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神話の英雄譚  作者: わらびもち
第六章 航海
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第38話 警告

 その後も2時間くらいだろうか、波に揺られて中央センダル大陸の港町に到着した。マザラ達にギルドまで案内してもらい、そこで依頼完了の報告を済ませた。


「依頼お疲れ様でした。“炎剣”のセリア様、“豪撃”のエスト様はこれでSランクに昇格となります。おめでとうございます!」


「え、おれってそんな通り名なの?」


「あら、知らなかったの? 九月と戦ったときくらいからそう呼ばれてたわよ」


 そうだったのか。全然気づかなかった。もう少し周囲のことにも気を配っといた方がいいのか?


「では登録いたしますので、ギルドカードをお貸しいただけますか?」


 受付にギルドカードを渡し、少し待つことになった。九月の件で昇格手前まで来ていたので今回で昇格できたようだ。グラやフリナも近いうちに昇格することは出来るだろう。


「いやー。後輩かと思ったらあっという間に上に行かれちまったな! 今日はエスト君に助けられたしな。これからも頑張れよ!」


「おう! じゃあな!」


 マザラ達とは報酬を分け合ってここで別れた。彼らは邪教を調査しに西パロンド大陸に来ていたようで、これからも色々な地を調べるようだ。


 邪教というのは魔神を崇める宗教のことで、人間社会の崩壊を企んでいる。なので放っておくわけにはいかないのだ。


 その後ギルドカードを受け取ってギルドを出た。この街は港町・ボルパに似ているな。同じ“港町”だからだろうか、まぁ他を知らないから分からないけれど。


 もう日が暮れるな。そろそろ宿でも取らないといけないか。そう思ったときだ。空を黒い雲が覆い、波が荒れ、風が強く吹き始めた。嵐でも来るのか……? 船が早めに着いて良かったか。


「みんな、さっさと宿を取ろう。そろそろ荒れそうだ」


「そうね。探しましょうか」


***


 時は少し遡る。大海蛇シーサーペントが倒された少し後、魔界でのことである。三界本山(1位)の城に我金隊隊長・バルファードとその主の姿があった。


「主よ。私の大海蛇シーサーペントがドゥール海にて討伐されました。相手は予想通りに“豪炎”の者と、もう一つのパーティも居たようです」


「思ったよりも遅かったね。彼らのこれまでの動きから、もう少し早く中央大陸センダルに来ると思ってたんだけど。……まぁ大したことではないか。ハバが倒されて(やられて)から随分経ったでしょ? バルバタだったはずだから……エルフのとこでも行ってたのかな?」


「どのように致しますか? ご命令とあれば私が向かいますが」


「待った待った。彼らは九番と七番を倒したんだよ? 君1人じゃ流石に厄介じゃない? それに倒すのが目的じゃないし、余計に面倒でしょ?」


「承知しました」


「だから僕が行くよ。ちょっとだけ、ちょっかいをかけにね」


「承知しました。ではその間私は城を守っております」


「いや、すぐに帰ってくるから構わないよ。それより九月の序列の調整でもしてくれるかい? やっぱり雰囲気って大事だろ?」


「仰せのままに」


 彼らが会話を終えると、本山の前の空間が歪み始めた。獄境と現世を繋ぐ獄現門だ。それに足を踏み入れ、魔族はそこから姿を消した。取り残された部下は城を出て、主の命令を果たしに向かった。


***


 そして現在、中央センダル大陸の、“豪炎”のいる港町である。


「この宿にしましょうか」


「そうじゃな。ギルドや色んな店も近いしな」


 おれ達はギルドから200メートルほど離れたところにある宿を取ることに決めた。……なんだろうか……。嵐が来ると思ったが、少し違う気がしてきた。なにやら大気中の魔素がうごめいているというか、歪んでいるような感じだ。


 魔族が現れるときのような、ただこれまでとは何か規格外のような雰囲気がする。そのときだ。空の空間が歪んでいる。おれが感じた違和感は間違いではなかった。


「おい、セリア! あれ!」


 おれは空を指差しセリアに声を掛けた。セリアは何? と、最初は不思議そうに反応したが、空の歪みを見て顔を強張こわばらせた。


「……獄現門? 恐らく魔族が出てくるわ」


「よっぽどの奴じゃなけりゃあ平気じゃろ」


「私はたぶん戦えないぞ。流石に魔族の相手はまだ厳しいからな」


 そう話していると、その歪みから魔族が現れた。たった一体、しかも……。


「子供……か……?」


 そこから現れたのは身長130センチほどの小柄な魔族であった。魔力もあまり感じられない。しかしなぜだろうか。内側から警告音が鳴り響くのを感じた。力が、本能がアイツには関わるなと言っている。


 論理的に今の状況を考えればそれほどのことではない。なのに、アレにだけは近づいてはいけない、と。

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