第81話 鬼火舞
「『圧縮身体強化・穿』!」
「『白天』!」
「ふッ!」
「『震剣』!」
「うおっ……!」
おれの放った光線は剣に弾かれ、そのままバルファードはおれに向かって剣を振り下ろした。右手を硬化して受け止めたが、その衝撃は弱まることなくおれの身体、大地へと伝っていく。
衝撃が無限に広がっていくようで、おれを中心に大地が大きくひび割れた。おれはバルファードと距離を取って再び向き合った。身体がビリビリする。体内を直接攻撃されたような感覚だ。
「ふぅ……。そういえばお前のことは聞いてなかったな。なんだ? お前の能力は?」
おれは口から出た血を拭きながらそう質問した。まぁ答えないだろうが……。
「…………確かに貴方の能力を私だけ知ってるというのも公平ではありませんかね。私の能力は『伝播する震動』、私の攻撃は震動を生み出し、その震動は衝撃を弱めることなく無限に広げます」
「お……おう。教えてくれるんだな」
「当然です」
……舐められてるのか何なのか……。でも知ったところで……だな。身体をガチガチに強化すればそこまで痛むわけでもない。問題は射程範囲だな。剣士を相手にするのはなかなか面倒だ。
「さっさと片付けたいんだがな……。……ところで他の魔族が居ねぇのは人間界にでも行ってんのか?」
「ええ。魔界に居られても邪魔なのでね」
やっぱりな。となると騎士団やらクラン員やらを連れてこなかったのは正解だったな。やれることは全部やってる。問答を終え、互いに構え直した。後手に回るとやや不利だ。
「『魔天楼』!」
「熱ッ……!? ぐッ……!」
一気に距離を詰め、火柱を直撃させる。そこから更に回し蹴りを脇腹に決めた。高速かつ鋭い蹴りがバルファードの肋を砕いたものの、まだ足りない。相変わらず魔族のタフさは嫌なもんだ。
「ハァ……ハァ……。炎を使えるなんて聞いていませんが……能力を使いこなしているようで……」
「単純なんでね。応用が利きやすいんだ」
「……魔の者は本来、人間とは違い破壊神・ディアゴル様から能力を賜るものです。それなのに…………この上ない侮辱ですね……」
「?」
何を言いたいのか。でも魔族と人間で能力の出どころが違うんだな。破壊神とやらも創造神様と同じように直接現世に関わることはないのだろうか。一切話に聞いたことないしな。……いや、今はそんなことを考えている暇はない。
「『断太刀』!」
「!『魔昇』!」
「う”ッ……!?」
おれの目の前に瞬時に移動し大きく振りかぶったバルファードの剣を、下から思い切り拳を振り上げて止めた。……止めはしたが、斬撃は止まることなくおれの体内を斬り裂いた。
……なるほど……衝撃ってのはこういうのも含まれるのか……。さっきはエネルギーだけだったから大したことないように思ったが……考えを改めないとな。これはまともに受けたらかなりヤバい。
「『乱刃』!」
「くッ……そ!」
バルファードは剣を振り回した。まるで適当な技のようだが、一つ一つの斬撃はどれも的確におれを狙ってくる。そしてその斬撃はどれもおれの身体の内を斬る。
一旦距離を取って体勢を直した。……やっぱり……剣の方が遠くから攻撃されるから厄介だな。……となると……。おれは空間収納からあれを取り出した。
「地獄の名刀“鬼火舞”!」
「……貴方は剣も使えるのですか?」
「得意じゃねぇけどな。それに地獄にゃ良い思い出もねぇし。……行くぜ……!」
「『天桜刃』!」
「なッ!?」
おれはバルファードの懐に入って剣を横一線に振るった。魔力や魔素を流すと発熱する特殊な鉱石で出来た刀で焼き斬った。その上、ただ剣を振ったのではなく、その前に空間を斬って加速させていた。
「かッ……! なんですか!? 今のは!?」
「驚いたか? 最近面白い剣士を見たからな。真似してみた」
おれはリンシャの剣術を見様見真似で試してみたが、案外上手くいくもんだ。
……しかし結構深く斬ったのにな。流石は上位の魔族といったところだろうか。三界はこれ以上と考えると……ホント嫌だな。
それに現世でこの刀を使いすぎると空気まで燃やすかもしれねぇからさっさと終わらせねぇと。
「次の一撃で決めるぞ。刀はやっぱ慣れねぇからな」
「ふッ! 傷が深いのは貴方の方ですよ!」
「『大震剣』!」
バルファードは突進してきて横向きに剣を構えた。おれの宣言に同意したということか、全ての魔力をこの一撃に込めているようだ。
何にも触れていないのに空気が、大地が震動していた。三界に勝つんだ。おれも全力で、正面からこの一撃を粉砕してやる。
「『圧縮身体強化・壊』!」
「『堕魔炎断』!!」
おれは魔素を最大限に流した刀を縦に振り下ろした。他の何よりも熱く燃えた斬撃はバルファードを剣ごと、大陸ごと両断した。
「…………あ、やべっ。」
斬撃は止まることなく大陸の奥の方まで進んでいった。……この先に誰もいないことを祈るばかりか。いや、いるから問題なのだが……まぁ流石にこの距離なら平気だろう。おれは向こうをあまり見ないようにしてバルファードの方を見た。
「申……し訳……ござ……ません……デスバルト……様………………」
「……大した忠誠心だ。悪いがお前の主もすぐに追わせるよ」
返事はなかった。もちろんそんなことを聞く前におれは走り出していたので、あったとしても聞こえはしないのだが。
さて……思ったよりも手間取っちまった。急がねぇと……セリア達はまだ無事だよな……?
***
「ん?」
ガキィー……ン
大陸を走っていた斬撃はその先に居たデスバルトによって激しい音と共に止められた。
「おっと、誰かがバルファード君を倒したようだ。良かったね。これで君達も一歩進んだってとこかな。…………聞こえちゃないか。まぁこれで一勝二敗か。良いじゃないか」
デスバルトは切り崩された木の山に座りながら、目の前に転がった6人の人間に話しかけた。話しかけたというよりは、独り言という方が正しいかもしれないけれど。




