麦を食うとスプラッシュさせてしまうし、それを恥とも思えない。
なので、小百合はこういう年齢の人間というのが大嫌いだったが、「この二人はゆるそう」と考えた。
「ごちそうさまでした‥‥‥美味しかった」
「そうですね。こんなに美味しい蕎麦ってあんまりないんじゃないでしょうか。手打ちなのかなぁ」
「手打ちだよ! 手打ち手打ち」
小百合はぐんと身を乗り出した。
「美味しいって言ってもらえてすごく嬉しいね。優しい世界って本当にあるもんなんだね。普段来る客って博奕に勝った客か博奕に負けた客かこれから博奕をうちに行く客だけだもの」
「客層地獄じゃないですか」
「ギャンブラーはどうしてこうアクションを挟むごとにそばを食べたがるのかね」
「おいしいから景気づけに、とか。慰めにとか。俺もたぶん何かあったら食べに来ます。とても美味しかったので」
小百合は喜んだ。現代にこんな若者がのこっていたのか、と。
「君の彼氏かわいいね。ガタイ良すぎるけど」
小声。
「彼氏じゃないです‥‥‥」
「エッ。まだ付き合ってないんだ」
「そもそも同性です」
「エッ。じゃあ、あの子、女の子?」
「そっちじゃないですよ。僕が男なんです。こう見えて。それに彼は恋愛するほど人間を信じてないから、僕たちは恋人にはならないんです」
「えー、付き合っちゃいなよー」
「聞け‥‥‥! 人の話を‥‥‥!」
「そういう人間ねぇ! 自分が誰かに愛されてるって教えないと一生独りだって思い込んじゃう系男子だよ。私の旦那もそーでした」
小百合の夫は去年末に死んでいた。
「ファイト!」
「ファイトじゃないです、全然」
店を出ると、星太郎は「風が気持ちいいなあ」とつぶやいた。
「そういえば、さっき店主さんと、何を話していたんです?」
「恋人に勘違いされてたんですよ」
「兄妹ならまだしも?」
「兄妹ならまだしも」
「一風変わった感じがするけど、いい人であってほしいですね」
「ハラスメント凄かったけど」
「ははは」
はは
と
ははは
は使い分けてます




