第42話 なり得る
「復活ァーーーー……痛たたたた……!」
三界と交戦してから2日目、朝日の上るのと同時に目が覚めた。気づくと首と肩の痛みが引いていたので、起き上がって声を上げてみれば……胸の傷のことを忘れていた……。激痛が走り、おれは胸を押さえつけながら床にうずくまった。
「珍しく早起きじゃな! ……何をしとるんじゃ……。お前…………」
その瞬間、グラが扉を開けて入ってきた。疑問の顔を浮かべながらおれのことを見下ろしている。
「い、いや……。怪我が治ったと思ったんだけど……思ったより治ってなかった……」
「アホか、お前は」
ぐうの音も出ない正論だ。でも体を動かせるくらいには回復した。無茶な動きは出来ないが、もうこの街を出発するくらいは出来るだろう。
「セ……セリアとフリナは……?」
おれは痛む傷口を押さえながらグラに尋ねた。2人は普段、この時間なら起きているはずだ。
「ああ、2人は買い物に行ってるぞ。街の様子を確認したりするついでにな」
「そういえば街も半壊してたな……。今はどうなってるんだ?」
「死んだ人間も多いからな。混乱も大きいようじゃが、ここの人間は随分と逞しいようじゃ。復興作業も進んでいるよ」
そうか。不幸中の幸いというか、街が完全に崩壊しなかったのは良かったと思うべきか。おれはグラと一緒に部屋を出て外を見回した。確かに人々が往来している。恐怖の目ではなく、活気に満ちた目をしているのが印象的であった。
「あら、エストじゃない! もう体を動かしても平気なの?」
「おお、本当だ! 元気になったのか?」
するとちょうどセリアとフリナの2人が帰ってきた。食料やらポーションやらに金を落としてきたようだ。復興作業も手伝っていたらしい。
「ああ、もう大丈夫だぞ。無茶は出来ないけどな」
セリアは良かったわ、と言いながら買ってきた物をおれに手渡した。相変わらず荷物持ちはおれの仕事だ。渡された物を全ておれの空間収納にしまった。
「ならもう出発しちゃう? ここは元々通り過ぎる予定だったから」
「次はどこに行くんだ?」
「一回“ルドン”って街に行ってそこから聖都ヘルダルムに行こうと思ってるわ。どっちも結構遠いけど、ヘルダルムでクランの本部を創ろうと思って。つまり私達の拠点ね」
「拠点って言っても意味あるのか? おれ達は普段は旅に出てる訳だろ?」
「クランとしては必要よ。それにあそこは交通の便も良いって言うし、割といつでも帰ってこれていつでも出ていけるって意味では、むしろに私達には合っているわ」
へー。まぁ拠点があるとなんかカッコいいから良しとするか。ところで気になるのは……。
「いくらぐらい掛かるのかな?」
「せっかくならちゃんとした建物にしたいからね……。設備とかも考えれば……10億Gは欲しいわね」
「ジュ……10も……?」
国家金貨はあまり使われないから……白金貨1,000枚分か? とんでもなく高い買い物じゃないか。
「平気よ。私達はSランクの依頼も受けられるし、やろうと思えばすぐに稼げるわ」
セリアは自信満々にそう言った。彼女がそう言うなら心配する必要もないのだろう。まぁ一応確認しておくが、
「今はどれくらい貯まってるんだ?」
「……5万…………」
「全然無いじゃん!? 本当に大丈夫なのか!?」
「……あと買い物で使ったから今は2万くらい……」
「なんで最初少し盛ったんだよ! 2万って言えよッ!」
「いやぁ……2万って言ったら流石に怒られるかなって」
「……怒っちゃいないけどさ、10億と比べたら2万も5万も変わらないでしょ」
セリアはそれもそうね、と言って少し笑った。この雰囲気なら大丈夫なんだろう。……きっと大丈夫なはずだ……多分……。
「そんなことより、行けるならさっさと出発しちゃいましょ! 遠いから時間かかるわよ!」
おれ達の疑問を遮るようにセリアはそう言った。まぁ今考えていてもあまり意味はないからな。考え過ぎずにいた方がいいだろう。
「じゃあ行こうか。ルドン!」
おれは胸が痛まない程度の声を上げた。そして出発……
「どっちだ……?」
「逆よ。そっちは海でしょ」
セリアに襟を掴まれて引きずられていった。うん……締まらないな。そう思いながらおれ達は港町を出発した。
***
「主よ、お帰りなさいませ」
魔界の城に、城主が帰ってきた。それを迎えたのは我金隊隊長・バルファードだ。
「お、九月の件は済ませたのかい?」
「はい、知らせておきました。ところで、どうでしたか?」
「まだ若いね。もっと強くなってもらわないと。そのために3年後に暴れるって伝えておいたよ」
「3年ですか……。少々短くはないですか?」
「僕達と人間じゃ違うよ。3年あれば充分僕達の脅威になり得るよ」
「フフッ。楽しみですね」
「君もかい? このことは他の三界にも伝えておいてくれ。ダンディール君も帰ってきてるはずだよ」
「はっ!」
バルファードは命令を受けた瞬間、城から姿を消した。返答の声を置き去りにして。
「本当、楽しみにしてるよ。エスト……」




