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神話の英雄譚  作者: わらびもち
第七章 地獄の主
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第44話 親戚

「おぉー……。なんだあれ?」


 ギルドから少し歩いたところに巨大な建物が見えた。それこそギルドよりもデカくて、まるで城のような大きさだ。バランで見た城よりは小さいだろうか。物静かなこの街の中で、あの建物の中だけは何やら騒がしさを感じる。


「あれは学校じゃないの?」


「……ガッコウ……?」


「え? ……ああ、そういえばあなた山住みだったのだものね。学校っていうのは色んなことを学ぶところなのよ」


「例えば……?」


「一般教養とか、魔法とか。場所によっては料理とか冒険者学校なんてのもあるわね。生徒が教師、先生から教えてもらうの」


 つまり……まぁ説明通り“学ぶところ”という訳か。魔法も教えてもらえる……か……。


「おれも習えば魔法使えるかな? 空間収納アイテムボックス以外の」


「エストは……イレギュラーだからね。教えられる人なんていないと思うよ?」


「いや、分からん! 行ってみよう!」


「わー! 待って待って! 部外者は入っちゃダメだよ!」


 学校へと向かうおれをセリアが引っ張って止めた。誰でも受け付けてる訳じゃないのか、と尋ねると、普通はそんな考えにならないと言われた。そんなことを言われるなんて……まぁ初めてではないか。


「あんた達、学校に興味があるのかい?」


 おれとセリアでやり取りをしていると、後ろから女性の声が聞こえた。振り向くと居酒屋? のような店の前に落ち着いた雰囲気の女性が立っていた。


「え……あんた誰?」


「ふふっ。この店の店主よ。少し話さない? サービスするわよ」


「え、じゃあ行く」


「エスト!? 怪しいわよ!? あの人!」


「でもよセリア。サービスしてくれるってよ。サービスだぞ? 多分ジュースくらいなら無料タダでくれるぞ」


 おれはセリアの耳元で小さな声で伝えた。サービスなんて言われて行かない訳にはいかないだろ。別に今は急ぎの用事もないしな。


「……ね、ねぇ。オレンジジュースも……ある?」


「はっはっ! それくらいなら構わんよ。さぁ、おいで」


 おれとセリアは彼女に言われるがまま店へと入っていった。店の外観は……大きくはなく、やや小さめの建物といった感じか。だが中は……


「……あれ? なんか中は広く見えるな。そういう設計の建物なのか?」


「いや、実際に広いんだよ。さぁ、そこにかけな」


 カウンターを指差され、おれ達はそこに座った。外からは居酒屋のように見えたんだが……中はバーのようだ。そして全く人がいない。昼間だからか?


「ほら、これがオレンジジュースと、君はココアね」


「あれ? おれ頼んだっけ?」


「いや、()()だったけど。ダメだったかい?」


「いや、構わない。無料タダで良いんだよな?」


「もちろんさ」


 おれは差し出されたココアを一口飲んだ。まろやかで美味しい。そしてちゃんと淹れたてだ。今来たばっかなのに。おれの横ではセリアも美味しそうにジュースを、飲んでいる。


「それで、学校に興味があるのかい? あそこは冒険者の学校でね。将来冒険者を目指す子達が通ってるんだよ」


「そんなのいるか?」


「生存率が上がるからね。金のある子は通うもんさ。君達は行ってないのかい?」


「私は初等部だけは行ってたわよ。あとは父様とか兄様に鍛えてもらったから。」

 

 行きたい人や行ける人が行くというものなのか。というか冒険者の学校なら別におれが行く必要もないな。もう冒険者だし。


「ところで君、君がエスト君だな。ネフィル=エスト」


「!? なんで知ってんだ!?」


 相手がおれの名前を呼んだ瞬間、セリアがかすかに臨戦体制をとった。おれもであるが、教えてもない名前を知っていたら警戒するものだ。


「ああ、待ちな待ちな。兄さんから聞いたのさ。黒髪の面白いヤツがいるってね。だから君のことを知ってる訳だ」


「兄さん? 誰かの妹か?」


「精霊王に会ったんでしょ? あれ、アタシの兄さんだよ」

 

「精霊王の? ……じゃああんた、天使様ってことか? この店の中が広いのもあんたの力か?」


 天使様といえば創造神様の子供のことだ。神の子というだけでそれなりの力を、有しているはずだ。多分外観より中が広いことや、注文もせずにおれの飲み物を準備したり。おおよそ普通ではない。


「そうよ。天使のほとんどは強力な力を持って天界から下りてくるんだ。代わりにこの世界に直接影響を与えられるほどの力の行使は許されないけどな」


「じゃああなたは私達に危害は加えないと?」


「ええ。というか加えられないわ」


 嘘ではないだろう。顔や雰囲気で分かる。言ってることは事実だろうし、悪意のある感じではない。信用してもいいだろう。


「アタシは君を一目見たかっただけだからな。あとは自由にしてくれて構わんよ」


 そう言われておれ達は飲み物を飲み終えて少しゆっくりしてから店を出た。


「ありがとう。本当にお金は払わなくていいんだな?」


「もちろんよ。そもそもアタシはお金なんて必要ないし。あと、気をつけなよ。この街は冒険者の失踪が多いから。……まぁ君達なら平気かな」


 そう言われておれとセリアはまた歩き始めたが、思ったより時間が経っていたようで、もうすぐ日が暮れそうだ。そろそろギルドの前に帰ろうか。


***


「まだ魔力が足りねぇ。もっと集めねぇと……また教主様に怒られちまうぜ」


「まぁゆっくりやりましょうよ。アンタの力があればいずれ出来るんでしょう?」


「まぁこれまでを振り返ればあとちょっとっつー感じか。……おい、大きい魔力が近くにいるぞ」


「ホントっすね。私が行きましょうか?」


人間(雑魚ども)じゃ不安だからな。くれぐれも殺すなよ。」


「分かってますよ」

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