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神話の英雄譚  作者: わらびもち
第五章 エルフの里・ユラトラ
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第34話 分からなければ受ければいい

「ところであんた誰?」

 

「ああ、俺はフラドだ。妹のフリナから話を聞いてきたんだ」


「フリナの兄ちゃんか。よろしく」


 なるほどなぁ……確かに顔も似た雰囲気な気がする。いや、気のせいか? エルフは美形が多いせいか人間(おれ達)からするとほとんどみんな似た顔にも見えるから断言できるほどではないか。


 そんなことを考えながらおれ達は料理屋を出て下へ降りた。長老の家から少し離れたところによく力比べをする広場があるようだ。


 とはいっても、特に何がある訳でもないので、なんとなく“戦うならここで”というルールがあるらしい。

 

「さて……どうしようか。おれは精霊の力を試してみたいんだが、どうすればいいかが分からないからな」


「そうだな……。精霊魔法って魔力は使うけど、どちらかといえば精神力を使う感じなんだよね。だから魔法じゃなくて精霊術なんて言い方する人も多いけど。君の場合は魔力がないから……気合じゃないかな! 大事なのは!」


「気合って……難しいな」


 魔法というからには使う感覚は魔法に近いんだろう。おれは辛うじて空間収納アイテムボックスが使えるだけで他の魔法は全く使えないから感覚が分からない。


 とはいえ能力スキルもおれは発動型ではないからなんらかの“力”を使うというイメージが人一倍乏しい気さえする。


「じゃあ俺が精霊魔法を使って君と手合わせするよ。実際に触れてみれば何かを掴むかも知れないね」


「それがいいかもな……。うん……。あのさ……」


 おれはチラッと周りを見た。セリアとグラはおれに着いてきたんだ。2人は強さに貪欲だからな。軽い手合わせでも見に来るだろう。


 いつの間にかフリナもいたのだが、兄ちゃんを見に来るのも不思議ではない。そこは気にならないのだが、その3人以上の人影があった。


 もちろんどれもエルフだが。彼らは何やら“あのフラドが戦うらしいぞ”“相手は人間の子だそうだ”“闇の精霊と契約したそうだぞ”といった具合に話している。噂を聞いて見に来たと言った感じだろう。


「ははっ。気にしないでいいよ。俺ってこの里ではそこそこ強い方だからさ、俺が戦うってなると気になる人が多いんだよ。……さぁ、じゃあ始めよう」


「よしっ。『身体強化ブースト』!」


「エスト! 森を壊すような技はダメよ!」


「分かってるよ」


 本当はこういうときにこそ“圧縮身体強化フルブースト”の練習をしておきたいのだが、あれは衝撃だけで周りを壊しかねないからナシだ。


 ただの“身体強化ブースト”もそれなりの威力の打撃が出るが、余程でない限りは地形が変わることはないだろう。ましてやこの森なんかでは。


「へー。自然のエネルギーだね。しかもこんなにも大きいとは……! 精霊に好かれるのも納得だ。じゃあ俺も行くよ」

「『水龍マリンズゴッド』!」


「これが精霊魔法……!!」


 フラドの背後に巨大な水の龍が現れた。ドラゴンではなく龍だ。とんでもない圧力を感じながら向かい合ったが、なんだろうな、少し違和感がある。あの龍は単純に魔力で構成されているものではない。それが精霊魔法の特徴だろう。だが……


「わざわざ精霊の力を使わなくても魔法で良いんじゃないか?」


「まぁ見れば分かるよ」


「おっ! ……ん?」


 龍の形を取った水がおれに向かって突進してきた。威力も大きさも凄まじいが、魔法で再現できないほどではない。ただ、確かに精霊の力で簡単に使えるようになるなら充分な利点だろう。ただそれ以上に精密な技だ。地面が一切削れていない。


「びっくりしたか? 精霊がコントロールしてくれるからそこまで集中しなくていいんだよ。しかも魔法と精霊魔法を融合させればさらに強力な技にできる!」

「『水龍渦マリンサイクロン』!」

 

 そう言って水の龍が回転してこちらに向かってくる。だがこれは避ける気はない。受けてみればなにか掴めるかもしれない。


「うがッ!」


「は!? なんで避けないんだ!?」


「ふーっ! たた……!」


 攻撃の瞬間だけ“圧縮身体強化フルブースト”を使ったためまともに喰らっても大したダメージにはならなかった。もちろんフラドさんが本気でやってないこともりゆうだろうが。


「あまり気ぃ抜くなよ。おれはまだれるぞ!」

「『天爆テンドン』!」


「おッ!」


 おれはフラドさんの背後に回り攻撃した。だが水の壁が生成されて拳は届かない。まぁこの程度か。牽制程度の攻撃だからな。


「なるほど、まだ元気な訳だ。じゃあもう一回行くよ。感覚を掴め!」


 再び回転した水の龍がこちらに向かってくる。今度は少し違った方法で探ってみよう。


「来い!」


 おれは両手の掌を前に突き出した。魔素の流れをとにかく意識して、それ以外の感覚は捨ててもいい。


「『反魔術アンチマジック』!」


 水か手に触れる瞬間、水中を流れる魔力を掻き乱し、さらに打ち消すように魔素を流し込む。九月と戦ったときに能力スキルを封じるために使った技だ。


 だが水の流れを完全には止めることができなかった。魔力以外の、精霊の持つ力だろう。そのエネルギーに押されて吹き飛ばされた。


「あ……エスト大丈夫かしら……。九月と戦ったときの傷ってまだ治ってないんじゃないの?」


「大丈夫じゃろ。大丈夫じゃないならただの馬鹿者じゃ。……ん?」


 確かにおれは吹き飛ばされたが、岩とか木にぶつかって止まったのではなく、空中に止まることができた。


「お! もしかしてそれは……」


「ああ、なんとなく分かったよ。力の使い方が」


 おれは左手を前に出して構えた。フラドさんとの距離は10メートルといった具合か。今なら出来るかも知れない。いや、出来る!


「おっ! おおおおお!!?」


 やってみろと言わんばかりの顔をしていたフラドさんを今度は突き飛ばすことに成功した。何かを発射して攻撃した訳じゃない。仮想のエネルギーを操って攻撃した、つまり念力みたいなものか。


「どうだ? 今の」


「ああ、確かに精霊の力だな。慣れてないのにここまでの出力があるとは。君は本当に強かったよ。本気でやられてたら負けてたかもね」


「あんたも強かったよ。九月と戦えたからおれも結構強くなったと思ったんだけどな。ちゃんと強いやつと戦えてよかったよ」


「いや、本当に強かった。君達になら妹を任せても安心だ」


「え?」


「いや、なんでもない」


 最後に何かを言っていたのだが、小声だったのでイマイチ聞き取れなかった。まぁそんなに大事なことではなかったのか?


「いやぁ、人間の子よ! 凄かったな! フラドの攻撃を受けてこんなにピンピンしてるなんて!」


「うん? ああ、ありがとう」


 戦いを終えるとギャラリーが感想を言って帰っていった。いやまぁ見せ物でもなかったんだけどな。


「お疲れエスト! 体は大丈夫?」


「ああ、ピンピンだ。怪我もやっぱ治ってるな」


 セリアがそれなら良かった、といいながらグラと3人で宿へ向かった。疲れた、というか忙しい1日だったな。でも平和な1日ですごく楽しかった。

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