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嘆きの街道と「規格外」の盾(10)

ガラクの改造によって、ツーダの右腕には、鈍く光る重機の装甲と真鍮の歯車が複雑に組み合わさった「外骨格式魔導砲」が装着されました。その中心には、あの塗装の剥げたステンレス水筒がコアとして鎮座しています。


「(……すごい、これ。まるで伝説のサイボーグ戦士みたいだ……!)」


ツーダは心の中で、前世で見た深夜アニメのヒーローになりきっていました。しかし、現実は非情です。ガラクがどれほど外側を格好良くデコレーションしても、その隙間から覗くのは、相変わらず不気味に継ぎ接ぎされた青白い「死体」の肉。しかも、改造の振動で少し皮膚が剥がれ、相変わらずドクダミの汁が滲んでいます。


「若造、ニヤニヤしてんじゃないよ。見た目は強そうだが、中身はただの『動く腐肉』だってことを忘れるな」 ライが呆れたように鼻を鳴らします。


「ツーダ様、その格好いい(?)右腕を振り回して、私の荷物まで壊さないでくださいね」 ナベの冷ややかな視線を浴びながら、一行は聖都への難所「鳴き砂の渓谷」に差し掛かりました。


そこで待ち構えていたのは、体長5メートルを超える巨大な岩トカゲの群れでした。


「ちょうどいい実験台だ! おいツーダ、新機能のテストといこうじゃねえか!」


ガラクがニヤリと笑い、ツーダの背負ったバックパックのリモコンスイッチを強引に叩きました。


「え、ちょっと待って! まだ心の準備が……あ、熱い! 背中が熱いですよガラクさん!!」


ガラクの試作機能:強制出力上昇オーバー・クロック


ツーダの右腕の魔導砲が、ガチン、ガチンと機械音を立てて変形を始めました。水筒の底から青白い炎が噴き出し、周囲に強烈なドクダミの香りが充満します。


「ターゲットロックオン……なんてね! いけええええ!!」


ツーダがヤケクソで叫んだ瞬間、水筒から放たれたのはレーザーではなく、超高圧で圧縮された「ドクダミ茶の粘液弾」でした。


ドォォォォン!!


着弾した瞬間、岩トカゲの皮膚をドロドロのハーブ成分が包み込み、その強力なデトックス効果(?)によってトカゲの魔力循環が強制停止。トカゲたちは「うっとり」とした顔でその場に崩れ落ち、深い眠りに落ちていきました。


「……あ、あれ? 爆発して木っ端微塵になるんじゃないの……?」


「バカ言え。あんたの腐った魔力で爆発なんてさせたら、この辺一帯がドクダミ臭くて住めなくなるだろ。これは『強制沈静デトックス・バースト』だ!」


ガラクは満足げにノートに記録を取っていますが、ツーダの体には異変が起きていました。


「……あ、あの……ガラクさん。出力が高すぎて、右腕の継ぎ接ぎの糸が……熱で溶けて……腕が、外れそうです……」


ポロリ。


格好いい魔導砲を装着したまま、ツーダの右腕が肩から地面に落ちました。


「ひいいいっ! 腕が! 腕が落ちた!! 痛い! 痛い気がする!!」


「あら、ツーダ様。せっかくガラクさんが格好良くしてくれたのに、もうバラバラですか。……ライさん、拾ってあげてください」


「ったく、世話が焼けるねぇ。ほらよ若造、これくらい自分で縫い付けな!」


ライに拾われた右腕を受け取り、涙目(しかし死んでいるので涙は出ない)で自分の肩を針と糸で縫い直し始めるツーダ。


見た目は最新鋭のスチームパンク騎士。 しかし実態は、自分で自分の腕を縫い直す、アトピー持ちのコミュ障ゾンビ。


「(……やっぱり、ヒーローへの道は遠いな……)」


一行は、そんなコントのような光景を繰り返しながら、ついに聖都の巨大な白い城壁を視界に捉えました。


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