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神話の英雄譚  作者: わらびもち
第十三章 生残競争
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第88話 回復

「ッ……! はぁ……はぁ……」


「……エスト? 大丈夫?」


「ッーー……。大丈夫だ……」


 おれは目が覚めて飛び起きた。……嫌な夢を見た。目の前でじいちゃんが燃えて死ぬ夢だった。


 ……割と現実と変わらないが……こんなに引きずるとは、案外おれも脆いものだ。汗を拭いて水を飲み、座って落ち着きを取り戻すことにした。まずは呼吸を整えて……。


 そういえば傷は結構治っているようだった。相変わらずの回復力に自分でも引いてしまう。


「誰か来たか?」


「いいえ、誰も、気配も無いわ。人も魔族も近くには来てないわ」


「……そうか。じゃあ今度はおれが見張っておくから寝ててくれ。そろそろしんどいだろ」


「ありがと。でも私も休憩は出来たから随分マシになったわ。何かあったらすぐに起こして」


「分かった。でもちゃんと休めよ」


 おれはセリアの寝たところの近くに座った。木の葉や布などを使って簡易的に布団を作っている。


 全快したら誰かの魔力を探ってみよう。少なくともデスバルトの魔力はどれほど遠くにいても探知できるはずだ。互いに魔界にいるのなら。


 改めてこの大地を見渡すと……酷いものだな。時間にすればもう朝だろう。それなのに日の光がほとんど届いていない。土も木も異様に黒い。どこか地獄に似た雰囲気だな。……地獄よりは一回りも二回りもマシな環境だが。


 魔族を退けたら濁った魔素を浄化してやらないといけないな。空気が悪過ぎる。


 辺りを見渡しながら近くの魔力の反応を探ってみるが……セリアが言っていた通り、確かに何の気配もないな。転移させられる前の様子から魔族がおれ達を狩りにでも来ると思ってたんだが……いや、そもそもおれは魔力が無いしセリアは弱ってるせいで見つけられないという可能性もあるか。


 だとしたら他のヤツらも案外無事かも知れないな。………どうせ今すぐは動けないんだ。希望的観測でも、今はそう思っておくしかない。


 その後もおれとセリアで交互に見張りをし、見張りをしていない方は休憩するようにした。丸二日ほどそんな生活をしていた。


 完全回復、とまでは流石にいかないが、充分に動いて回れるほどにはなった。デスバルトに遭遇しなければ問題ないだろう。おれ達は他の人を探しに出た。


「一つ聞くわ。私達以外に人間を見なかった?」


「……み……見てない……です……」


「そう」


 おれ達は森の中を進みながら情報を集めた。途中襲ってくる魔族をしばきながら。今のは恐らく九月の1体なのだが……セリアも逞しくなったな。


 魔族から得られた情報はただ一つ。今この魔界で魔族が人間を狩る競争ゲームが行われているということだけだった。


 ……いくらおれ達が弱っているとはいえ、そう簡単にはやられない。それはデスバルトだって理解しているはずだ。だから大量に魔族を戻してきたのだろうが……その割には数が少な過ぎる。


 デスバルトは何がしたいんだ? ただおれ達を殺すならわざわざこんなことをする必要はない。何か理由でもあるのか……“ゲーム”という言葉の通りに楽しんでいるだけなのか。どっちにしたって気に入らねぇ。


「ん?」


 頭の中で色々と考えていると、前方から何者かが近づいてきた。カサカサと音を立てながら寄ってくる。警戒しつつこちらも歩みを進めていくと、その音の正体はイリアだった。


「イリアか!? 無事だったんだな!!」


 おれとセリアはそう言ってイリアの方に駆け寄った。怪我はしていなさそうだ。魔力は随分減っているが、とにかく生きていてよかった。


「お前達も無事だったのか。っつーことは侵界は倒せたのか?」


「ああ。なんとかだけどな。他のヤツらがどうなったかは知ってるか? お前達はデスバルトと戦ってただろ?」


「……ミーランとドーランが殺された。それ以外の奴ら、グラダルオとデモンゲート、それとガルヴァンは生きてはいるが……今どこにいるのかは分からねー。お前らも怪我してるなら俺に見せろ。治してやるよ」


 そう言われたのでおれとセリアは傷を治してもらうことにした。


 イリアの能力スキル幻想曲ファンタジア』は人の怪我も治せるのか。便利なものだが相当な量の魔力を消費するようだ。自分の傷や、それこそグラ達の傷も治したために魔力を減らしてしまったのだな。


 それにしても……2人も死んじまったのか……。2人共、特にミーランさんの防御力は相当なものだ。


 ……デスバルトと戦った人達は全員そうだった。時間を稼ぐことに特化したような……それなのに……。重くなった空気の中、おれ達の治療を終えたイリアが口を開いた。


「ふぅ……。お前らの方は? リンシャとギルバートが居ただろ。無事なのか?」


「転移させられた後は分からないけど、その前までは無事だったわ。……無事っていうか……生きてはいた。でも2人共重傷だったから……今はどうだか……」


「そうか……」


「ありがとな、イリア」


 身体が軽くなった。本当に凄い能力スキルだな。魔力が切れない限りはなんでもありな能力スキルなのか。


「で、残りはデスバルトだけだよな。有象無象(他の魔族)は置いといて。改めて思ったがアイツは格が違った。アイツの能力スキルとか分からなかったか?」


「悪いけど分からねー。攻撃しようにも軌道が逸れて当たらなかったってことくらいだ。でもその理由が分からねー。何も分からずに負けちまった」


「…………」


「どれだけ強力な攻撃でもダメだった。届いたと思ったら全然効いてねーし」


 イリアは悔しそうにそう言った。攻撃が無効化されるならどう戦えばいいのか……。


 でもバンリューは戦えてたよな。じゃあ何かしらの方法があるはずだ。絶対に勝てない相手ではない。


「……うしッ! じゃあ回復したし行くか。セリア」


「そうね。イリアはどうする? ………いや、流石に魔力を回復しないと無茶よね。」


「いや、俺も行く! 俺も死ぬまで戦わねーと気が済まねー!」


 セリアの質問にイリアは力強く答えた。とはいえ、このままでは無茶だろう。せめて魔力は回復してからでないと………。おれは頭を悩ませた。

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