EPISODE 12 参上
星太郎は邪魔な壁を蹴飛ばして、一番近くにいた天使の頭を鷲掴みにして、地面に叩きつけてから首を思い切り踏みつけた。
「六体目」
「ヒッ‥‥‥」
赤い瞳が炎のように、ギ‥‥‥ギ‥‥‥とほとばしり、明確な殺意というのがあった。天使のうちの一人が茨を出すが、途端に宇宙色の閃光が走り、後頭部に回し蹴りが炸裂した。
「七体目」
背後から刀で斬りかかるが、星太郎はそれを躱し、腕をきめて刀を奪うと、右手を地面に踏みつけるかたちで腕を固定すると、縦に一線傷を入れた。
「八体目」
弾丸が三発、星太郎の胸に突き刺さる。星太郎は拳銃を持つ天使の方に向かっていき、持っていた刀で両腕を斬り落とし‥‥‥そして、首に突く様な蹴りをめり込ませた。
「九体目」
背後から刀が二本、星太郎に突き刺さる。星太郎はそれもお構いなしに目の前の天使に向かっていくと、腹に刀を突き刺し、抜いて、腹のその怪我の位置につま先を蹴りいれる。
「十体目」
赤い両目から、涙が流れ始める。痛みか、あるいはなにか‥‥‥背中から刀を抜き、天使二人の股間に一本ずつ突き刺した。
「十一と、十二。‥‥‥終わりか。群れるのは弱い証拠ですね。一体で頑張ってるれんじゅうは基本武器には頼りませんでしたよ」
「ウウ、ウウ」
「大丈夫ですか? 雨音くん。お怪我はないように見えるけれど」
此方に触れようとして、引っ込めた黒いゴツゴツとした手を掴んで、「どうもありがとう」と目を見て言った。
「‥‥‥しばらく二人でいますか」
「エッ?」
「いきなり警察に来られたんじゃ落ち着かんでしょう。‥‥‥と言うより、これは俺の事情なんですけどね。‥‥‥はは。サイコパスとか、ソシオパスとか‥‥‥そういう風に言われるかもしれないけど‥‥‥自分でやったおいて‥‥‥」
星太郎は、小屋の外に出るとぐったりと項垂れた。変身を解かないのは、その顔を見られないためだろう。
「大丈夫ですか?」
「どうかな。君は?」
「僕は、少し怖かったけど‥‥‥」
「もっと早く来るべきだった」
「できなかったんです。セキユっていうのが、なんか、そういうのを遮断する結界を張っていたらしくて‥‥‥だから、星太郎さんのせいではないんです」
彼は、少しだけ顔を落としながら、「俺は」と続けた。
「自分の失敗は、自分のせいにしたい」
「‥‥‥‥‥‥」
真面目。
変なところで、大真面目。
そりゃあ、あまり、幸せな人生を歩めない人の考え方だな、と雨音は考えて‥‥‥それから、「この人はそれでもいいんだろうな」と直感的に理解してしまう。
しばらく小屋の外で二人揃って地べたに座りつき、木々の間の地面を眺める。
「あんなに怒ったの、生まれて初めてです」
「エッ?」
「君が攫われたって感じ取ってから俺の中で何かが壊れて、一気に感知能力が上がった。周囲での扁桃体の動きが‥‥‥つまり、感情の流れが分かるようになって、一箇所だけぽつんと何もないから、『ここだ』って、分かると、あのバイクに乗って一直線だった」
「‥‥‥」
「どうしてこれが、他の人でも出来んのでしょう」
クロベコの変身が解けた。
「‥‥‥よし。決めた」
「なにをです?」
「山を降りたら蕎麦を食べに行こう。あったかいそば! 君もだ。‥‥‥君とだ。どうか?」
「いいですよ。いいですね」
警官たちの足音が近づいてくると、小屋のなかの惨劇を見て、言葉を失った。
「君は大丈夫なの?」
「治りました」
「えぇ‥‥‥?」




