第59話 再会と最後
「くっ……あぁ〜……!」
目が覚めたらおれは腕を天井に向けてピンと伸ばして体を起こした。カーテンを開けて窓から太陽を入れる。ポカポカとしていて落ち着く光だ。地獄には存在しなかった心と身体を癒す光。やっぱり良いものだな。日はちょうど真上にあるな。ということはもう昼か。
……朝とか昼とかを気にするのも随分と久しぶりな気がする。久しぶりの日常。久しぶりの生きた心地。部屋を出ればセリアに会えるし、料理屋に行けば飯も食える。喉が渇けば水も飲める。心が軽くて良い気分だ。
おれは着替えや洗顔を済ませ、ベッドの布団を畳んで部屋を出た。廊下を歩き一階に降り、宿の主人に挨拶をして外に出た。新鮮で澄んだ空気が肺いっぱいに入ってくる。空を見上げ深呼吸する。
セリアはどこにいるのだろうか。流石にこの時間は活動してるだろうから彼女の魔力を探ってみる。いや、今まで寝てたおれが言うのは何か生意気な気もするが。
「…………あっちは……ギルドか? よし! 向かうか」
おれはギルドまで早歩きで向かった。セリアはギルドに用があったのか? それともおれが起きるまでの暇つぶしか。でもおれを起こさずにいてくれたんだな。おかげでゆっくり寝ることが出来た。
「セリア! おはよう!」
「エスト! 起きたのね。でももう昼よ。こんにちは」
ギルドの扉を開け、椅子に座って昼飯を食べているセリアに声を掛けた。それに対し、セリアもおれに返事をした。おれはセリアの前に腰掛け、軽い昼食を頼んだ。
セリアは有名人であるために、周りの人達はそんなセリアと一緒にいるおれを不思議そうな顔で見ていた。
一部のヤツらはクランに推薦してるんじゃないかとか、でもおれのことは知らないぞなど、色んな憶測が飛び交っていた。まぁ……別にどう思われてもいいか。
「もうこの街は出るか? やることも別にねぇよな?」
「そうね。団長達には2週間後に集まるように伝えておいたから……まぁゆっくり行きましょうか」
そう話しながらおれ達は食事を済ませて街を出発した。ヘルダルムまでは距離があるが、2週間あればおれ達なら充分に着ける。間に合わなそうなら急げばいいしな。
***
「主よ。ダンディール様とクロワール様の御二方の準備は整っております。そろそろ向かわれては?」
「そうか。早いんだね。君もおいで」
「はっ!」
部下のバルファードの報告を受け、我界・デスバルトは崩界と侵界の待つ部屋へと向かった。
全ての三界と我金隊隊長が一つの部屋に集まっており、その空気はギシギシと軋んでいた。しかし、4体の魔族はどれも怯む様子はない。
「さて……人間達と約束して、もう3年経った。その間に当時の九月は全て殺されてしまったし、僕の弟達もほとんど死んでしまったよ」
「……魔族側の戦力がほとんど無いということですね? まぁ三界がいるならいくらでもひっくり返るだろうけど」
「俺達はいつ人間界に行くんだ?魔族の大侵攻をやるんだよな」
「いや、多分人間達が勝手に来てくれるよ。だから僕達は魔界で迎え撃とう。そのときに三界以外の魔族は人間界に送っちゃおう」
「我らが王の邪魔になり得る奴は誰がいるんだ?」
「……バンリューは消さないとね。それ以外はいいかな。あと…………いや、いいか。その心配は無いな」
「クックックッ……! 楽しみだなぁ……! おい! ダンディール! テメェはこの前まで戦ってたんだから一番楽しそうなのは俺がやるからな」
「分かってますよ。バルファードはどうするんだ?」
「私ですか? 私は適当に足止めでもしますかね。2人以上の八法帝の相手をしたら流石に殺されてしまいますしね」
「お前も参加するのか? 楽しみが減っちまうじゃねぇかよ」
「私だってたまには体を動かしたいですから。いいじゃないですか」
「ま、バルファードは置いといて……多分戦争は1ヶ月以上先だろうけどね。……少なくとも2人は僕より先に死んでよ? 殺されることがあったらだけどさ」
「ああ、分かってるさ」
最後にそう会話をして彼らは解散した。もちろんバルファードはデスバルトについて行ったが。漏れ出す魔力だけで魔界を揺らすほどの集会が今終わったのだ。
そして彼らがまた集まるとするならば、それは人類が魔族に負けたときだ。人類が勝ったときには、これが最後の集会ということになるだろう。




