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神話の英雄譚  作者: わらびもち
第十一章 作戦会議
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第79話 改めまして

 アールデント様は円卓を退かし、そこの中央に魔法陣が展開された。どうやらどこかに準備していたのではなく、段階的に陣を作成していてそれを今完成させたという感じか。


 おれ達を転移させた後、アールデント様は残ったスリドさんが世話をするらしい。魔法を発動した瞬間に死ぬというわけではないしな。それなら彼が死ぬまでになんとか三界を倒したいな。


「……船は操舵手が運転してくれる。だが彼は戦闘員ではないからな、魔界に着いたらすぐにこちらに帰ってくる。……つまり君達は帰ることは出来ない……構わないな?」


「今更ですよ。もし死にそうなら泳いで戻って来ますかね」


「ふふっ……。そうか。……それと、恐らくだが三界(奴ら)は私達の動きに気づいているだろうな……。それでも何もしないということは余裕があるということだろうな……。だがそれなら好都合、それこそ私達の思い通りに事を動かせるということさ。……では飛ばすぞ……武運を祈る……!」


 そう言うと魔法陣が発光し、おれ達はその光に包まれた。一瞬、ほんの一瞬のうちに、おれ達は部屋の中から海の目の前に放り投げられた。


 気づいたときには違う場所、転移するというのは変な気分だな。目の前には大きな船があり、それに乗り込んだ。全員が船に乗り、少しして船が港から離れた。


 他の大陸は隣の大陸との距離が極めて近いのだが、魔界だけはかなり離れたところにある。船で進んでも数日はかかるだろう。それまでは身体を休めてリラックスしておいた方がいい。


 全員、一度各々の部屋を確認し、その後に椅子やテーブルなどが置いてある広間に集まることになった。いや、集まるというよりは暇なときにその場に居ようという感じだ。


 作戦を話すようなこともないが、何もしないならせっかくだし話でもしようとのことだ。今回はチームワークも大事になるから。


 三界がおれ達の動きを把握しているなら、これは奇襲ではなく全面戦争ということになるのか。……戦争というには戦力があまりにも少ないが、そもそもおれ達は一人一人が一国の軍隊にも引けを取らない力を持っている。


 バンリューや三界は当然それ以上だ。そういう意味では限りなく戦争に近いものだろうか。……余波で世界が沈まないことを祈らないとな。……割と冗談(シャレ)にならないか。


 広間へ向かうと、何やら言い合っている人がいた。イリアと…………あぁ……言い合いしそうな組み合わせだな。


「なぜこの俺が貴様らと組まなければならないのだ。馬鹿なのか?」


「テメー話聞いてただろーがよ! 今更テキトーなこと言ってんじゃねーぞ! 作戦は作戦だ!」


「だから俺は……!」


「馬鹿はテメェだ馬鹿野郎! ……悪いな、イリア」


「お……おう……。まぁ構わねえよ」


 おれは文句を言っているデモンゲートの背中を蹴りでど突いた。結構思い切り。たぶんコイツはおれと同じ班に来ようとしたのだろう。何直前で勝手なことを言ってるのか。人の迷惑を考えろってんだ。


「おお……エスト様……! よければもっとお蹴りになって下さっても……!」


「キモいな!! やめろ! ……お前な、和を乱すんじゃねぇよ。いいか、どんな理由があろうとお前はイリア達に従え。お前が一番下の立場だ。デスバルトを倒したらおれの方に来てくれて構わねぇけど」


「し、しかし……!!」


「どんな理由があろうとお前はイリア達に従え」


「……分かりました! エスト様の最初のご命令、承りました!」


 その後はワラワラと全員が広間に来た。慣れというか癖というか、気づいたときにはリンシャさんがお茶を淹れてくれた。まぁ癖なんだろうな。


 それから何時間と飯を食ったり話したり力比べをしたり。戦闘前だってのにみんなどんちゃん騒ぎで飲んで食って……まぁいいか。


 もうすっかり日も暮れて……何時間も乗ってるのに酔わないな。いい船はあんまり揺れないのか。……いや、流石に少し気分が悪くなってきたかな。


 おれはデッキに出て夜風に吹かれた。乾いた潮風が肌を刺激した。思ったより冷たいが、さっきまで部屋にいたので爽やかな空気が沁みる。


「エスト、何してるの?」


「うぅん? ……風に当たってるだけだよ」


「そう」


 外に出てから10分ほど経ったとき、セリアが船内から出てきた。何をしているのか、ただそれだけ質問をして、その後はおれの横に立った。柵に両手を乗せて水平線を眺める。


「ねぇ、これに勝ったら何しようか。最初の目標は達成しちゃうものね」


「ははっ。気が早いんじゃないか?」


「負ける気で戦う人なんていないでしょ? ……解散する?」


「まさか」


 おれとセリアは笑いながら話していた。いつもみたく軽口を叩くように。なんだかんだこういう時間が楽しいものだ。


 ………セリアと星を見ながら話すのはいつぶりかな。おれもセリアも、ロマンチックなのは柄じゃないから。


「お、エストとセリアじゃねーか。あんなとこで何して……!」


「馬鹿! 貴様! 良い感じなのに水を差すな!」


 外にいる2人を見つけたイリアが声を掛けようとしているところを、他の全員で取り押さえていた。バンリューとデモンゲートを除いた全員で。


 バンリューはこんなことに興味はなく、デモンゲートは確実に雰囲気を壊すだろうということで既に押さえられていた。


「私はね、魔族を退けたら魔界に国でも作ろうかなって」


「国?」


「うん。ほら、ユリハが獄境の新しい王になるって言ってるんだけど、そこと人類を繋ぐ国。……私、ユリハを見てから思ったのよ。魔族って根は良い人もいるんじゃないかって」


「確かにな。それにしたって国かぁ……」


 馬鹿みたいな話だ。思えばおれ達は初めから馬鹿みたいな2人だったな。じゃあぴったりな目標なのかもしれない。


「でっけぇ目標だな」


「ふふっ。でしょ?」


「セリア、この戦いが終わったらよ、おれの名前を名乗ってくれよ。同じ苗字で、同じ家にさ……」


「え……これ……」


 おれはじいちゃんのネックレスをセリアに渡しながらそう言った。なんか……もっと言いたいことがあったんだけど………いざ口にするとなるとなかなか言葉が出てこなかった。おれって思ったより不器用なんだな。


「ははっ……。そんなこと改めて言わなくても、私だってそう思ってたわよ」


 セリアはそう答えてネックレスを首にかけた。それから何十分か海を見ながら話をして、船内に戻った。


 それから2日後、船は魔界に着いた。時刻は21時、すっかり夜だ。おれ達は船から降り、船は引き返していった。魔界は……地面も木も海も、どこか黒いものだった。夜だからとかは関係なしに。ただ……魔族の住む大陸という割にはどこか静かなものだった。

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