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神話の英雄譚  作者: わらびもち
第六章 航海
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第42話 なり得る

復活(ふっか)ァーーーー……()たたたた……!」


 三界と交戦してから2日目、朝日の上るのと同時に目が覚めた。気づくと首と肩の痛みが引いていたので、起き上がって声を上げてみれば……胸の傷のことを忘れていた……。激痛が走り、おれは胸を押さえつけながら床にうずくまった。


「珍しく早起きじゃな! ……何をしとるんじゃ……。お前…………」


 その瞬間、グラが扉を開けて入ってきた。疑問の顔を浮かべながらおれのことを見下ろしている。


「い、いや……。怪我が治ったと思ったんだけど……思ったより治ってなかった……」


「アホか、お前は」


 ぐうの音も出ない正論だ。でも体を動かせるくらいには回復した。無茶な動きは出来ないが、もうこの街を出発するくらいは出来るだろう。


「セ……セリアとフリナは……?」


 おれは痛む傷口を押さえながらグラに尋ねた。2人は普段、この時間なら起きているはずだ。


「ああ、2人は買い物に行ってるぞ。街の様子を確認したりするついでにな」


「そういえば街も半壊してたな……。今はどうなってるんだ?」


「死んだ人間も多いからな。混乱も大きいようじゃが、ここの人間は随分と逞しいようじゃ。復興作業も進んでいるよ」

 

 そうか。不幸中の幸いというか、街が完全に崩壊しなかったのは良かったと思うべきか。おれはグラと一緒に部屋を出て外を見回した。確かに人々が往来している。恐怖の目ではなく、活気に満ちた目をしているのが印象的であった。


「あら、エストじゃない! もう体を動かしても平気なの?」


「おお、本当だ! 元気になったのか?」


 するとちょうどセリアとフリナの2人が帰ってきた。食料やらポーションやらに金を落としてきたようだ。復興作業も手伝っていたらしい。


「ああ、もう大丈夫だぞ。無茶は出来ないけどな」


 セリアは良かったわ、と言いながら買ってきた物をおれに手渡した。相変わらず荷物持ちはおれの仕事だ。渡された物を全ておれの空間収納アイテムボックスにしまった。


「ならもう出発しちゃう? ここは元々通り過ぎる予定だったから」


「次はどこに行くんだ?」


「一回“ルドン”って街に行ってそこから聖都ヘルダルムに行こうと思ってるわ。どっちも結構遠いけど、ヘルダルムでクランの本部を創ろうと思って。つまり私達の拠点ね」


「拠点って言っても意味あるのか? おれ達は普段は旅に出てる訳だろ?」


「クランとしては必要よ。それにあそこは交通の便も良いって言うし、割といつでも帰ってこれていつでも出ていけるって意味では、むしろに私達には合っているわ」


 へー。まぁ拠点があるとなんかカッコいいから良しとするか。ところで気になるのは……。


「いくらぐらい掛かるのかな?」


「せっかくならちゃんとした建物にしたいからね……。設備とかも考えれば……10億G(ゴールド)は欲しいわね」


「ジュ……10も……?」


 国家金貨はあまり使われないから……白金貨1,000枚分か? とんでもなく高い買い物じゃないか。


「平気よ。私達はSランクの依頼も受けられるし、やろうと思えばすぐに稼げるわ」


 セリアは自信満々にそう言った。彼女がそう言うなら心配する必要もないのだろう。まぁ一応確認しておくが、


「今はどれくらい貯まってるんだ?」


「……5万…………」


「全然無いじゃん!? 本当に大丈夫なのか!?」


「……あと買い物で使ったから今は2万くらい……」


「なんで最初少し盛ったんだよ! 2万って言えよッ!」


「いやぁ……2万って言ったら流石に怒られるかなって」


「……怒っちゃいないけどさ、10億と比べたら2万も5万も変わらないでしょ」


 セリアはそれもそうね、と言って少し笑った。この雰囲気なら大丈夫なんだろう。……きっと大丈夫なはずだ……多分……。


「そんなことより、行けるならさっさと出発しちゃいましょ! 遠いから時間かかるわよ!」


 おれ達の疑問を遮るようにセリアはそう言った。まぁ今考えていてもあまり意味はないからな。考え過ぎずにいた方がいいだろう。


「じゃあ行こうか。ルドン!」


 おれは胸が痛まない程度の声を上げた。そして出発……


「どっちだ……?」


「逆よ。そっちは海でしょ」


 セリアに襟を掴まれて引きずられていった。うん……締まらないな。そう思いながらおれ達は港町を出発した。


***


「主よ、お帰りなさいませ」


 魔界の城に、城主が帰ってきた。それを迎えたのは我金隊隊長・バルファードだ。


「お、九月の件は済ませたのかい?」


「はい、知らせておきました。ところで、どうでしたか?」


「まだ若いね。もっと強くなってもらわないと。そのために3年後に暴れるって伝えておいたよ」


「3年ですか……。少々短くはないですか?」


「僕達と人間(彼ら)じゃ違うよ。3年あれば充分僕達の脅威になり得るよ」


「フフッ。楽しみですね」


「君もかい? このことは他の三界(2人)にも伝えておいてくれ。ダンディール君も帰ってきてるはずだよ」


「はっ!」


 バルファードは命令を受けた瞬間、城から姿を消した。返答の声を置き去りにして。


「本当、楽しみにしてるよ。()()()……」

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