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神話の英雄譚  作者: わらびもち
第九章 聖都・ヘルダルム
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第61話 力試し

 おれはポーズを取って部屋に入った。決まったな。セリアも満足そうだ。


「お……おい……! お前……エストじゃよな!? 少し雰囲気が変わっておるが……」


「そうだよな……? 髪も背も伸びてるようだが声や顔つきはエストだもんな……」


「グラ! フリナ! 久しぶりだな!!」


 おれは大きく声を張り上げた。久しい顔だ。……2人はセリアと違って長寿だからかあまり変わっていないな。おれ達は互いに近寄って喜びあった。やっと4人、また集まることができた。


「えーーっと………エストっていうと……あのエストさんスか?」


「そうだ。……そうなのかな? 初めまして。多分おれがそのエストだ」


 そう質問してきたのはおれの知らない人だった。まぁ彼らはおれの話くらい聞いたことがあるだろうから、彼らの思う“エスト”はおれのことだろう。


 でもおれは彼らのことを知らないからな。ちゃんと教えてもらわないと。


「セリア。彼らが団長なんだろ? 紹介してくれ」


「ええ、もちろんよ。でもその前に……みんな! 彼がネフィル=エスト、うちの大団長兼副クランマスターよ。で、奥から順に煌焔研究団団長・ラルド、煌焔商団団長・パーダ、煌焔医団団長・ハナね。みんな強いわよ。冒険者だったらAからSランクにはなるでしょうね」


「そうなのか! よろしくな!」


「よろしくお願いします……」


 ラルド達は困惑しているようだった。いや、それでいうとグラやフリナも困惑はしていたが、今までいなかった上司が急に現れたので何が何だか分からないといった具合だった。


「地獄の情報を掴むために邪教を調べてたんだけど、肝心のエストが帰ってきたので私も一緒に帰ってきたってわけ。説明はこれでいいかしら? エストにもこれからの仕事を教えないといけないから」


「ええ、まぁ理解はしたッスけど……正直話に聞いてたとはいえ初めて会った人が僕らを統括するって言われても……強いのを確認しないと納得は出来ないッスよ」


 そう話したのはラルドであった。まぁグラやフリナを除いた団長の総意だろう。そりゃあ実力も分からないヤツの下には付きたくないよな。


 ……そんなことよりもおれは仕事をしないといけないのか? いや、そんなことって言うのは悪いかもしれないが、適当やってるだけではダメなのか?


「まぁそうでしょうね。大丈夫よ。今から地下の闘技場に行くわよ。元々私とエストが手合わせしようと思ってたけどその前にあなた達でやりましょう。エストと君達3人で」


「え!? 3対1ッスか!? いやまぁ僕らはいいスけど……」


 ラルドはそう言っておれの方を見てきた。まぁ流石に気が引けるだろうな。おれも彼ら3人を相手にして勝てるかは断言できないが、おれの力を示すにはそれが一番手っ取り早いだろう。


「それでやろう。お互い遠慮せずによ」


「じゃあ向かいましょう」


 セリアの言葉でおれ達は大会議室を出て、階段を降りていった。その奥に大きな扉があり、そこから地下に続く階段が伸びていた。


 途中、フリナは自身の団員に何やら話をしていたので少し遅れて降りてきた。ただ、階段は長く続いていたので、フリナの遅れは大したものではなかった。


 闘技場に続く階段はだいぶ深いところまで伸びていたが、その方が周りに響かないからだろうか。でも埋もれる可能性があるのに地下に作ってるということは、崩れることはないのだろう。たぶん強力な魔法を展開しているのだろうな。


 そんなことを考えながら階段を下っていると、広い空間に出た。そこには巨大な石畳のリングがあったが、ただの洞穴ではなくちゃんと整備されていて、部屋のようだった。そして、魔力で包まれているので、確実に何らかの魔法が発動してるのだろう。


「じゃあ始めちゃいましょう。この場所を壊そうって意思がなければ絶対に壊れることはないから、安心して暴れていいわよ、エスト」


「そうなのか。便利なもんだな。……魔法を解除しないように気をつけないとな」


 まぁそうしようと思わなければ魔法が解除されることはないだろう。とりあえず思いっきりやってみるか。


「じゃあ、準備が出来たらいつでもいいぞ。おれは出来てるからな」


「じゃあ遠慮なく行きますぜ……!」


「不甲斐ない戦いはするんじゃないぞ! エスト!」


 リングの外からグラがそう呼びかけてきた。おれはハイハイと軽く返し、3人に向き合った。雰囲気からするにラルドとハナが魔術師、パーダが剣士といった具合か。……殺しかねない高威力の技は使わないようにしないとな。


「ラルドとハナは後ろから頼む。俺が直接叩くとしよう」


「分かった。任せたぜ」


「うしッ!」


 そう言っておれに突っ込んできたのはパーダだった。鋭い剣を抜いて向かってくる。


「『圧縮身体強化フルブースト』」

 

「……は!?」


 魔力を纏った剣を突き出し、おれに攻撃してきた。おれは身体を強化し、素手で剣を受け止める。腕に覚えがあるようだから、素手で剣を止められては流石に驚くだろう。


「鋭さが足りねぇな。もっと磨いた方がいいぞ!」

「『回天カイテン』!」


「うッ!」


 おれは回し蹴りでパーダを場外へ吹っ飛ばした。急所は外したがかなり痛かっただろう。ちょっと心配だがこれくらいなら問題ない。


「エストの奴、圧縮身体強化あれはそんな簡単には使えないやつじゃなかったか?」


「地獄では何十年もの時間を過ごしたらしいわ。私達の想像を遥かに超えるほど強くなってるかも。実際イリアを軽くあしらってたらしいし」


「へー……それは期待が高まるな」


 パーダを外に追いやって魔力を溜めてる2人に接近するかしないか……。いや、せっかくなら2人の本気の魔法を見てみようか。


「よし……! 待っててやる! お前らの最高の技で来い!!」


「……ふッ……! 後悔しないでくださいよ!」

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