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神話の英雄譚  作者: わらびもち
第七章 地獄の主
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第43話 冒険者の失踪

「いやー! やっと着いたよ!」


 おれは遠くに街が見えるや否やそう叫んだ。傷が痛むがそんなこと気にしてられるか!


 実に1週間ほど歩きっぱなしだった。これほどの長旅は初めてだったので流石に達成感と疲れがどっと来た。グラが飛んでくれればすぐだったと思うんだけどな……。


「痛たたたたたた……!」


「エストってやっぱりバカなの? 気持ちは分かるけど身体の方を大事にしなさいよ」


「コイツに言っても無駄じゃろう。今更じゃ」


「私は君の気持ちは分かるけどな! やっぱり長い旅をして目的地に着いたら嬉しいよな!」


 フリナだけはおれに寄り添ってくれた。優しさが沁みるけど……今回はセリア達の方が正しいと思うぞ。自分で言っててなんだけども。


「本当に……。エストさぁ、身体に穴空いてたんだから本当に無茶しちゃダメなのよ。生きてたのも不思議なんだから……分かってる?」


「いや……気をつけてるよ。……うん。これからは気をつけるから」


 セリアは、はぁ、とため息を吐いて肩を貸してくれた。傷自体は塞がっているのだが、まだ少し刺激した程度でもかなり痛むのが悩ましい。これじゃあ自由に身体を動かすことも出来やしない。


 セリアの肩を借りて歩き、とうとうルドンに到着した。この街は活気に溢れているというわけでもなく、どちらかというと落ち着いた、平和な雰囲気の街だ。


「なんか良い雰囲気の街だなー! これから……一旦どっか行くのか?」


「ギルドに行きましょうか。とりあえず稼がないと今はお金が無いわ」


 そういえば金欠だったな。……ていうかなんで金が無いんだ? いくらポーションとか高価な物を買ったといっても魔族とかを倒してそれなりに稼げているんじゃないのか……?


 そんな疑問を持ちつつも、おれ達はギルドへと向かった。街の入ってから10分程歩いたところなのですぐに着いた。


「Sランクの依頼はあるかしら? それか報酬のいいやつを受けたいのだけれど」


 ギルドの受付に尋ねた。やはりこういうのは手慣れているセリアに任せておいた方がスムーズに進む。


「少々お待ちください……。ってあれ? 皆さん“豪炎”の方達ですよね?」


「……そうよ……? お金が無くってとりあえず稼ぎたいの。」


「お金が無いって……皆さん受け取られてない報酬がございますよね?」


「……えッ?」


 受け取ってない報酬……? そんなものはないはずだ。報酬っていうのは依頼を済ませたら貰うものだ。依頼をこなして受け取ってないなんてことはあり得ない。……はずなんだ。


「受け取ってないってどういうこと?」


「えー……っとですね……。皆さん魔族を何度か討伐されてますね? 依頼では無いですけど、脅威を退けたという意味で本来報酬が支払われるはずなんですよ。ただそれには準備に時間がかかりまして、その間に皆さんすぐに次の街へ向かわれてしまうとか」


「え、そうなのか!?」


 初耳だ。……いや……でもそれはそうか……。魔族退治が慈善活動じゃ成り立たないもんな。


「聞いているはずですよ? ギルド内でも皆さまのことは良くも悪くも話題になっておりますし」


「あー……。そう言えばそんなことを言われた気もするかも……」


「え!? セリアは聞いてたのか!?」


「うぅーん……。忘れてた……なぁ……」


 セリアはおれ達から目を逸らして細々とそう言った。……忘れてただって?


「……仕方ないじゃない! 忙しかったんだから! 誰かさんが大怪我しちゃうし!!」


「ああ……それは悪かったよ。別に責めてもないから。拗ねないでよ」


 ご立腹なセリアを(なだ)めるようにおれはそう言った。まぁ確かにおれが心配かけたのも悪かっただろう。頬を膨らませたセリアの頭をポンポンと叩いてなんとか機嫌を直そうと試みた。


「ところでその報酬はどれくらいになるんだ?」


「そうですね……詳しくはまた確認してみますが、白金貨200枚は下らないと思いますよ」


 ほぉ……白金貨200枚か……。1枚100万Gだから…………は……?


「200枚!!? そんなもらって良いの!?」


「むしろ安いくらいですよ。皆さんは九月を倒したんですから。それにSランクの依頼をこなしていけばそれくらいすぐに貰えますよ」


 まじか……。やっぱりもっと常識を持っていた方がいいだろうか。分かるものも分からないのでは少し苦労していきそうだ。……まぁ常識で言えばセリアがいるから大丈夫か。


「そんなに貰えるのね!! ならあまり深く考えなくて良いじゃない!」


 ……うん、任せっぱなしは良くないかもしれない。最近気づいたが、どうやらセリアは分かっているようで分かってないことも多いようだ。今それが確信に変わった。


「じゃあこの街を少し教えて欲しいわ。気をつけた方がいいこととか」


「そうですね……でもこの街は事件も少なくて良いところですよ。魔物もなかなか現れないですし。冒険者の方々には良くもないかも知れませんがね」


「そんなことはないわよ。平和なのが一番だわ」


「あと……冒険者の皆さんの行方不明者数が多いですね」


「え、全然平和じゃねぇじゃん!」


 冒険者が行方不明になるってどういうことだ。というか一般市民はそうでもないということか。……不思議な話だな。


「まぁどこかに行っただけの可能性の方があると思いますよ。冒険者さんは自由ですから。でも一応気をつけてくださいね!」


「分かったわ。ありがとう」


 そう言っておれ達はギルドを出た。とにかく大きい収入が入るのはデカい。となるとこの街で急いでやることもないか。


「この後はどうする?」


「まだ早いし……。各自自由にして良いんじゃないかしら。日が暮れる前にここ集合ね」


 そう言っておれ達は解散した。おれとセリアとグラは適当に街を歩くことにした。グラは近くの図書館へ行くようだ。似合わないが、少し本を読んでみたい気分だそうだ。フリナは街の中央やや北部にある教会の近くの森へ向かった。エルフというのは森が落ち着くのだろう。


 残ったセリアとおれで散策をした。歩いてやってきてまた歩くのは変な感じだが、まぁいいものだ。とにかく気晴らしをすることにした。

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