表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
神話の英雄譚  作者: わらびもち
第十一章 作戦会議
77/99

第75話 停止

 バチッと音が鳴った。聞き慣れた音、といえば嘘であるが、何度か聞いたことのある音だった。その音はおれのすぐ隣、おれとリンシャさんの横に落ちた。


 当然、そこに現れたのは“あの男”だ。男はおれとリンシャさんの攻撃が交わる寸前に、おれの腕と彼女の剣を掴んで停止させた。


って!」


「!?」


 おれもそこそこの力を込めていたので、それを止めるために力強く掴んだからだろう。腕がミシミシと鳴っていた。……リンシャさんは剣だから大丈夫そうだな。


「……お前達……多少は手加減している……とは言え……そんなものをぶつけては……流石に……結界が保たないだろ……」


「! も、申し訳ございません! 気分が高まってしまい……私の責任です……!」


「いや、おれが少しハメ外しすぎたよ。悪かった」


 確かに今のはマズかったかもな。大陸を揺らす次元レベルの技をこんなとこで使うのは流石にか。リンシャさんが凄ぇ強かったからついやる気になっちまった。


 ……ていうかバンリュー(コイツ)本当マジに一瞬で来たな。ついさっきまでいなかったのに……おれ達の衝突を察知してすぐに来たのか。……凄いな。


 そんなことを思ってバンリューとあれやこれやと少し話していると、少し離れたところに人影が見えた。


「……ここに居らしたか……」


 声の主はデモンゲートであった。誰かを探していたのか?そんな雰囲気だが。そんなことを考えているとデモンゲートは中庭に入ってきた。そしておれの前で立ち止まる。


 170はあるおれの身長を優に超えている。190か……あるいは2メートルもあるかもしれない。おれはデモンゲートを見上げていると、彼は膝をついて頭を下げた。


「ネフィル=エスト様、私を、貴方様を主として仕えさせて頂きたい!」


「……は?」


「貴方様の人生に私の命を捧げさせて下さい!」


 ……何を言っているんだ……? コイツは……。昨日目を合わせただけだろう。それなのに……命を捧げるだって? ………変なヤツだな。


 セリアが大丈夫? と少しだけ心配して声をかけてくれたが、おれは大丈夫だとだけ伝えてデモンゲートの方に再び目をやった。変なヤツではあるが、敵意は感じられないし本心からの言葉なのだろうが……ますます理解し難い。


「なんでおれに? 昨日会っただけだろ。おれだってお前のことを信用は出来ないしな」


「信用出来ないというのは……これまでの私の行動によるものでしょう。全て私の自業自得にございます。昨日、アールデントが話していたことは全て事実。それを聞いて不信を招くのは当然のこと。しかし……!」


「しかし……?」


「私は必ずや貴方様に仕えねばならないと思ったのです。貴方様が世界の王になられると実感しましたゆえ……!」


「…………は……?」


「私はこれまで他人に興味を持つことなどございませんでしたが……私は貴方様に仕えるためだけに生まれてきたのだと、そう思いました。そう、初めて私はこの言葉の意味を理解したのです。一目惚れとはこのことか、と……!」


 デモンゲートはそう言って下に向けていた顔をおれに向けた。その顔には恍惚の表情が浮かんでいた。おれは生まれて初めて全ての感情が恐怖に支配された。


 こう……なんと言うか……背中にゾワゾワとした感覚が走って……まさに身の毛もよだつといった感覚だ。


「セリア……やっぱり大丈夫じゃないかも……」


 おれは細く弱くなった声を発した。セリアは顔に手を当ててため息をしている。セリアからしてもなかなかの衝撃だったようだ。


 その隣に座っているグラは……指を指して涙を流しながら爆笑している。……他人事だからって……。


「はぁぁ…………。分かった分かった。2つだ。お前をおれの臣下にしてやっても構わないが、2つ条件がある」


「なんでも仰せ下さい!」


「一つ、お前のことをちゃんと説明しろ。おれはお前が魔王を取り込んで天使を食ったってことしか知らねぇんだ。さっきも言ったがおれはお前のことを信用してねぇ」

「二つ、人に危害を加えないこと。特におれの仲間には全面的に協力しろ。まぁ……一応敵対できないようアールデント様と条約は結んでいるようだが……これが条件だ」


「その程度ならば当然にございます!」


 まぁ……そうなるよな。あわよくば拒否しないかと思ったのだが……。……貰えるもんは貰っとくか。いや、人をモノ扱いするのもどうかと思うけど……コイツならまぁいいか。


「では、私についてお話をしますね。私の能力スキルは『停止する世界(スチル・ワールド)』、時間を2秒だけ止めることが出来ます。固有能力者ネームドですが少々特殊でして、魔王と天使を取り込んだときに能力スキルが強化されました」


「あのよぉ……気になってたんだけど魔王を“取り込む”って何したんだ? 天使と違って食った訳ではねぇんだろ?」


「はい。元々は触れた対象を少しの間停止する能力スキルだったのですが、それを応用し、反動で魔王の身体をバラバラに分解してそれを取り込みました。簡単なことではありませんけれど」


「えげつないな。……能力スキル名が三界と似ているのは? それとお前のことは殺せないってアールデント様が言ってたな?」


「私は……恐縮ながら神に近い存在となりましたので能力スキルが大規模なものに変化したのです。同じように神はそう簡単に命を落とすことはありませんから」


 へぇ……。なんか色んな法則とか摂理とかがあるのだろうか。興味深いけれど……理解出来る頭がおれにはないだろうから深く聞くのはやめておこう。嘘はついてなさそうだし……あと聞きたいことも別にないかな。


「どう思う? セリア」


「いいんじゃない? 敵じゃないんだし」


 セリアは軽い感じにそう答えた。あまり深くは考えていないな。自分には大して関係ないからだろうか。……あの適当さは多分そうだな。


「じゃあ下がってろ」


「はっ! お邪魔にならないようしております」


「うしッ……! バンリュー、一戦やろうぜ」


「……良いだろう……だが……暴れすぎるなよ……」


 今日で何回目だろうか。人と戦うのは。……だがバンリューとは絶対にやっておかないといけない。おれは人類最強を前に胸が高まっていた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ