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神話の英雄譚  作者: わらびもち
第九章 聖都・ヘルダルム
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第62話 魔天楼

 おれは2人の準備が完了するのを待った。と言っても彼らはちゃんとした実力者だ。魔法が発動されるまでそう時間が掛かったわけではない。


「『大森林アイシア』!」


「おっ……?」


 ハナの魔力が地面を這ったかと思ったら、そこから無数のツタが生えてきた。それがおれの脚をきつく拘束する。硬く柔らかい。


 なかなかに千切りにくいものだが……これだけならどうということはないな。そう思って足元に力を入れたときだった。


「当たり前スけど……植物は燃えるんスよ!」

「『炎の網(ジュウジャン)』!」


「!!」


 ラルドは地面に向かって炎の塊を打ちつけた。それが植物を伝っておれの身体までたどり着く。


「どうだ!」


「ははッ! 悪くはないね! でも火力がまだ足りてねぇ!」


「なッ……!?」


 圧縮した魔素で身体の周りを防御ガードしていたので炎がおれを燃やすことはなかった。おれは猛る炎の中を突き進み魔法を発動した2人に接近する。


 そして低い姿勢から左腕を前に出した。その指先に超圧縮した魔素の塊を激しく回転させる。チリチリと音を鳴らすほどに。


「抑えるが防御はしろよ!」

「『魔天楼マテンロウ』!」


 前に突き出していた左手を上に上げ、そこから巨大な火柱を天に昇らせた。魔素の塊の回転が膨大な摩擦力を生み出し、それを爆発させることで魔素に熱を帯びさせ炎にした。そして、精霊の力で炎そのものに質量を与え相手を2人とも吹き飛ばした。


 一瞬だったろうか。3人相手したが、思ったよりも時間が掛からなかったな。それもそうか、地獄に堕ちる前はおれと法帝ほうおうの間には隔絶した差があった。それを今では埋められているのだから、Sランクの実力者とおれとの間にそれなりに差があって当然だ。


 でも上には上がいる。今のおれでも敵わないヤツだっているかもしれない。やっぱりおれはまだ強くならなければいけない。


「さて、3人とも。エストが大団長でいいかしら?」


「………流石にこれで文句は言えねぇッスよ……。思った以上ッス。セルセリアさんやグラダルオさんより強いって話、割と本当マジかもしれねぇッスね」


「私達も納得しました。エストさんがこんなに強いなら文句ないです。………まぁ元々セリアさん達(皆さん)が自信満々に言ってるので反対もしてないんですけどね」


 そう言っておれ達の手合わせは終わった。3人にアドバイスなどをしたりしたので少し仲は深められたかな。


 その後はラルドとハナ、パーダは戻ってもらい、おれはセリアやグラと手合わせをした。2人とも確かに強くなっていて、法帝ほうおうと呼ばれるのも納得の強さであった。


「なぁなぁ。“昇華”見せてくれよ。何か出来るようになるのか?」


「ああ……いいわよ。ちょっと疲れるけどね。…………!」


 セリアは目を閉じると魔力を集中させた。心臓のあたりからだろうか、みるみる魔力が溢れている。膨大で、それでいて非常に澄んでいる魔力が。


「これが昇華した私の能力スキル……『炎の剣帝フレイ・ソードマスター』よ」


「……おぉ……。すげぇな……」


 魔力が安定した瞬間、セリアの姿は赤くなった。金色の髪も瞳も、まるで炎のように。昇華はより高次元の存在になるとの話だったが……確かにどこか神秘的な感じがした。“神”に近づいている感じだ。


「慣れると身体に染みつくんだけどね」


「へー! どんなことが出来るようになるんだ?」


「私の場合はこれといって変わらないわよ。火力と操れる範囲が変わるだけで……あとは私から離れたところにも炎を出せるわ。こんな風に」


「おお!」


 そう言ってセリアはおれの背後に炎を出現させた。小さかったが、とてつもない熱を帯びているのは分かった。これが“昇華”か! とんでもないエネルギーを感じる。


「グラのは?」


「儂は見た目は変わらんぞ。昇華したら全身がより一層硬くなって部分的にはさらに硬く出来るって感じじゃ。あとは魔力を介して儂以外のものにも『硬化』の影響を与えられるだけじゃな」


 グラの場合は見た目は変わらないのか。継承能力者インヘリットと普通の能力保持者スキルホルダーでは違うのか? となるとおれはどうなるのかな?


「おれも早く昇華させてーよ。なんかコツとかないの?」


「人それぞれ違うからね。それにエストの能力スキルって私達と違って常時発動型でしょ? だから私達には全く分からないわよ」


「まぁ気合いじゃ気合い。なぁ? フリナ」


「私は昇華してないけどな。まぁエストなら頑張れば出来るさ。あまり焦らずにいけ」


「そうだな。……あ! そういえばよ。おれの仕事ってなんなんだ? 何かしなきゃいけねぇのか?」


「ああ……。別にないわよ。エストは私の相棒サポートってだけだから。それにエストは頭を使う仕事なんて出来ないでしょ?」


「いやまぁそうだけどよ……なんか悪くないか?」


「大丈夫よ。そもそも大体のことは団長達が済ませちゃうし、大きいことは私がやっちゃうから。それにこれまでエストがいなくても運営できてたんだからね」


 まぁそう言われると確かにな。じゃあ気にしなくてもいいか。おれは心が軽くなったのを感じた。


 その後おれ達は階段を上っていき、クラン長室へ向かうことにした。これからのことについて話し合うためだ。1階へ続く扉を開けて、2階へと行こうとしたときだった。


「そちらの方が大団長ですか!?」


「!?」


 後ろから声が聞こえた。何人もの人がおれに注目している。セリアやグラ、フリナのことは知っているから消去法でおれになったのだろう。でも何で知ってるんだ? ラルドか誰かが教えたのだろうか。


「私がさっき話したんだ。大団長が帰ってきたから世界中に知らせるようにって」


「ああ、なるほどな」


 フリナがさっき団員に話していたのはそのことだったのか。だからおれのことを知ってるんだな。


「ああ、おれがネフィル=エスト、“煌焔”の大団長だ。よろしく」


 おれは集まってきた人達に対して軽く挨拶をして2階に上った。そして冒険者パーティ“豪炎”の4人でクラン長室へ入っていった。

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