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神話の英雄譚  作者: わらびもち
第二章 帝都・バラン
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第09話 襲撃

 街の後ろにうっすらと山が見える。おれが転移してきた山だ。馬車が進むにつれて次第に遠く見えづらくなっていく。


「なんでもねぇ山なのに思い入れ深い山だな。第二の故郷って感じだ」


「たまたまでしょ? 故郷っていうならまだ街の方が適してるでしょ」


「そういうんじゃないだろ!? 別に本当に故郷だって言ってるんじゃないよ。雰囲気だよ雰囲気!」


「あははっ。わかってるって! たまにはイジワルもしたいのよ」


「いい性格してやがるぜ。まったく」


 おれは笑いながらそう言った。これくらいの関係の方がおれとしても気が楽だ。


 この1週間くらいで互いのこともある程度知れて、仲が深まったからかこういう会話が1番楽しかった。遠慮するようなよそよそしい感じはおれの性にはあってない。


 内容のない会話、くだらない会話などをしているうちに帝都が見えてきた。


「おお! あれか! 帝都・バラン!」


「ええ。そうよ。すごい栄えてるでしょ。プリセリドで驚いてたんだからあんなの見たら腰抜かしちゃうでしょ?」


「ああ、すっげぇよ! あんなにでかいなんて!」


 街は王城を中心に住宅が敷き詰められていた。道は全て垂直に交わっており、建物は正方形の区画に分けられていた。こんなものは見たことなかった。


「本当にすごいな! 街が計画して作られてるっぽくて」


「わりと最近形成された街だからね。都市って感じでしょ? ここら辺では栄えた大都市に見えても世界的には別に大都市っていうわけでもないのよ」


 これでもまだ最高峰の街というわけではないのか。本当に世界は広いものだ。


「ところでここでは何をするんだ? 冒険者の仕事はわざわざここでやる必要もないんだろ?」


「ここはプリセリドよりも交流が盛んだからね。物資の調達をするわ。まぁポーションとか衣服とか必要なものね。長旅するならとにかく備えなきゃ! 買ったものはエストが持っといてくれる? 空間収納アイテムボックスに限りがないんでしょ?」


「ああ、なるほど。おれは荷物持ちってわけね」


「あははっ。拗ねないでよ! 私のは容量があるもの」


 そう言って肩をバンバンと叩かれた。わりと本気で叩いているのか結構痛い。


「ははっ。大丈夫だよ。空間収納アイテムボックスはおれの強みだから。むしろ役に立てて嬉しいよ」


 おれ達は商店や屋台を回った。見たことのない食べ物、装飾品、魔道具などが並べられてあった。


「……」


「どうしたの? エスト」


「うーん。なんだろうな。イヤな気配がするというか、予感がするというか」


「そう? 私は何も感じないけど……。なんだったら別のとこ行く?」


 少し心配そうな顔つきでおれのことを見つめていた。別に不快なわけではないのだが。


「いや、そういうんじゃないから安心してくれ。おれもここは楽しんでいるからな。ほら、見てみろよ、セリア。このブレスレット魔力消費を抑えられるっぽいぞ」


「私あんまり魔法は使わないからなぁ。魔力が枯渇することなんて滅多にないけど」


 その後もおれ達は買い物を続けて必要なものは買い揃えた。プリセリドで稼いだ金も一瞬で吹き飛んでしまった。


 それにしても本当に賑やかな街だ。遠くからも騒がしい音がする。そう思った矢先の出来事だった。


「……ッ!?」


 かすかに何かが爆発するような音が聞こえた。それと同時に大地の振動も感じられた。何かが起こっている。


「セリア! 今のは!?」


「北の方からよ! 魔力を感じるけどだいぶ遠いわ!」


「とりあえず走って向かうぞ!」


***


 一方、爆心地、バランの北端には2つの人影があった。周囲数百メートルの家屋は大破し、そこに住んでいたはずの人の姿は見られなかった。


「ああー。魔界の外に来るのは久しぶりだなぁ。もう少し遅い時間でも良かったんじゃねぇか? 日が沈んでからがよかったぜ」


「夜は人間の警戒も強まるからな。面倒なのは避けろとクロワール様も仰ってただろ」


「そうだがよ……。おれ達が人間に手間取るか?バンシュート」


「万が一に備えてのことだろう。まぁ確かに、奇襲というのは美しさに欠けるがな。これも命令なのだから諦めろ、ランド。そんなことより早く魔物を召喚してしまえ。そうすれば騎士団もそっちに手を回すようになる」


「へいへい。ちょっと待ってな」


 そうして帝都中に魔法陣が現れた。その魔法陣からはオークやオーガ、ゴブリンなど、多種多様な魔物が出現した。召喚魔法だ。召喚された魔物は本来よりも凶暴かつ強力になっており、一般人には到底相手できないものとなっていた。


***


「くそっ! 何なんだこの魔物達は! これじゃあ向こうに着くまで時間かかっちまう!」


「しかも強いわね。エストは先に向かってて!」


「いいけど、1人で大丈夫か?」


「この程度なら平気よ! そのうち王室騎士団や他の冒険者も来るでしょうから私もすぐ向かうわ!」


「そうか! ありがとう!」


 セリアを置いておれはデカい魔力の元へ向かった。おれの攻撃は周りも破壊しかねないので手間取っていたのだが、セリアが相手をしてくれて助かった。道中片手間に倒せる魔物を倒しつつ、考えをまとめていた。


(これだけの魔法か能力スキルが使えるということは相当強いやつがいる。人間のテロ行為なのか、それとも……)


 そうこう考えているうちに魔力の反応が近づいてきた。さっきの爆発が起こったところだ。周辺の建物が崩れている。街のあちこちからは炎が上がっており、剣の音、悲鳴などが聞こえていた。


「テメェらか? この騒ぎを起こしたのは! 人間とは少し違ぇな、魔族か!?」


「あん!? なんだお前は? 全然魔力を感じられねぇな」


「侮るなよ、ランド。ここまで無傷で来てるのだからそれなりの力はあるはずだ。まぁ、私たちの相手になるほどではないだろうがな」

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