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神話の英雄譚  作者: わらびもち
第一章 英雄の街・プリセリド
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第08話 英雄の弟子

 ——グランデュース家の歴史はね、1900年前まで遡るんだ。長い歴史だろう。ここまで長いのは世界中を探してもうちといくつかの王家ぐらいなもんだ。


 1900年前、バルザートという少年がいたんだよ。その子が我々の祖先でグランデュース家の始まりさ。もともとは孤児だったんだがね。ある青年と出会ったのさ。


 君も知ってると人物だと思うが、大英雄ユリオス様だ。バルザートは我々の能力スキルの大本である『剣帝ソードマスター』を持った固有能力者ネームドでね、ユリオス様にその力を魅入られて大英雄の唯一の弟子になったんだ。


 当時はまだユリオス様も無名だったから注目されなかったんだがな、ユリオス様が英雄と呼ばれ始めた頃からバルザートも有名になったのさ。そしてかつてのこの国の皇帝から貴族の位を授かったんだ。これがグランデュース家の始まりさ。


「つまり我々の悲願は祖先の師であるユリオス様の無念を晴らすこと。三界を討ち滅ぼすことだ」


「へえ。魔族を滅ぼすことにセリアが強い意思を強く持ってる理由がなんとなくわかったよ」


「ああ、だがセリアの夢はもっと遠くもっと偉大なものだからな。難しいことだが、それだけに同じ志を持った同年代の子と出会えたことは私としても嬉しいものだ」

「だから君に会ってみたかったのさ。どんな子なのか、本気で魔族と戦おうと思ってるのか。君の目を見てみると心配は要らなそうだな。なぁ、セリア」


「もちろん彼のことは信頼できますよ。だからパーティを組んだんです」


「そうだな。お前のことはお前に任せるよ。エスト君とは会ってばかりだが、なんとなく信頼できる雰囲気があるな」


「そう言ってもらえると嬉しいよ。ありがとう」


 ダルゲートさんは笑ってそう言ってくれた。セリアもそうなのだが、この人と話していてもおれは落ち着けた。


「ところでエスト君は、ユリオス様の言葉を知ってるかい?」


「言葉? たぶん知らないな」


「ユリオス様は死に際に『三つの世界を滅ぼしとき、神が微笑む』と残したのだ」


「めっちゃ不穏な言葉じゃん!」


「違うわよ。三つの世界っていうのは三界のこと。つまりそれがユリオス様の悲願ってことよ」


「そういうことだ。君が魔族を滅ぼすとは言っても要は三界を倒せるかどうかが大きな鍵だ。よく励むといい」


「そういうことか。もちろん努力は怠らないさ!」


「そうか、私から言いたいことはそれだけだ。よければ夕飯を食べていきなさい」


「いいのか? ありがたく頂くよ」


「じゃあ私が案内しますね、父様」


「ああ、私も仕事に区切りがついたらすぐ向かうよ」


 そのあとおれは夕飯をご馳走になった。今まで食べたことがないほど美しい味だった。口の中で溶けるというか、口に運んで完成するというか……言っちゃ悪いが、じいちゃんのご飯とは比べ物にならなかった。


 食事を終えた後はセリアの母のティアさんにも挨拶をし、それからすぐに宿まで帰った。


「おう小僧! 飯食ってくか?」


「いや、今日は貰ってきたからいいよ」


「そうか。お前領主様んとこ行ったんだろ?どうだった?」


「うーん、いい人って感じだったな。家族仲も良さそうだったし、落ち着く雰囲気だったな」


「そりゃよかったな。ご子息様は今いらっしゃらないんだよな?」


「ああ、話は聞いたけどいなかったな」


 今のグランデュース家で1番有名なのは長男のギルバートという人らしい。EXランクのバンリューに次ぐ実力者、六法帝の1人のようだ。今は中央センダル大陸を中心に活動している。それだけの実力者ならそのうち会ってみたいものだ。


 それから5日間、おれとセリアは依頼をこなしつつ鍛錬を続けていた。基本的には2人で模擬戦をしたり、おれは筋トレをしたりしていたが、たまにダルゲートさんが相手をしてくれたり、ゴリラのおっさん、ギルドマスターと模擬戦をしたりした。


 ダルゲートさんはセリア達を鍛えていただけあって相当な手練であった。少なくともおれが技の威力を抑えて勝てる相手ではなかった。ゴリラのおっさんは言わずもがなだ。何度放り投げられたことか。


 もちろんただ投げられていただけではなく、少なからず成長していたおれは身体強化ブーストを使わずともある程度相手することができた。


 さらに、完了した依頼の数やおれ自身の成長を認められ、冒険者ランクがBに上がった。もともとゴリラのおっさんは力を認めてくれていたのだが、依頼をこなすことで公にも認められたというわけだ。


「ずいぶん早く昇級しやがったな、小僧! お前達これからの予定は何かあるのか?」


「そうね、とりあえずグリセラ大陸の方に向かおうと思います。力をつけないとまだ相手にならないでしょうけど、三界がいるならいずれ行かなきゃ行けないし。いろんな国とか街とか寄りながら、ギルバート兄さんにも会いたいわね」


「じゃあバンリューにも会ってみよう。人類最強ってのがどんだけ強いのか気になるしな!」


「そうか。まぁお前達は若いんだから世界を見て回るといい。焦らず確実に進んでけ」


 そうしておれ達はギルドを後にした。その後おれは世話になった熊の家に挨拶をして北門まで向かった。


「セリア、おれ達これからどこ行くんだ?」


「とりあえず帝都に行くわ。ここもジュートレッド帝国の領地だからそう遠くないわよ」


 帝都・バラン行きの馬車に乗っておれ達はプリセリドを発った。いろんな経験をさせられた街だっただけに名残惜しくはあったが、それと同じくらいのに次の街への期待が心を弾ませていた。

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