第05話 豪炎
「そういえば前から思ってたんだけどよ」
「能力保持者ってなんで固有能力者とか継承能力者とかって名前が違うんだ? まとめて普通に能力保持者でいいと思うんだけどな」
「えっ……」
「お前そんなことも知らねえのか。思った以上に田舎者じゃねぇか」
「うおっ! ゴリラ! まだいたのか!」
「だれがゴリラだ! ギルドマスターと呼べ!」
「まぁ、ゴリラみたいなもんじゃないですか。ギルマス」
しまった。口に出してしまった。でも見た目と頭は人間よりゴリラに近いのだから仕方ない。
「それはどうでもいいんだけどさ、もしかして有名な話だったりするのか?」
「どうでもいいかは俺が決めんだよ!」
「有名っていうか、常識なんだけどね。何から説明したらいいかな。そもそも能力って創造神様が授けてくれるっていうのは知ってるわね?」
「それは知ってるよ。あとは能力者の種類はある程度知ってるけど」
「じゃあ簡単に説明するわね」
「おい、なぜ俺を無視する!」
能力とは創造神様が授けてくれるもの。一般には自身の才能を磨いた先に努力の結晶として与えられるのが能力というわけだ。
その例外が固有能力者や継承能力者だ。固有能力者は生まれながらの能力保持者、つまり生まれる前から創造神様の加護を受けているのだ。
似たように継承能力者は一族に対して創造神様が加護を与えている。そのため固有能力者や継承能力者は強力な能力が多く、宗教上も大きな価値を持つことがある。だから呼び方が違うらしい。
「へぇー。イマイチ実感なかったけど実際強さも変わってくるんだな」
「創造神様からの寵愛をどれだけ強く受けているのかってところで大きく違いがあるのよ」
「だからお前らみたいに継承能力者と固有能力者の2人パーティなんて注目の的だろうな」
説明を受けた後おれとセリアでパーティの申請をした。AランクのセリアとCランクのおれのパーティだとBランクまでの依頼が受けられるようだ。
「じゃあお前ら、これからしっかり活動してけよ。特にエスト、お前はさっさとランクを上げちまえ」
「おう! 期待しとけ!」
「今日はありがとうございました、ギルマス」
「じゃあ作戦会議するわよ」
「作戦会議?」
「まず私たちの最終目標は魔族を滅ぼすことだけど、そのためには何が必要だと思う?」
「まぁ2人が魔族と戦って勝てるくらい強くならないとな。あとは協力してくる人とか?」
「そうね。とりあえず私たちが力を磨くは前提として、人が集まるには知名度が必要でしょうね」
知名度か。確かに知らないやつについて行こうと思う人はそういないだろう。有名になればそれだけ言葉に価値が生まれるから名前を売るのは重要かもしれない。
「ってことは……どうすればいいんだ?」
「まず世界中を旅しましょう。同志を集めながら私たちのパーティ名を轟かせるのよ」
彼女は楽しそうに話した。じいちゃんも世界は広いって話を何度もしてたから、おれも世界を見てみたいとは思っていた。
「それはいいな。楽しそうだし。冒険者になったんだから、ランクもどんどん上げてくのか?」
「そうね。私はある程度名前が通ってるけど。Aランクじゃまだまだね。2人ともSランクになってからでないと誰も相手にしないわ」
セリアは若いAランクの冒険者ということでそれなりに有名らしい。“炎剣”という通り名もあるようだが、それでもまだ足りないのか?
「Aランクじゃダメなのか?」
「確かにAランクっていうと凄腕の冒険者って認識になるけど、Sランクは格が違うから。魔族を滅ぼすってなると最低でもそれくらいは必要よ。三界も相手するんだから本当はそれでも足りないわ」
「Sって最高位だろ? それ以上の名声ってなるとどんななんだ?」
「世界で最も強い7人のうち6人を六法帝というのだけどそれになるとか」
「へー。じゃあ残りの1人は?」
「言っちゃえば1人だけ格が違うのよ。よく人類最強ってよばれる男なんだけど、唯一その人のためだけに冒険者ランクにEXランクが追加されたの。かつての大英雄ユリオス様に匹敵する強さだとも言われてるわ」
「すげぇやつがいんだな。でもおれたちもそれくらい強くならなきゃいけねぇだろ? じゃあおれらの目標もそこだな」
「ふふっ。そうね。私たちは強力な能力を持ってるんだし。順を追ってだけど、EXランクのパーティにしてやろうじゃない!」
「じゃあパーティ名も決めなきゃ。世界に轟かせる名前になるんだからちゃんと考えないと」
世界中に響かせる、いや、歴史に残す名前にするのだからおれたちの特徴を踏まえた名前にしたい。
「じゃあ“豪炎”なんてどうだ?おれのパワーとセリアの炎って意味で」
「いいわね。EXランクを目指すのにピッタリよ。分かりやすいし」
安直だし勢いだけにしか聞こえないかもしれない。でもこれからこの名前が、最強の名前になるのだ。“豪炎”の冒険はここから始まった。




