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嘆きの街道と「規格外」の盾(11)

聖都セント・アトポスの巨大な白い城壁の下。ガラクが見つけたのは、忘れ去られた排水口……ではなく、あまりにも場違いな「鉄の扉」でした。


「こいつは驚いた。教会の奴ら、こんな貴重な遺構の上に都を建ててやがったのか」


ガラクがこじ開けた扉の先には、円形のトンネルがどこまでも続いていました。壁には色褪せた「路線図」のようなプレート。そして、足元には二本の錆びた鉄のレール。


「(……これ、どう見ても地下鉄のトンネルじゃん。なんで中世ファンタジーの世界にこんなものが……)」


ツーダは、前世で毎日嫌というほど揺られていた通勤電車の記憶と、目の前の光景を照らし合わせ、冷や汗(のような膿)を流しました。


1. 闇の中の行軍


一行は、カチカチと音を立てるガラクの魔導ランタンを頼りに、湿った地下道を歩き始めました。


「若造、さっきから震えてるねぇ。幽霊でも怖いのかい?」 「い、いえ……幽霊より、あの……『次の駅は、終点、西春駅です』とか、アナウンスが聞こえてきそうで……」 「何を訳のわからないことを。ほら、足元に気をつけなさい。何かいますわよ」


ナベの警告通り、レールの先から、カチカチと無数の関節を鳴らす音が聞こえてきました。


現れたのは、かつての地下鉄車両が遺石の魔力によって「生き物」として変質した、巨大な百足ムカデのような怪物『鋼鉄の廃車スカベンジャー・トレイン』。車両の窓からは、かつての乗客たちの残留思念が、紫色の炎となって揺らめいています。


「ひ、ひいいいっ! 終電が……終電が僕を殺しに来たあああ!!」


2. ツーダの「通勤知識」炸裂


怪物は、線路に沿って猛烈なスピードで突進してきます。ライが大剣を構えますが、狭いトンネル内では満足に振り回せません。


「クソッ、正面から受け止めるには重すぎるねぇ!」


「ツーダ様、右腕の魔導砲を! ……ツーダ様?」


ツーダは恐怖でパニックになりながらも、脳内では前世の「鉄道オタクの友人から聞いた雑学」が高速回転していました。


「(……このタイプの車両は……ATS(自動列車停止装置)の信号が……いや、魔力に置き換わっているなら……あそこの壁の制御盤が、ブレーキの魔法陣になってるはずだ!!)」


ツーダは右腕の多機能魔導砲を構え、狙いを定めました。


「ドクダミ・スチーム……最大出力! ターゲット、壁面制御盤!」


ドシュゥゥゥッ!!


放たれたドクダミの粘液弾が、壁の煤けた装置に命中。中和魔力が回路を駆け抜けた瞬間、迫り来る「鋼鉄のムカデ」の足元で、強力な魔法の緊急ブレーキが作動しました。


ギギギィィィィィィン!!


火花を散らしながら、怪物はツーダの鼻先数センチのところで完全に停止しました。


「……ま、間に合った……。僕、この車両の『弱点』知ってる……。いつもドアに指挟まって、遅延してたから……」


3. 到着した「駅」の真実


怪物をやり過ごし、一行が辿り着いたのは、聖都の真下にある広大な「廃駅」でした。


しかし、そこはただの駅ではありませんでした。 プラットホームには、無数のカプセルが並び、その中にはツーダと同じように「継ぎ接ぎ」をされた人々が、眠るように収容されていました。


「これは……『器』の保管庫ですわね」 ナベの声が、冷たく響きます。


カプセルの一つに近づいたツーダは、目を見開きました。その中にいたのは、前世の会社で、唯一彼に優しく接してくれた「部長」によく似た、60代後半のおっさんでした。


「……部長? ……なんで、部長までゾンビに……?」


その時、駅のスピーカーから、ノイズ混じりの声が流れました。


「ようこそ、失敗作の諸君。……いや、『ツーダ』と呼ぶべきかな。君が持っているその水筒……中身を淹れ直す時が来たようだ」


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